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【感想】劇場版 炎神戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー

ガイアークの三大臣と、臨獣殿の生き残り・メカの悪巧みによって、臨獣拳アクガタを使う蛮機獣・ヌンチャクバンキが暗躍する中、ゲキレンジャーは噂のゴーオンジャーに遭遇。今や共通の敵となったガイアークに立ち向かうのだが、敵の策略によってジャンが持つ慟哭丸が盗まれてしまう。ガイアークはそれを使ってある作戦を実行しようとしていたのだ。しかも、ゴーオンジャーの炎神ソウルまで奪われてしまった!意気消沈する一同だったが、走輔の提案でゴーオンジャーは獣拳修行にチャレンジする。果たしてその成果やいかに?正義の力が半減してしまうという烈波空間を舞台に、熱きソウルと正義の獣拳が奇跡のコラボレート!理央とメレも参戦して巨大戦もバリバリのムテムテだ!2大戦隊の熱き魂が、キミのハートに幸福を呼ぶ!(C)2009 テレビ朝日・東映AG・東映ビデオ・東映

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 プライムビデオの東映オンデマンドチャンネルで『ゴーオンジャーVSゲキレンジャー』を見た。いやはや、ゴーオンもゲキレンもキャラが濃いだけに情報量が終始多く、大変忙しくも面白い視聴体験であった。忙しい映画ってなんだよ?

・華麗なるヌンチャクアクション

 初手、なんだか口が達者になったジャンがヌンチャクバンキと戦っているところからストーリーは始まる。ヌンチャク使い同士の戦いは互角のようにも思われたが、やはり身軽なゲキレッドに利がある。ヌンチャクバンキの繰り出した一投を足の裏で柱に縫い留めると、「隙あり」とすかさずその手をしたたかに打つ! 思わず手を離したヌンチャクバンキは武器を失い後ずさる。ジャンと待ち合わせていたレツ・ランも加勢し、勝負は容易につくかと思われたが、そうは問屋が卸さない。ヌンチャクバンキが開けた空間の穴に吸い込まれ、ジャンたちは姿を消してしまう。

・つよいぞ! 臨獣トータス拳

 ガイアーク反応を追って現れたゴーオンジャーもヌンチャクバンキと相対するが、臨獣トータス拳臨技「時劣態」を受け、その場に倒れ込む。心臓へのダメージがインパクトの瞬間ではなく数秒後にやってくるという特徴を端的に示した技名。じれったい!
 去っていったヌンチャクバンキに遅れること数瞬、ゲキチョッパーとゲキバイオレットが現場に飛び込んでくる。ゴーオンジャーを襲撃犯と勘違いした二人は戦いを挑もうとするが、その誤解はあっけなく解消。連れ立ってギンジロー号に乗り込み、協力して事態の収束に当たることになる。普段から炎神との異文化交流をしているゴーオンジャーだからか、順応性が高くて助かるところ。

・範人と美希の意外な接点

 スクラッチ内の道場に招かれた走輔たち。範人はそこで美希の姿を見て、「角煮カレー大盛りの女神!」と思わず声をあげる。彼が言うには、恐竜やでアルバイトしていた時の常連客であり、しかもフラれた相手だとか。確かに美希には大盛りカレーがよく似合う。そういえば美希の夫=なつめの父親の話って聞いたことが無かった気がするなあ。
 そして衝撃の事実の前にうっかり霞みがちだが、範人、恐竜やでもアルバイトをしていたのか。スーパー戦隊の世界におけるランドマーク的存在になっている恐竜や。そろそろ「ヒーロー御用達」の幟を立ててもいい頃合いである……もしかしてもう立っていたりする?(『アバレ』未履修)

・VSガイアーク①

 ボンパーのサーチとマスター・シャーフーのゲキワザにより、ジャンたちのいる異世界へ飛び込む一行。待ち受けていたのはヌンチャクバンキにガイアーク三大臣、そして臨獣拳の生き残り・臨獣トータス拳のメカである。奇跡的にガイアークとゆかりのあるお名前を持つこのメカがヌンチャクバンキに臨獣拳を教え、またジャンを襲わせた張本人であった。狙いはジャンの首にかかる慟哭丸だ。
 宿敵ロンが封じ込められたこの球は、渡せと言われてはいどうぞと渡せるような代物ではない。だが、ヌンチャクバンキによって炎神たちのソウルが奪われてしまったとあっては話は別だ。「ゴーオンジャーのムニムニ」を守るため、ジャンは慟哭丸と炎神ソウルを交換しようとする。「慟哭丸は取り返せるけど、ムニムニの命は取り返せない」。慟哭丸に手をかけて少し逡巡するジャンの様子に、当時の戦いの苛烈さが思い起こされる。理央とメレとを失って、やっと手に入れた平穏だ。……それでも、今ここで痛めつけられているソウルを見過ごすことはできない。
 が、メカたちも一筋縄ではいかない相手だ。炎神ソウルを取り返すことは叶わず(ソウルって磁石にくっつくのか)、慟哭丸だけを奪われて、ジャンたちは元の世界へ弾き飛ばされてしまう。

