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映画『アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件』を観て


フィリップ・ラショー

春なので心身ともに、だるい。
昨日はつらくて、家から外に出ることすらできなかった。
今日はアツアツのパスタを作って食べようとしたら、口にやけどした。
もう生きていても、愉快なことなんて何もありはしないと思う。
思えば、諦めばかりの人生だった。

憂さ晴らしと思い、軽くワインを飲んで、フィリップ・ラショー(1980年生まれ)のコメディ映画をアマゾンプライムで観た。
『アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件』(2017年)だ。めちゃくちゃ下らないが、笑えた。
 
フィリップ・ラショーは日本でも、『真夜中のパリでヒャッハー!』(2014年)、『世界の果てまでヒャッハー!』(2015年)、そして近年では『シティハンター THE MOVIE史上最香のミッション』(2019年)、あるいは『バッドマン 史上最低のヒーロー』(2021年)で、若い人からも人気だ。サイコーとか、サイテーとか、忙しそうだ。
 
子供の頃、ラショーは漫画が大好きな少年だったらしい。
『キャッツアイ』や『シティーハンター』の大ファンだったとか。
 
政治性、ゼロ。
メッセージ性、ゼロ。
笑わせるが勝ち。
 
そんな80年代の日本の漫画スピリットによって育てられたラショーの映画は、次から次へと、よくぞ思いついたと感心する、奇想天外なギャグの機関銃だ。
そして映画という非日常にふさわしい、小さなところまで手を抜かない、豪華な絵づくり。
 
エロディ・フォンタン、ジュリアン・アルッティ、タレク・ブダリら、いつものお決まりの仲間たちとの共演も、アマチュアぽくて愉快だ。大学時代の仲良しがそのまま大きくなったような。
そのくせタレク・ブダリとか、キャラで売るのではなく、毎回毎回ちゃんと違う人物を演じているのだから、芸達者というほかない。
 
 

発見(ダリダに見出されたジャン=リュク・ラエ)

少なくとも2回は観ている『アリバイ・ドット・コム』だが、今回また観て、またまた新しい発見があった。
ラショーの車のラジオから流れる音楽が、ジャン=リュク・ラエJean-Luc Lahayeの「愛する女Femme que j’aime」(1982年)で、フォンタンの携帯電話の待ち受けも同じ曲で、それに気づくことがふたりの恋の始まりになっている点だ。
 
ちなみにラエ(1952年生まれ)は、とあるバーで働いていたところを、あの歌姫ダリダ(1933年生まれ)に見出され、彼女が住んでいたアパルトマンの一室に住むことになって、そこから音楽活動のキャリアを始める。1979年に最初のシングルを出すが、1982年の「愛する女Femme que j’aime」がメガヒットとなって、アイドル・スターの階段を登る。
 
「愛する女Femme que j’aime」の歌詞は実にシンプルで、難しい単語も使われておらず、わかりやすい。フランス語の教材にしたいくらいのわかりやすさだ。
要するに「愛している」のだそうだ。


無意味なコメディに無意味な挿入曲


無意味な軽さが懐かしく思えるときがある。
意味や技巧がてんこもりのニューミュージックも悪くない。
けれど疲れたとき、もう何も考えたくないとき、ただただおバカさんになりたいときがひとにはある。
さだまさしだって『防人の詩』だけではなく、『シラミ騒動組曲』も作っている。
週末くらい、バカになろう!
 
春はだるい。

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