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マグネシウム《哀しき派遣のエース》を応援しています

健康に最も重要なミネラルを選べと言われたら何を推しますか?
推しミネラル。推しミネ?

鉄、カルシウム、亜鉛、カリウム、マグネシウム、銅etc.
人気投票をしたらどうなるか興味深いですね(参加者いるのか?)。

ちなみに私の推しはマグネシウム[Mg]です!
ここ数年で、私の中では評価がぐんぐん上昇して、今や玉座に鎮座しているMg。
方や以前の私がそうだったように、おそらく多くの方が大して評価していないであろうMg。
タイトルで《哀しき派遣のエース》と形容したこのミネラルが、私たちの健康に唯一無二である理由を本稿で語らせていただきます!


出会ったときは光輝いていたMg

初見は中学校の理科だったかもしれない。
Mgは『酸化すると発光する物質』として当時の中学理系男子たちにとって衝撃的なデビューを飾ったのでした。

しかしそれも束の間、実際の発光反応と同じく、一瞬の輝きをピークにその栄光も収束してしまいます。
それは炎色反応と呼ばれる、赤、緑、紫、黄など、色彩豊かに発光する他の金属たちが現れたことで、ただ白く光るだけのMgは飽きられてしまい、ランキングから陥落してしまうのです。

炎色反応

葉緑体とヘモグロビン

高校生物で再び出会ったMgは生体内の補酵素としてでした。
植物が光合成を行うのに必要な葉緑体。その主成分となるクロロフィルに関わるミネラルとしてMgは教科書に載っている。

ただしそれは比較対象としての扱い。主役はヘモグロビンの中の鉄[Fe]なのです。

「葉緑体のクロロフィルと、赤血球のヘモグロビンは蛋白質構造がほとんど同じ。緑か赤かの違いは補酵素がMgかFeかによる。」

色を得たMgだが時すでに遅し。ヘモグロビンの格には適わず後塵を拝すのでした。

クロロフィル
ヘム(ヘモグロビン)

出世したミネラル[鉄とカルシウム]

そもそも"補酵素"として扱われる時点で、主役を酵素本体である蛋白質に譲ってしまっているミネラルたちですが、鉄[Fe]とカルシウム[Ca]は存在感のアピールに成功して、高い評価を得ているようです。

動物の酸素運搬に欠かせないヘモグロビンで働くFeは、減少すると貧血になるため常に需要がある、過重労働の運送部門スーパースター

筋肉収縮(ミオグロビン)、神経伝達、血液凝固反応、血圧調節、骨や歯の強化など、生体内の至る所に現れるCaはもはやマルチタスクの権化であり、生ける伝説の営業マンかもしれない。

彼らの働きぶりは待遇の高さにも伺えて、
Feにはトランスフェリンやフェリチン、CaにはPTHやカルシトニンといった、仕事量を調節する"秘書的役割"の酵素やホルモンがついているのだ。
店頭の食品のパッケージにも「鉄分配合!」「カルシウム増量!」の売り文句が並び、生体内で彼らがいかに必要とされているか、巷には十分すぎるくらい伝わっているし、その評価はもはや揺るぎません。

Mgは総務課で働く

一方のMgは細胞内と骨に多く含まれ、いわば裏方ポジションとして働いている。表舞台の血液中にはほとんど出てこない。
その役割は【補酵素】で、花形のヘモグロビンこそFeに譲っているが、他の多くの酵素反応に関わっています。

特に重要なのは糖代謝。

糖(糖分、炭水化物)がエネルギー源として必要のは誰もが知るところですね。その糖をきちっと分解して、生体が使えるエネルギー(ATP)に変換する過程に必須なのがMgなのです。

特にミトコンドリアで生成されるエネルギーはその大半を占めていて(グルコース1分子から得られるATP36分子中の34分子!)、ミトコンドリアがないと生物はその形を維持することも困難になります。

ミトコンドリア

ミトコンドリアの外では、糖は乳酸までにしか分解できず〈解糖系〉、乳酸が増えると体液は酸性に傾いてしまいます〈アシドーシス〉。
Mg不足で筋肉痛になるのは、ミトコンドリアが働けず乳酸が蓄積してしまうから。あるいは貯まり過ぎた乳酸は脂肪にも変換されるので、肥満もミトコンドリア機能が弱っているせいなのです。

会社に例えると、
仕入れた資材を社内(生体内)で共通して使える形にしたり〈ATP合成〉、業務(代謝)で生じた廃棄物(老廃物)を処理して環境整備に取り組んだり、ミトコンドリアは生体内の【総務課】として多くの雑務を絶え間なくこなし続けているのです。
そしてそこに配属しているのがMgです。

ミトコンドリア『社内外注先』説

ミトコンドリアは、実は別の生物が細胞内に棲みついたと考えられています〈細胞内共生説〉。
元来、酸素が苦手だった細胞が、酸素を無毒化できる古細菌を取込んだことで共生が始まり、その古細菌がミトコンドリアになったという学説です。

つまり、ミトコンドリアが担う仕事はアウトソーシングで、それが細胞内で行われている状態は【社内外注】とも言えます。

社内外注、それは請負業務のようなもので、そうするとそこで働くMgはいわゆる【派遣さん】扱いなのかも。
実際、FeやCaのような調整機構はなく(一応、PTHやビタミンDで多少は調整されますが)、減っていても感知されません(涙)。

そんな頑張っても評価されにくいポジションに居ながら、エネルギー産生や抗酸化といった、日常的でかつ不可欠な仕事を粛々と進めるMgは《哀しき派遣のエース》と呼ぶにふさわしいと思いませんか?

Mgはもっと評価されていいし、丁重に扱われていいのに。
そんなMgを私は推していて、その働きぶりがもっと周知されることを願っています。

Mgを見直した!うち(の細胞)でも働いてほしい!と感じてもらえたら、緑の野菜に含まれるクロロフィルでMgをたくさん摂ってくださいね。

Mgで光り輝く未来を!

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