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Backwater Blues/Back-Water Blues

「バックウォーター・ブルース Backwater Blues」は、1927年にベッシー・スミス(Bessie Smith)によって書かれたブルースで、ブルース/ジャズのスタンダード。

この曲は、ベッシー・スミスが実際に見た光景が元になっている。しばしば1927年の4月から6月まで起こったミシシッピ川大洪水に関連していると言われるが(Evans 2005)、この曲の録音は実際にはミシシッピ川の大洪水の2ヶ月前(1927年2月17日)になされている。そのため、「ナッシュビルのカンバーランド川の洪水」を参照している(Evans 2007)。ちなみに”back water”とはいわゆる「戻り水」のことで、川の水が氾濫し、逆流していることを指している。

ナッシュビルのカンバーランド川で洪水が起こったとき、ベッシー・スミスはナッシュビルにおり、そうした光景を目の当たりにした。エヴァンスは「ベッシー・スミスがナッシュビルに到着したのは、洪水の水位が最大に達したときで、少なくとも10日間はナッシュビルに留まった」(p. 111)と主張しており、さらに一緒にツアーを周ったベッシー・スミスの従兄弟マウド・スミスもつぎのように言っている。

シンシナティを出発した後、小さな町に着いたんだけど、そこは洪水で、みんな列車から降りて小さな手漕ぎボートに乗り、宿泊先まで連れていってもらった。[...]荷物を置いた後、ベッシーは辺りを見回して、「いや、いや、今夜はここには泊まれない」と言った。でも、そこには他にもたくさんの人たちがいて、彼らは彼女を泊めようとして、「ベッシーさん、バック・ウォーター・ブルースを歌ってください!バック・ウォーター・ブルースを歌ってください」と大声で叫び始めたの。ベッシーはバック・ウォーター・ブルースなんて曲は何も知らなかったんだけど、私たちが当時住んでいたクリスチャン・ストリート1926番地に帰ってきてから、ある日ベッシーが鉛筆と紙を持って台所にやってきて、歌いながら書き始めたの。それが「バックウォーター・ブルース」ってわけ。

Evans (2007), p. 105

さて、なぜ「ミシシッピ川大洪水」を言及している曲だと思われたかと言えばつぎの理由による。まずこの曲は1927年3月27日に発売され、そしてミシシッピ川大洪水が4月に起きた。これらに鑑みると、この曲が「ミシシッピ川大洪水」を想起させるのに十分な時期に発売された、というわけである。

「バックウォーター・ブルース」のフォノグラフの広告。

録音

Bessie Smith (NY, February 17, 1927)
Bessie Smith (Vocal); James P Johnson (Piano)
間違いなくこの曲の金字塔。いろいろ読んだあとに聴くと泣けてくる。

Meschiya Lake And The Little Big Horns (the childhood home of Jelly Roll Morton late 2009 or early 2010)
Winfeild Newton Burdick IV (Banjo); Jason Jurzak (Bass); Luke Winslow King (Guitar); Meschiya Lake (Vocal); Shaye Cohn (Cornet); Mike Voelker (Drums); Aurora Nealand (Soprano Saxophone); Charles Halloran (Trombone)
現在のニューオーリンズ・シーンを代表する若手ミュージシャンが集まった録音。しかも録音がジェリー・ロール・モートンが幼少時代に住んでいた家で録られた。とにかくブルージーでめちゃくちゃかっこいい。素敵!

参考文献

  • Evans, David. (2005). High Water Everywhere: Blues and Gospel Commentary on the 1927 Mississippi River Flood. In Robert Springer (ed.). Nobody Knows Where the Blues Come From. Jackson: University Press of Mississippi.

  • Evans, David (2007). Bessie Smith's “Back-Water Blues”: the story behind the song. Popular Music. 26 (1): 97–116.

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