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 何年か前に、子猫が死んだ。正確には死んだと聞いた。もし聞かなければ死んだとは知らなかった。ただ、聞かないわけにはいかなかった。なぜならその子猫がその場所にいるはずだと知っていたし、その場所を通る事なく家に帰る事はできなかったから。

 猫が死ぬものだとは知っていた。人生の中で猫と一緒に生活していた時期はこれまでもあった。何度もあった。一緒にいた猫は全て死んだ。猫という動物は死ぬようにできている。ひとつには、猫の寿命はなぜか人の寿命より短い。猫はいつでも人間に理解できる言葉を喋らないから医者に行くのが遅れる。医者に診てもらっても手遅れになる事が多い。猫は痛い時に痛いと表現しないことがある。猫はちょっとした感染症でもすぐに死ぬ。猫はわからない理由で死ぬ。

 さっきスーパーマーケットの食品売り場を歩いていて突然思い出した。何年か前にあの子猫が死んだ事を。理由は無い。あの子猫はどこから来たか誰も知らなかった。だから住宅地の警備員室に預けられた。人懐こい性格で誰にも懐いていた。皆に可愛がられた。警備の犬の餌を分けてもらって食べていた。犬の餌は子猫には粒が大きめだったが何とか食べていた。食べて寝てコロコロとよく遊んでいた。

 ある日、子猫の姿が見えなくなった。警備員は車に轢かれたと言った。そんな理由で猫は死ぬ。仕方ないね。猫は死ぬものなんだから。毎日猫は死んでいるからその中の一匹になったんだ。

 猫は死ぬものなんだ。理由は無い。

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