哲学にハマったカエル、「哲学」にハマる その1

カエルのクラウス君がなめくじのヨハン君の手ほどきで哲学の門を叩いてから、暫く経ちました。クラウス君は何か思うことがあるのか、あの日以来あちらこちらに出かけていたので、ヨハン君や魚のチャーリー君は少し寂しく思っていました。そんなある日、フラリとクラウス君が池のそばのヨハン君のお気に入りの場所にやってきました。

「ヨハン君、久しぶり」

「やぁ、クラウス君!本当に久しぶりだね。街に出かけたって聞いたきり、音沙汰ないもんだから、人間に踏まれちゃったかと心配したんだぜ。街は人間が多いからな・・・危ない危ない。」

クラウス君たちは田舎に住んでいるのであまり心配はいりませんが、街住まいの危険性について色々な虫や動物の体験談が出回っているのです。ヨハン君の心配ももっともでした。なんせ街住まいの死因ナンバーワンは人間に踏まれる圧死なのです。

「いやさ、哲学についてもっと勉強しようと思って。それならば人間の知識に頼るのが一番かなって思ったんだ。でも行ってよかった。色々勉強になったよ!ソクラテスでしょ、プラトンでしょ、それからアウグスティヌスにトマス・アクィナス、デカルト、ライプニッツ、カント、ヘーゲル、マルクス、それに・・・」

「わー!」これ以上哲学者のリストを読み上げられては堪らないとばかりに、ヨハン君は叫びました。「君は随分勉強したんだねぇ!」

「いや、まだまだだよ。」クラウス君はあまり嬉しそうではありません。「やっと哲学通史を一通りさらったんだ。でも、全然わからないんだよ。だから、ギリシア時代からひとつずつちゃんと勉強しようと思うんだ。でも、できる気がしない。僕は一体いくつになったら、十分に哲学を勉強できたと言えるんだろう?」

クラウス君は今にも泣きそうです。


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