・修行篇突入

 相棒を奪われ、意気消沈のゴーオンジャー。さくっと切り替えて対策を話し合うゲキレンジャーの面々に対し、連は「ゲキレンジャー立ち直り早いっすね」とわずかに笑みを浮かべている。バスオンのことは当然心配なのだろうが、みんなの手前あまり落ち込んだ様子は見せないように努力しているようにも見える。
 そんなオカンの気遣いはさておき、走輔は修行を受けることを思いつく。今の自分たちの実力ではヌンチャクバンキらにはかないそうもない。手っ取り早く強くなるためには、ひとつゲキレンジャーを見習って修行に励もうではないか、という発想だ。本来長い時間をかけて鍛錬されるものであるはずの修行という行為は、短時間での詰込みとは相性が悪そうにも思えるが……。
 戦闘に多少の心得があるゴーオンジャーたちに対し、ジャンらが課した修行は最初からクライマックス級の難易度である。ジャンはビルの1階から屋上までの壁面雑巾がけ、ランは落ち葉を残さずキャッチ(落ち葉を降らす係はケンが担当)、レツとゴウはというと兄弟でピアノを合奏している。しかも足指で。爪先で鍵盤の上に立ち、まるでバレエを踊るがごとく優雅に。曲目は「英雄ボロネーズ」、まず手で弾くのも大変なのに、それを初心者の連と範人にやらせようというのだから恐ろしい。
 あまりの厳しさにくじけそうになる早輝たちだが、先輩たちからの励ましもあり、なんとか課題に取り組んでいく。ただし、ジャン・走輔ペアだけは少し様子が違うようだ。
 言い出しっぺでもあり、修行については一番乗り気だった走輔。形から入る気合の入れようだが、先生役のジャンはそこまで気合が入っていない。一度お手本を見せた後は、失敗を繰り返す走輔を眺めているばかりである。
「これでなんとかなるんだよな? いいんだよなこれで!?」
 度重なる落下で心も折れそうなのだろう。必死に救いを求める走輔に、ジャンはとぼけたように返す。
「ん~、わかんねえ」
「はぁ!? ちょ、なんなんだよそれ!!」
 胸ぐらをつかんだところで、ボンパーからガイアーク出現の一報が入る。修行に使っていた雑巾を踏みつけ、駆けだそうとしながらも、(今の俺が行っても出来ることなんか……)と迷う走輔。
「修行したいって言ったのはお前だ。……どうする?」
 言いながらすっと腰を下ろすジャンがひどく大人びていて、ああこの子も立派な先輩になったんだなあと謎の親目線でじんわり感慨深くなる。さておき、ガイアークとの戦いはウイングスに預け、修行を再開する走輔。だが、どうしても壁登りをクリアすることが出来ず、ずるずると仰向けに倒れ込んでしまう。
「俺は一体、何をしてんだろ……」
「したかったんだろ、修行」
 淡々と指摘するジャン。ジャンに覗き込まれながら自問自答する走輔は、最終的に雑巾をジャンへおしつけ、走り出す。
「師匠、悪い! 俺は仲間を、俺のやり方で……!」
 走輔は確かに修行をしたいと願った。それは強くなるため、ひいてはスピードルたちを取り返すための手段としてだ。だが、いつの間にか修行を完遂すること自体が自分の目標になってしまっていることに、走輔は気付いたのだろう(「これでなんとかなるんだよな?」)。強くなるためではなく、「修行をする」ための修行。ジャンも気が乗らないわけだ。
 だが今、走輔は自分のやらなくてはならないことに気が付いた。それはジャンのような凄技をマスターすることではなく、走輔にしかできないことだ。
 ふ、と息だけで笑いながら、ジャンは弟子の後姿を見送る。

