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忘れられた打ち上げ花火:第10話 「あなたの二番目にしてください #2’」

奇跡って
起きたようにみえるかもしれないけれど
努力で起こす奇跡の方が大半だって

あなたは知っていたのかしら


***


あなたとの初めての通話は
ひどく緊張した

緊張しすぎてあまり覚えていない

アバター同士でチャットをするときの
元気なイメージとは少し違って
ゆったりとした優しい口調だったことは
ふんわりと覚えている

待ち望んでいたあなたの声

一緒にゲームをしながらの
通話ではあったけれども
気づけば通話は6時間にも及んでいた

止まることが珍しいほど
チャットではよく喋るのに
通話だとたびたび無言になる

その無言さえも
心地よいのが不思議だった

ふとしたときに
「ちゃんといるよ」
って安心させてくれたからかしらね


今までお互いの年齢の話は
したことがなかった
通話でもたずねることは
しなかった

でも近い年齢なんじゃないかって
勝手に思っていたの

淡い期待のせいで
すべてを都合良く
解釈していたのかもしれない

通話が終わってしばらく経ってから
急に心がざわつき始めた


なぜなら

あなたを本気で好きになりかけていることに
気づいてしまったから

年齢差は15以上
あり得ない

あなたの倍の人生を
すでに経験してきているなんて

いったいどんな顔をして
冗談っぽく伝えればいいの

本気で好きになっちゃいけない人だって
さすがにわかる

この気持ちを躊躇しないわけにはいかない


程なくして
あなたと一緒に遊ぶことをやめた

毎日遊ぶことを約束していたわけではなかったけれど
何となくフリーにしていた午後11時からを
これからは 他の人と遊ぶ時間にしていくねと
伝えた


>> ゆりさんの好きにしてくれて、俺は大丈夫だよ


理由も聞かず
引き止めることもなく
あなたはそう答えた

あなたの立ち上げたサークルからも抜けて
別々で遊ぶようになった



数カ月後
”奇跡” が起きる


共通して大好きなアーティストの
ライブチケットが当たった

もしもチケットが当選したら
一緒に行こうねと話していたライブ

当たった ”奇跡” に舞い上がって
現実で会う約束をしてしまっていた

いずれにしても ね

現実のわたしを見たときに
あなたが抱く わたしへの感情が

すーっと違うものに変わっていく姿を
目の当たりにすれば

心の片隅にくすぶっている
あなたへの想いにも
せいぜいあきらめがつくだろうと
そう思ったの



夏の暑さも終わりかけた頃


ライブ会場のある名古屋駅で
現実のあなたに会う決意した



 


>>> 第1話はこちらから♪


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今まで小説を読んでくださった方、女性の生き方として興味を持ってくださっている方、作品を通してnoteに来てくださった方に、自分の気持ちに向き合いながら正直に感じる思いをエッセイに込めて描き続けていきます。 生き方や愛に思い惑うときにも、エンターテイメントとして楽しみたいときにも、喜んでいただけるような内容を届けられたら、嬉しいです。 新しいスタートを切った*うみゆりぃ*をよろしくお願いいたします

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