淡い紫色 《詩》
「淡い紫色」
それは眩しく綺麗な光だった
僕の足元を区切り領域を作り出す
彼女は光の中に居て
僕は影の中に居た
その影に色は無かった
誰にも害も罪も無い
この世界にふさわしい
愛の歌が街に流れていた
僕は その歌の
タイトルも歌手名も知らなかった
その歌の歌詞さえも
頭の中に残らなかった
彼女の長い髪が
幾何学的な線を描き風に揺れた
交わした言葉は
散文的で表情を持たず
何かの説明文の様だった
僕は水の底に沈んでしまった
街の沈黙を想い
彼女は高層ビルの窓に
幾つもの自分の姿を
映しながら消えていった
見覚えの無い
淡い紫色のワンピースを着ていた
それだけを覚えている
Photo : Seiji Arita
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