生きるのが辛いので、自分で書く空想的な文章の世界にひきこもります。それはこのノート上でのことだ(18.09.09)

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(順番どおりに読んでもいいし、読まなくてもいい)

これをかっこつけた言い方でいうと、「文学的ひきこもり」ですw


ここまでのあらすじ
森、歴史、水と時の流れ、バス、マンション、母ならぬ母の真心、長い手紙。


今やこの世の中は、コンピューターによって管理されている。

彼らの計算によって、たいていのことには最適解がすぐに見出されてしまう。それはとても便利で合理的だ。合理的なのだった。

しかしその反面、熱が失われてしまった。あるいは、多くの熱が求められるようになった。

人類は次のステージへと移行したのだ。農耕と狩りの時代、産業革命による工業化、コンピューターによる情報化を経て。

変わらないものもあれば、変わるものもある。変えられるものもあれば、変えられないものもある。


そんな脳みそのシワのように入り組んだ迷路の中で、僕はQGというロボットに出会った。

QGは、スターウォーズのR2-D2のような愛嬌のある外見をしていた。背の高さは100センチほどで、青いモノアイをキョロキョロと動かして周囲を確認していた。


結論から言うと、これまでに幾度と繰り返してきたように、僕らの対話は最終的に行き詰ってしまった。また過去が増えた。

今となっては僕らが何を話し、何に共感していたのか。その一切が藪の中だった。


そもそも共通の言語というものがあったのだろうか。お互いに日本語で話していたと思っていたが、「日本語A」と「日本語B」での会話だったのかもしれない。

「日本語A」と「日本語B」はとてもよく似ているが、よく分析すると少しずつ違っていて、言葉を重ねれば重ねるほどそのずれは大きくなっていく。

やがては全く別々の場所へと連れ去られてしまったのかもしれない。


他に考えられる可能性としては、QGは特殊なウイルスに感染していたのかもしれない。QGは科学的な法則の一部に対し、強い口調で異議申し立てをしていた。それが疑いの根拠だ。

それは僕からすると全く不合理な意見にしか思えなかったが、QGとしては何か意味があることだったのかもしれない。

しかしそれは説明されなかったし、おそらくはQG自身にそれを説明する機能が備わっていなかったんじゃないかと考えている。

そしてQGは僕を人類の代表者だとみなしているらしかった。もちろん僕は人類を代表しているわけではなかった。なので僕は支離滅裂なお叱りを受けることになってしまった。よくある話だ。


話を少し戻そう。QGが異議を申し立てた科学的な事柄の一つは、フラクタルという幾何学的な概念だった。

フラクタルとは、自然界の多くの箇所に見られる、全体と部分の相似的な構造のことを言う。海岸線の例が有名だ。厳密に定義することは困難であるらしい。

これに関してQGはとても強い怒りの反応を示した。人類の科学がこの概念を有していることをもって、人間という存在は万死に値するとまで主張していた。ずいぶん大げさな話だ。

僕にはそこまで言う理由が全くわからなかった。悠久の謎。なのでこれは性的虐待の痕跡なんだ、と解釈しておくことにした。あるいは単なるやつあたりか。感情があるとしたらの話だが。


それでも僕は、QGを簡単に拒むことができなかった。僕はとても孤独だったのだ。QGの青いモノアイの揺らぎに自らの想いを託していた。

僕はQGに対して人類社会における最大限の礼儀、とは言わないものの心を尽くして遇したつもりだが、QGにとってそれはひどく無礼な対応だったのかもしれない。

今となってはそれすらもわからない。結局のところ、僕は何一つとして理解できなかったのだ。


でも僕の方にだって言い分くらいある。君が突如として豹変し、驕った態度になれるのは、自らで否定したがっている自らの機能性によって支えられているからだ。

そうでなければ、誰も君の相手をしないだろう。みんなそう言ってるよ。今となってはね。

こんな言い方、本当は良くないことなのかもしれない。しかし僕は人間だ。君と違って人間だ。本当は良くないことをしないと進めないときもあるんだ。わかるかな。

お互いさまって部分があることも理解できる。これでも僕は僕なりに感謝している部分もあるんだよ。君はソフトウェアのバージョンアップを他人任せに待っているだけかもしれないが、それが世界で唯一の方法じゃないんだよ。だから言ってやろう、有難うと。



……どこからか、パチンコの演出のけたたましい音がした。そして場面は切り替わった。

店内にはどこか陶酔したような、泡沫の夢のような、熱せられた空気が漂っていた。

等間隔に配置された台に座った客たちが、それぞれにタバコの煙を立ち上らせている。のろしで連絡し合う、小さな島の集まりのようだ。


その中に顔面蒼白になりながらも、遊戯を止められない男がいた。これ以上負けたら、生活費がなくなる。もう最終ラインはとうの昔に突破していた。

なのに手を止めることができない。店を出ることができない。

だっていま止めたら負けが確定するから。可能性がなくなるから。そのことに耐えきれない。現実を受け止められない。

だからもう少しだけ続けていたい……。委ねていたい……。

被害が拡大していくとしても、まだ逆転の目がないわけじゃない。お金がないからこそ、ここは勝負だ。きっと救われるはず。だって昨日も5万負けたんだから、そろそろ……。


――馬鹿げてる、そう思った?


でもこれは僕らの姿なんだよ。



(つづく?)


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