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有機化学、高分子化学

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記事一覧

直鎖アルカンはどこまで「直」鎖でいられるか

直鎖アルカンはどこまで「直」鎖でいられるか

※本稿はミニコラムです。

要約直鎖アルカンが本当に「直」鎖なのはヘプタデカンまでらしいですよ。

本文 タイトルをみて「お前は何を言っているんだ?」と思った方がおられるかもしれませんが、実際直鎖アルカンがどこまでまっすぐなのかって考えたことありますか?つまり、十分に低い低温で熱平衡状態にある真空中に浮遊させたときに、完全に伸び切ったまっすぐな主鎖を維持できる直鎖アルカンの炭素数はいくつまでか、と

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【芳香族って】いくつあるんだ芳香族性 part1 【なんだよ(哲学)】

【芳香族って】いくつあるんだ芳香族性 part1 【なんだよ(哲学)】

本稿は巷で「〇〇芳香族性」と呼ばれているものを著者の知りうる範囲で羅列していくコーナーです。

1.初めに 皆さんは普段、どのくらい芳香族について考えていますか?。そして、どれくらい芳香族のことを知っていますか。芳香族とは元素でいう希ガスのような存在です。高い反応性を有する類縁体が多い中で優雅に佇むその姿はまさにオアシス、癒しの存在。芳香族と聞いて普通に思い浮かぶもの、4n+2個のπ電子が環状にぐ

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[bot補足]イソシアナート試薬の危険性

[bot補足]イソシアナート試薬の危険性

初めに イソシアナート系試薬は多くの有機化学反応および重合、高分子反応で頻出の試薬です。主にウレタン化合物、ポリウレタン、カルバミン酸誘導体の合成原料として、アカデミックでも工業の世界でも広く用いられています。しかし、イソシアナート系試薬は一般的に反応性が高く強い毒性があり、扱いに注意を要するものがほとんどです。その危険性については上記のようにbotでも呟いてますが、本稿はそのまとめと補足を目的と

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いつか役立つ!知って得するマイナー溶媒25選

いつか役立つ!知って得するマイナー溶媒25選

1. 初めに 実験に欠かさせないものといえば溶媒です。ほとんどの有機合成反応は何らかの溶媒環境下で進行しますし、反応後の抽出、精製、分析にも溶媒が必要になってきます。一般的に溶媒というのはどの実験操作においても系内で最も大量に存在する物質となり、実験がうまく行くか行かないかを大きく左右するファクターの一つであるといえます。しかしながら、ちょっと構造が違う溶媒に変えるだけでも反応・精製・分析における

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書籍レビュー「有機化学 改訂2版 (奥山有機化学)」

レビュー対象書籍基本情報[書籍名]
有機化学 改訂2版

[著者]
奥山 格, 石井 昭彦, 箕浦 真生

[初版発行年]
平成28年

[発行所]
丸善出版

[形状・文量]
B5判 大型本 ・ページ数 423p

[定価]
5,000円+税

書籍内容情報とレビュー『注意』
以降には実際に読んで感じた私(レビュー者)個人の感想に基づくものが含まれています。

[書籍ジャンル]
大学有機化学教

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抗COVID-19薬候補物質『モルヌピラビル』の合成ルートを見てみよう

抗COVID-19薬候補物質『モルヌピラビル』の合成ルートを見てみよう

(注意事項)
本稿はモルヌピラビルについてあくまで有機合成化学的な観点から紹介するものです。なので筆者の専門ではない医学的・薬理学的な話は記載しませんし、それに関する質問等にもお答えできません。

初めに 2021年ももう終盤。現在日本においては比較的落ち着いてきているものの相変わらずCOVID-19禍が継続しています。人獣共通感染症であるCOVID-19[1]はインフルエンザ同様完全に0にするこ

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サリチル酸の合成にナトリウムフェノキシドを用いるのはなぜか。~イオン半径と位置選択性~

サリチル酸の合成にナトリウムフェノキシドを用いるのはなぜか。~イオン半径と位置選択性~

本稿の要約 ナトリウムフェノキシドと二酸化炭素を用いたKolbe-Schmitt反応によるサリチル酸の合成がオルト位選択的に進行するのは、ナトリウムイオンのイオン半径が丁度いい大きさだからである。この反応の進行はアルカリ金属イオンによる二酸化炭素分子の活性化がキーであるが、ナトリウムよりも下の周期のアルカリ金属フェノキシドではイオン半径の増加によりパラ位でのPh-CO2反応も活性化することができる

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