「十字屋敷のピエロ」を読んで
最近東野さんの作品を、年代順に読み進めています。今回は、第九作品目の「十字屋式のピエロ」です。今まで学園ものが多かった印象ですが、今回は本格ミステリー小説です。十字の形をした館に、ピエロ、わけありな家族、とかなりそそられる内容です。
冒頭の狂気じみた自殺、そして独特な描写であるピエロの目線をはさみつつ繰り広げられる会話、全員が何かを隠していそうで犯人なり得る描写が多く、終始ワクワクがとまりません。
二つ印象に残っていることがあります。一つがピエロの存在です。東野さんは今まで、基本的に登場人物の目線から物語を作っていたのですが、今回は人ならざるものである「ピエロ」という存在からの視点が含まれてきます。作中の登場人物と会話をするのではなく、読者に対してピエロが見た光景を開示してくれます。ピエロの周りではやはり殺人が起こる。もしかしたら今回は超オカルト路線なのかもしれないと思いましたが、そこは裏切らず本格ミステリーで、全ての行動、存在に明確な理由がありました。最後の方は読んでいて「そういうことか」と納得の連続に興奮しました。
もう一つは、物語の最後である登場人物がピエロに対して発した一言。これは鳥肌ものでした。つくづく東野さんは、落ちに落ちを重ねてくると感じました。すごい。
内容にはあまり触れることが出来ませんが、ピエロの視点が織り交ざったミステリー小説は、新鮮でしたのでまだお読みになっていない方はぜひ手に取ってみてください。
https://higashinokeigo.net/detail/009.html
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