・VSガイアーク②

 走輔が飛び込んだのは、ウイングスが今まさに苦戦している現場であった。ヌンチャクバンキに拳を入れ、大翔たちから引き離す走輔。
「スピードルのためなら無茶でもなんでも突き進む」と強く気合を燃やしたとき、走輔の体からは真っ赤なオーラが立ち上る。戸惑う走輔。と、どこからともなくまばらな拍手が聞こえてくる。見上げると、切り立った崖の上にはまるで孫悟空のようにひょっこりと腰かけたゲキレッドの姿がある。
 ゲキレッドによると、そのオーラこそが激気なのだという。修行を投げ出してきたのに、と訝しむ走輔。だが、自分にとって大切なのが何かに気づいたあの瞬間に、走輔の修行はすでに完了しているのだ。
「お前とドルドルがムニムニだから、お前のゲキビーストはドルドルなんだ。今からお前は、炎神拳の使い手だ!」
 文字に起こすとさっぱりだが、言いたいことは分かる。コンドルとレーシングカーをモチーフにしたスピードルの形をしたゲキビースト、というちょっぴり複雑な状況だが、ともかくここに炎神スピードル拳の走輔、爆誕である。
 激気スピードルとともに繰り出したサーベルストレートにより、無事スピードルソウルを取り戻した走輔。ほかのメンバーも各々の修行で無事に炎神拳を繰り出しており、オンオン弾・バルバル弾などの技を用いて次々に相棒を取り返していく。範人がケガレシア様の鼻っ面をしっかり殴っていてちょっと意外な感じ。

・よみがえる人たち

 レッドたちの活躍によりヌンチャクバンキは卒倒。劣勢を敏感に察知し、さっさと退散していく三大臣たち。
 だが、倒れていたはずのヌンチャクバンキは不意に起き上がる。一歩、二歩、ぎこちなくこちらへ歩いてくるその姿は、もはや蛮機獣のものではない。ヌンチャクバンキの身体を脱ぎ捨てるように現れたのは、不敵な瞳に歪んだ笑い、無間龍ロンそのものである。メカの目論見は最初から、ヌンチャクバンキを依り代にしてロンを復活させることであったのだ。
 だが、その復活を敏感に察知していた者たちがいた。さきほどヌンチャクバンキに手ひどくやられていた須藤兄妹だ。ふたりはロンの強烈な悪意とともに、誰かの呼び声を聞く。力を貸せと言うその声に、大翔は短く尋ねる。
「あんた誰だ」
『無間龍に、因縁を持つ者』
 そんな二人のもとに現れたマスター・シャーフー。どうやら須藤兄妹は幼少時にゴリーのもとで激獣拳をたしなんでいたらしく、そのつながりでシャーフーのことも見知っているようだ。拳と手の平を合わせて律儀に礼をする大翔が格闘家らしくて大変良い。
 シャーフーの要請により、大翔たちは秘伝のゲキワザに協力することとなる。トライアングルを描くように立った三人がそれぞれの激気を高めることで、中心部から白いオーラが立ち上る。そして……。
 ロンの攻撃を受けて転がっているジャンたち。まさに絶体絶命のピンチだ。そこに颯爽と飛び込み、驚くロンを殴り飛ばす一匹の獅子とカメレオン。
 シャーフーのゲキワザは、理央とメレを冥府から一時的に連れ戻すものであった。確かに、メレの声が聞こえた須藤兄妹でなければこのゲキワザに協力は出来まい。
 記憶の通りのクールな理央とにやにや笑いのメレ。「誰なんですか、あの人たち?」という早輝の呟きに、ジャンは呆然と「ともに高みを目指した、俺たちのムニムニだ」と答える。
 日没までに戻らなければ永遠に地獄をさまようことになり、二度と転生できなくなるかもしれない、というリスクを負ってまで、ロンとの因縁を果たしに蘇った理央たち。ジャンたちを助けるというよりは、完全に臨獣殿の意地であろう。そして行く先が地獄だろうがどこだろうが、どこまでも理央についていくのがメレの存在意義である。
 理央の覚悟を聞き、座り込んでいたジャンも腰を上げる。片手をついてくるりと足を入れ替えながらロンに向き直り、しっかりと腰を落とした姿勢でゆっくり立ち上がりつつ、きりっと目線を前に向ける。
「ロンを倒す……それが俺のピカピカの道だァーっ!」
 ジャンの叫びに呼応するように、ゲキレンジャー、そしてゴーオンジャーも立ち上がる。いま、再起の時である。

・VSロンバンキ

 ロンは再びヌンチャクバンキの身体へ戻り、七首の龍の姿・ロンバンキとなる。対するゲキ・ゴー・リン連合軍もそれぞれ変身。ゴーオンジャーの変身シークエンスに合わせて頭上からメットオンするゲキレンジャーやリオたちというちょっと目新しい映像もはさみながら、名乗りを行っていく。ゴーオンジャー5人+ウイングス2人+ゲキレンジャー5人+臨獣殿2人、プラス戦隊ごとの名乗りがあるのでまあまあの長尺なのだが、省略しないでくれるのがありがたい。ラストの理央メレが全く焦らずに悠々と自己紹介しているのは流石の強キャラ感、無言でポーズを決めただけで背後に爆発を起こすのもよきです(「我ら、臨獣殿!」とか声を合わせ始めたらどうしようかと思った)(それはそれであり)。「俺たち!」「スーパー戦隊!」のくくりの中に入れられたのは、理央様たち的にはもしかしたら不服かもしれないが、そこはひとつご容赦いただきたく……。
 臨獣拳の唯一の生き残りであるメカに全く容赦のないメレ様。大翔とふたりでさっくり圧倒。ゲキレッドとリオもロンへと拳を繰り出し、互いの腕が鈍っていないことを確認する。この戦いを通じたコンタクトよ! 拳を介した心と心の通じ合い!

