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ランダムでスローなライフに揺さぶられ、また日常に戻る

三宅島に行っていた.
島で過ごすなんて、20年ぶりくらいかもしれない.

この島で感じたことを、身体が覚えているうちに文章にしておこうと思う.


溶岩地帯. 大地の鼓動



スケジュール帳に収まらない不確実性にときめく

三宅島にプロペラ機でついて、予約していた宿の人を待つ.
いっこうに現れないので電話をする.
韓国出身の宿の女将がカタコトで「バタバタしてて忘れちゃってたよごめんネ.すぐに行くから」と応じてくれる.

宿の送迎って、宿の人が法被でも着て旗持って出迎えてくれるイメージだ.
バタバタしてて忘れちゃうなんて、普通考えられないけどキュートだ.

迎えに来てくれたのは宿でアルバイトをしているらしいおっちゃん.
他の仕事もあるだろうに、ゆっくり車を走らせながら細かく島のお気に入りの場所を教えてくれる.

夜には4年ぶりに港で祭りがあるんだそうだ.
「祭りの様子見に来るから、夜にまた合流して宿まで送ってやるよ」と江戸っ子な言葉を残してくれて、走り去っていった.

でも、その夜祭りの会場におっちゃんの姿はなかった.
たしかに時間も詳細も特に決めていなかった.
気分が変わって、祭りに行くのをやめたのかもしれない.

こういう予定外のことだったり、約束とかコミットしたわけじゃなくてその都度その都度、ご恩を受けたり受けなかったりする関わり方のリズムが、東京の都会で流れるそれとは違って、心地が良かった.


マッコウクジラの歯茎と歯

大学生のうちに、やっておいた方が良いこと

直線的には進まない島のリズムに触れながら、僕は3年前に後輩から受けた質問を思い出していた.

「大学生のうちにやっておいた方が良いことってなんですか?」

新宿のイタリアン居酒屋で、当時大学に入ったばかりの彼は僕に聞いた(彼はジンジャエールを飲んでいた)

そのときなんと答えたかは覚えていないけど
今なら、「思想・テクノロジー・ビジネスの中で、不足しがちになる部分を補える活動をして、自分なりのバランスを見つけること」と答えたい.

都会の大学で普通に過ごしていたら3年からインターン・就活にどっぷりつかるから、さっきの3つの中で、放っておいてもビジネスの比率が高くなる.

それに、今はTikTokとかYouTubeのショート動画に、ひろゆきやNewsPicksなんかのビジネス系の切り抜きが溢れていて、ベッドでゴロゴロしていてもビジネスに侵食されるような時代だ.

ビジネスに侵食されすぎてしまうとき、中心軸として自分を支えてくれる、呼び戻してくれる「思想」(哲学と言ってもいい)があるととても良いと思う.

ハイデガーが好きとか
暇と退屈の倫理学がバイブルとか
そういうTHE思想みたいなものでも良いし
あの人のように生きたいとか、五条先生かっけぇ!とか、何でも良いと思うんだけど

そういう思想の種になるものって、自分の生きている普段の生活圏とは違うリズムや価値観に触れたときに生まれるはず.

島の生活に浸かってみるとか、イルカと泳いでしぬかもしれねえって思うとか(ほんとに泳いで、ほんとにしぬかもと思った)そういう自分を揺さぶってくれたり、何かモヤモヤさせてくれる経験や他者の価値ってホントに大きい.

インターンの個数とか分かりやすい皆が追いかける指標だけじゃなくて、指標化しにくい、コントロール可能性の外にあるものに触れることの大切さを島の人たちは教えてくれた.

ちなみにテクノロジーの話は、自分が時間を忘れて手を動かしてものを作ることができる時間だったり、ビジネスと掛け合わせるとか思想を具現化するために何ができるかの実装手段みたいな意味合いで、これについてもまたどこかで書いてみたい.


空と海と大地と

複数の仕事と、複数の絆

そういえば、さっき登場した僕らを送ってくれたおっちゃんは、元々調理の仕事で復興支援をするために三宅島に来たんだそうだ.

でも、椅子修理でも何でもやって生計を立ててるらしい.自分が長年やってきて、得意で1番飯を食える仕事以外にも、飯の種になる仕事を持っているって素敵なことだと思う.

全く違う仕事から受ける刺激が、別の仕事に気づきを与えてくれたり、別の自分になれる場所をくれる.

仕事の時って、大きくても小さくても何かの目標のために頑張ってる.そうすると、一緒に仕事をする人との連帯感とか絆みたいなものも生まれてきたりする.

こういう絆の固まりを複数持てること、その中で色んな自分でいられることが、複数の仕事をする醍醐味だ.

僕の本業はITプロダクトの企画職だけど、もう1つの仕事はITのものづくりと関係のない仕事をしたい、なんて思っていて妄想中だ(教育現場で子どもたちに向き合ったり、本を軸にした場作りなんかもしてみたい. 妄想は膨らむばかり.)


人の営みの痕跡

人生というロードムービーの中で愛の種まきをしたい

今回の旅を通して、新海誠監督の『すずめの戸締まり』を思い出した.主人公の鈴芽が、行く先々で色んな人に助けられて、世界を救っていく物語だ.

僕も、島で色んな人に助けられた.
韓国のママ、ドルフィンスイミングのインストラクターさん、飛行機が飛ばなくなって急遽予約した民宿のご家族.他にもたくさんいる.

『すずめの戸締まり』で1番胸が震えたのが、ロードムービー型式で各地の人に助けられながら、世界を救ったあとに再び彼らの元を訪れるシーンだった(エンドロール中で流れる).

僕がプロダクトや事業、日々のアウトプットで生み出したい世界も凄くこれに近い.

自分のキャパシティを超えなくて良いから、半径3mくらいで困ってる人が手を差し伸べて助けたり、助ける側も温かい気持ちになるような、愛の循環する世界を目指して、ここ数年生きてきた.

一期一会かもしれないけれどその瞬間お互い手に手を取り合って、どこかでまた会えたらあの時のことを思い出して笑顔で語り合ったり、ちょっと涙したり、そんな瞬間がたくさん生まれていくような世の中にしていきたい.

そんな元点を思い起こさせてくれた旅に感謝して、明日からまた、生きるぞ.


行ってきます!




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