見出し画像

目的と目標と手段の話

 白い巨塔では地位と権力を手に入れることを目的に、手段を選ばない人もいます。それは時に恐ろしい事件を引き起こしますが、目的を達成するというブレない一点を目指す姿勢それ自体には、大いに学ぶことがあるものです。

 目的(purpose)は行動原理に近い概念で、動機の理由となるような目指すべき最終地点です。

 目標(goal)は目的を達成するために到達すべき通過点であり、最終目標は目的と一致します。

 手段(means, way)は目標を経由しながら目的に至る道に相当し、その具体的な方法を示します。


 目的、目標、手段を明確に言語化すると、視点が切り替わり諸問題が解決されやすくなることを度々経験します。或いは漠然とした日々の閉塞感を解消する一手になることもあるでしょう。

 ロールプレイングゲームを例に考えます。

 クトゥルフなTRPGをイメージしてもいいし、ドラクエやFFに代表される和製RPGでも構いません。ゲームのことは分からない、という方は世界平和のために悪役をやっつける系の少年漫画や小説を思い浮かべていただくのもいいでしょう。

 多くのRPGのプロットでは、最終的に打倒すべき敵役がいて、討伐後に世界平和が訪れます。

 目的は「世界平和」
 目標は「ラスボス討伐」
 手段は「敵を駆逐しながらストーリーを進める」

となります。目的達成までに設置する目標は複数であることが通常で、ダンジョンを攻略したりザコ敵や中ボスを倒したり、仲間を増やしたり住民を助けたりすることも目標になるでしょう。

 もし主人公が戦闘狂だったら敵を駆逐することにカタルシスを感じ、平和な世界など実現させまいと願いラスボスを生かしておくかもしれません。これは手段の目的化です。

 もし裏技やバグの利用でゲーム開始まもなくエンディングを観ることができたら、それは目的のために手段を選ばないということです。

 果たして魔王とは打ち滅ぼさねばならない存在なのか、と考える主人公は対話による和平を目指すかもしれません。これは目標の再設定と手段の変更です。危ないのでフリーレンを呼んでください。

 もし世界平和にもシナリオにも戦闘にも錬金術にも興味のないプレイヤーが『ライザのアトリエ』をプレイしていたら、それは手段ふともものためには目的を選ばない人かもしれません。一番ヤバいタイプです。


 さて、このように考えますと、日常生活や仕事、大きく捉えれば人生において目的・目標・手段を言語化することの意味が見えてきます。

 今を楽しむことを目的に据えるならば、例えば一日一食は好きなものを食べるとか、年間26人斬りを目指すとか、そういう目標があってもいい。すると目標を達成していくために美味しいお店をリサーチしながら街へ繰り出したりマチアプに勤しんだりするという手段が浮上します。26なんて中途半端な数字ですが、2週間毎に新規1人と考えると実現可能なラインのような気がしてきます。

 重要なのは目的以前に何かしらの問題があって、それを解決するために目的が掲げられるということです。そして現在地から目的地までの中継地点に、幾つかの目標を考えます。然らば手段は自ずと導き出すことができるでしょう。

 今月に入ってから立て続けに数人から「何のために生きるのか分からない」とか「人生の目的がない」といった主旨の相談を受けました。

 目的がなければ目標も手段もありませんから、それは空虚なことでしょう。

 これは正解のないテーマかもしれませんが、私はひとつの提案として、目的と目標と手段の話をしました。目的を探すには、まず現在の問題を見つけるのがいい。問題を問題と認識するならば、それは貴方にとって解決されるべき何かだからです。

 解決手段を考えると、問題が解決した先に起きること、すなわち目標が見えてきます。幾つかの目標を経由しながら分析することで、その先に目的が見えてくるかもしれません。

 もし目的が何も見えてこなくても、「問題を探し解決手段を考え目標を設定する」という手段の目的化によって、逆説的に目的を手に入れることができるでしょう。


 ええ、最後のは詭弁です。

 しかしながら「何のために生きるのかわからない」とか「人生の目的がない」といった心の状態に比べたら、余程健全と思います。


 いつか貴方が何かに行き詰まったとき、目的と目標と手段の話が役に立つかもしれません。その時、この記事の目的が達成されるでしょう。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、何処かで絡んだ思考のイトが、そっと解けていきますように。




#ゲームで学んだこと #クトゥルフ神話
#多様性を考える #最近流行りのやつ
#エッセイ #医師 #占い師

この記事が参加している募集

ゲームで学んだこと

多様性を考える

ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。