・巨大戦だヨ! 全員集合

 メカを撃破したことにより、ロンバンキは巨大化。連合軍もすかさずエンジンオーG9とゲキリントージャウルフを組み上げ、戦う姿勢を見せる。
 運よくこのタイミングでインドから日本へたどり着いたバエの実況により、戦闘スタート。ターバンとお衣装がキュートですね! 序盤はロンバンキが優位に駒を進めるも、ここでゴーオン勢はご先祖たちを投入。ゲキ勢はサイダインを召喚し、一気に畳みかけに入る。
「そうだ、俺たちにはソウルがある!」
「グラグラ燃え滾る、26もの正義のソウルが!」
 人間14+炎神12=26。ただしサイダインは数に含めないこととする。証明終わり。
 というわけで、エンジンオーG12にサイダイゲキリントージャが並び立ち、最初で最後のトドメの一撃を放つ。
「スーパー戦隊・炎神ビーストグランプリ!」
 すべての炎神とゲキビーストがロボから飛び出し、駆け抜けるようにロンを攻撃していく。みなの正義のソウルがいま、悪の心を打ち砕いたのだ。

・さようならはまた会うためのおまじない

 拾い上げた慟哭丸を、理央は少しだけ見つめる。ちょっと口角を柔らかくして、傍らのジャンに「ん」と放り投げる。この小さな一言がぐっとくる。ひどく気軽で親しみのこもった、まるで仲の良い兄弟子のような仕草だ。
 受け取ったジャンは、また迷子の子どものような顔になっている。見かねたメレが「なんて顔してんのよ」といさめる始末だ。
「理央様といろいろできて楽しかった」だの「ちゃんと修行しろ」だの「バエ、あんたもくたばんないようにね」だの、言いたいことだけ一方的にまくしたてるメレ。無言で踵を返す理央に嬉しそうに寄り添い、弾むように歩いていく。その理央は一度だけ振り返り、ジャンに呼びかける。
「約束、忘れるなよ」
 微笑んで、また二人は歩き始める。皆が見守る中、理央とメレの姿は光の粒となって夕暮れに散るように消えた。ひとときの奇跡は終わったのだ。
 二人の出場はもちろん大人の事情もあったかもしれないが、でも個人的にはすごく嬉しい。消化不良になっていたロンとの決着をきちんとつけてやることが出来たし、悲しい別れをあたたかな夕日の色で上書きすることが出来たように思うからだ。これから先ジャンたちは、理央とメレのことを思い出すとき、きっといっしょにこの夕日とコスモスを思い出すことになる。そして、笑顔で去っていく後姿を。

・誕生日はエンディングにのせて

 なつめの誕生日パーティーにおよばれするゴーオンジャー一行。連特製エッグタルト(卵の買い出しは軍平)と美羽の作った豪華な花束を貰い、なつめもご満悦である。
 自分に誕生日が無いことを残念がるジャンに、「じゃあ今日にしちゃえば」と提案する範人。
「なんで今日なんだよ」
 ビールのピッチャーを片手にケンが尋ねると、山盛りの料理を皿に乗せた走輔が答える。
「俺たちと初めて出会った記念日が、今日だから」
「なるほどな、まいったぜ」
「記念すべき、スーパー戦隊誕生日ってことね」
 にこにこしながら美希が言うが、つまりどういうことだってばよ。なんにでもスーパー戦隊をつければよいというものではない。……まあ、ボンパーもジャンも嬉しそうにボンボン言っているから良いとするか……。
 ギターをかき鳴らす大翔、マイク片手に楽し気なシャーフー。レツは美羽の絵を熱心に描いているし、なつめとゴウ・早輝・軍平はなぜか4人で踊っている。走輔とジャンは腕相撲の真っ最中だ。幸せなリズムに乗せて、なつめとジャン、それに二つの戦隊の出会いが生まれた、誕生日の夜は更けていく。


 おまけのG3プリンセスライブ映像や劇場版ED曲ライブ映像も大変ようござんした。最初から踊ることを放棄しているアニに笑った。

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