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All By Myself (Big Bill Broonzy)

「オール・バイ・マイセルフ All By Myself」は、1941年にはじめてレコーディングされたビッグ・ビル・ブルーンジー(Big BIll Broonzy)が作詞作曲した曲。ブルースやニューオーリンズ・ジャズのスタンダードとなっている。

歌の主人公は、農場にいる黒人奴隷で子どもが14人もいる男で厳しい日常を生きている。刑務所にいる黒人と奴隷として農場にいる自分を対比されることでいっそう厳しい状況として提示されている。主人公は、そういった日常のなかでも誰にも助けを借りずに全部自分ひとりでやるさ、と自暴自棄気味に前を向いている。

アーヴィング・バーリンに同名の曲があるがまったくの別の曲。バーリンの「オール・バイ・マイセルフ」もスタンダードだが、あちらの方がシカゴ・スタイルやニューヨーク・スタイルで演奏される。

録音

Big Bill Broonzy (Chicago July 17 1941)
Big Bill Broonzy (Guitar, Vocals); Memphis Slim (Piano)
基本となるビッグ・ビル・ブルーンジーの録音。ビッグ・ビルのボーカルと書き殴るようなギターが曲の主人公の心情と重なる。またメンフィス・スリムのピアノが素晴らしい。バッキングもソロもどちらもきめ細かい。またリーダーアルバムでも再び録音をしている。

Washboard Sam & Big Bill Broonzy (Chicago, May 1953)
Washboard Sam (Vocals, Washboard); Big Bill Broonzy (Vocals, guitar); Memphis Slim (Piano); Lee Cooper (Guitar); Ernest "Big" Crawford (Bass)
ビッグ・ビル・ブルーンジーとウォッシュボード・サムの録音。もちろんだけどこちらの方がバンド感がある。ビッグ・ビルのギターのアプローチの仕方が違うのでそこもおもしろい。年代もあると思うが1941年の録音はフォーキーなスタイルだったけどこちらは正統派シカゴ・ブルース。またウォッシュボード・サムのウォッシュボードの入り方にかれの瞬発力を感じる。スイング!

James Booker (Hamburg October 27 1976)
James Booker (Piano, Vocal)
ニューオーリンズの凄腕ジェイムズ・ブッカーのドイツでのライブの録音。こちらはニューオーリンズのピアノ・スタイルをさらに発展させたスタイルを展開している。ボーカルはかなりブルージー。

Tuba Skinny (New Orleans September 1 2022)
Craig Flory (Clarinet); Shaye Cohn (Cornet); Barnabus Jones (Trombone); Max Bien-Kahn (Resonator guitar); Greg Sherman (Guitar, Vocal); Todd Burdick (sousaphone); Robin Rapuzzi (Washboard)
現在のニューオーリンズ・ジャズの雄Tuba Skinnyの2022年のセッションから。いまやニューオーリンズだけではなくアメリカを代表するニューオーリンズジャズ・バンド。シェイン・コーンのコルネットはまるでシカゴ時代のルイ・アームストロングのように雄弁で、クレイグ・フロイのクラリネットはジョニー・ドッズのよう。ずっと聴いていたい演奏。ただ唯一残念なのはフェードアウトなところ。これにかんしてはYouTubeにある動画で確認したい。本当に来日してほしい。

Geoff Muldaur And The Texas Sheiks (Austin Texas 2009)
Geoff Muldaur (Guitar); Johnny Nicholas (Vocals, Mandolin); Floyd Domino (Piano); Damien Llanes (Percussion); Bruce Hughes (Bass, Backing Vocals); Suzy Thompson (Accordion); Cindy Cashdollar (National Baritone Tricone)
ジェフ・マルダー率いるテキサス・シークスの録音。ジョニー・ニコラスのボーカルがブルージー。それぞれの楽器の音色がはっきり聴こえて、特定の楽器に寄り添うとかなくて、それぞれが曲を作っている。アルバム全体を通してもとてもよい録音。


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