哲学にハマったカエル、環境保護について考える

カエルのクラウス君の友達、チャーリー君はご存知、女装癖のある魚。それもこれも環境ホルモンの影響なのですが、若いカエルのクラウス君やナメクジのヨハン君は全く気にしていません。ただ、他の魚たちがチャーリー君を横目に「カンキョーホルモンのせいだ」と囁き合うので、「カンキョーホルモンというのはさぞかし悪いものなのだろう」となんとなく認識していました。

ある秋晴れの日、チャーリー君が暮らす池に人間の大人たちがやってきました。ついてきた近所の子供(見つかるとクラウス君を掴もうとしたり、ヨハン君に塩をかけようとするので、クラウス君もヨハン君も苦手なのです)が、「おじさんたちは何をしているの?」と尋ねます。大人たちは「環境保護のための調査だよ。我々の環境破壊せいで、他の動物たちにひどい影響が出ているからね。このままでは人も破滅してしまうんだよ。地球を守るのは人類の使命なんだ。」と答えていました。

それを草の陰から聞いていたクラウス君とヨハン君は囁きあいます。「あの人、カンキョーって言ったよね?それってあのカンキョーホルモンのカンキョーかな?」「たぶんね」「ってことは、カンキョーとは悪いものなのかな?」「いや、破壊はともかく保護のためって言ってるんだから、いい意味じゃないのか?」「確かに、地球を守るって言ってたもんね。他の動物にひどい影響が出ているのは、人間のせいだから守る使命があるって。それはチャーリー君のカンキョーホルモンも人間のせいってことでしょ?それをなんとかしようって、人間って立派だなぁ!」

何事にも大変素直なクラウス君は、すっかり人間の行いに感心してしまいました。ただ、クラウス君より、よく言えば思慮的、悪く言えば疑り深いヨハン君は、(ナメクジなので実際には眉毛はないのですが)片眉をあげて、反論します。「クラウス君、何事にも素直に取るのは君の長所だけど、僕の見方からすれば、人間は立派でもなんでもないさ。だって単に自分たちの落とし前を自分たちでつけるってことだろ?そんなの立派じゃない。当たり前だよ。」

素直と持ち上げられているようで、暗に単細胞と言われているような気がしたクラウス君は赤面しながら、小さな声で「…そうかな?」とやっと呟きました。

「そうだよ。そりゃ今いる人間が全て悪いわけじゃないだろうけどさ、人間が今まで色々好き放題やって、その結果自分たちの破滅が見えたから保護しなきゃって、究極の自己都合じゃないか。もし自分たちに一切影響が出なかったり、気にならなかったら、人間はずーっと今まで通りだったはずだ。」「僕らからしてみれば、人間なんて空から降ってくる隕石と同じだ。カンキョーホルモンをばらまく厄災であって、それで僕らが滅ぶと言うならば、それはそれで、単に僕らの定めだったのかもしれない。その定めさえも自分たちのものにするなんて、人間は傲慢じゃないか。」

クラウス君の目をじっとみてヨハン君は言い切りました。「破壊だの保護だの、何様なんだ。」そして、ちょっと言い淀んでから「まぁ、それでも人間のせいで住みにくくなったのは確かだし、それが少しでもましになるならば、感謝すべきかもな。」と付け加えました。

クラウス君は、カンキョーホルモンを探そうとしているのか、しゃがみこんで池の水を採取している人間の背中を、ただじっと見あげていました。

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