哲学にハマったカエルの話

「不思議だ!不思議だ!」と叫びながらジャンプしまくるチャーリー君を、ヨハン君は「そんなチャーリー君のほうが、僕にはよっぽど不思議だよ・・・」と冷めた目で眺めていましたが、隣で腕を抱え込んで眉間にしわを寄せているクラウス君に気が付き「どうしたのさ?」と話かけました。クラウス君は尋ねます。

「一旦僕が認識した君たちは、いつか完全に消えるということがあるんだろうか?忘れてしまったら消えるのかな?でも、思い出したら?それは一体どういうことなんだろう?」

ヨハン君は少し悩んで答えました。

「一 度認識してしまったら、出会ってしまったら、その人の存在を忘れることはできても、消すことはできないのかもしれないな。出会った瞬間に、認識している世界に組み込まれてしまって、そうだな、まるでおもちゃのレゴみたいに、ピッタリ嵌って、それだけ取り出すことはもう無理なんだよ。」

「いや、もしかすると最初から出会うべく、その人がはまるようにこの世界はできているのかもしれない。つまり、君たちに出会うまでは、僕の中にある君たちの存在の部分は空白だったんだ。そして、僕には他にもたくさんの空白がある。空白は空白だ。だから僕には気がつかなかった。君たちが僕の前に現れたことで、それが突然、でもとても自然に、パズルのピースがピッタリ僕の世界で嵌ったんだよ。忘れたら一旦はそのパズルのピースが色を失うかもしれない。でも思い出したら、すぐにまた色がつくのさ。」

クラウス君はヨハン君の考えを聞いて感動してしまいました。そこで、その感動と、今、大好きな友達がいることへの感謝の気持ちを表したいと、まずヨハン君に抱きつきます。

「わっ!なんだい、急に」

驚くヨハン君を無視して、今度は池に飛び込みチャーリー君に抱きつきました。そして陸に上がって、またヨハン君に。

「これで、僕ら三人とも友情のハグをしたことになるよ。君たちは直接抱き合えないからね。腕があって、水の中も陸の上でも大丈夫な僕が仲介役さ」

と、クラウス君。それを聞いたヨハン君もチャーリー君も少し泣いてしまいました。

「僕らの友情に乾杯!」ヨハン君が音頭を取ります。「僕らの出会いに乾杯!!」「君たちが僕の世界にいることに乾杯!」チャーリー君とクラウス君はそれぞれ続きました。

クラウス君がヨハン君に話しかけます。「ねぇ、哲学って面白いねぇ。僕もこれからいっぱい勉強するよ!」

「しかしね、クラウス君。君のようにひとつずつ、身近なところからじっくり考えることが大事なんだよ。僕みたいにね、なにも考えていなかったところに、難しい知識を詰め込もうとすると、自滅的な過激思想に走るものなのさ。だから、ひとつひとつゆっくり考えていけばいいじゃないか。」

ヨハン君は自らの過去を踏まえて、クラウス君にそうアドバイスしました。


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