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漫画の元

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漫画を描く前に書いてる小説未満のものをたまに上げようかと思っています
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退魔の誠①

退魔の誠①

滅亡王国シリーズの中盤あたりの話なので、いつか漫画で読めるならその方がいいよ、という方はお待ちください。ネタバレです。
別に気にしないよ!て方はどうぞ。小説未満に近い。

「今日も喪服ですか」

おおよそ出発の準備を整えた私は、我が主の埃っぽい自室に足を踏み入れた。主は珍しく鏡の前に立ってクラバットを整えている。
「うん?」おそらく聞こえていない。
「そういや見合いの写真まで喪服でしたね。結婚する

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末永く幸せに

末永く幸せに

生きる事には何故こんなにも塵労が纏わりつくのか。

僕は新しいスリッパに履き替える。
上履きは遠の昔に焼却炉で焼かれ、学校で借りたスリッパも何度となく切り裂かれ、僕が早朝事務員室に新しいスリッパを借りに行くのもほぼ日課になってしまった。
僕の言う事を理解出来ない人間のする事は、僕も理解出来ない。ただただ暇で暇で仕方なくて、暇潰しに使用されているのがたまたま僕なのかもしれない。

化学部にいる時は楽

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再会再度(『再会』『その後』の続き)

再会再度(『再会』『その後』の続き)

「お前またゴミ箱に小便したろ」
冬の寒い風呂場で兄はゴミ箱を洗っている。
「知らない」
僕は馬鹿みたいな嘘を吐いた。馬鹿だから。
「ばれる嘘なんて吐くな。つまんねぇ奴」
そうだ、僕はつまらない。未だにクラスで一人だけ九九が覚えられない。靴の左右は履き間違える。同級生には臭い臭いとどつかれる。
僕は本当につまらない人間らしい。
「布団にしなくなったのは進歩だけどよ。片付けんの俺なんだけど」
「知らな

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まきまき③(終)

まきまき③(終)

病院に着いた2人。
長いスカートをはいた長身の千軸がかけてくる。
「須波さん!・・・・・・ごめんなさい!私が側溝側歩いてれば~!杖つこうとしたとこがちょうど側溝で、バランス崩して」
「いえ、いえいえ、千軸さんのせいじゃないです。妻は?」
千軸に病室まで案内してもらった。
「ごめーん、夕くん」
頭にガーゼとネットを被せている都がベッドに座っていた。
「今日、富士Qだったのに~、ごめんね、私が世話焼け

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まきまき②

まきまき②

会社近くのコメダ珈琲店。
ユダはホットドッグ、須波はシロノワールを食べている。
「ユダくんって、湯田って苗字じゃなかったんだね。知らなかったよ、ごめん。ずっと名前呼びとか馴れ馴れしかったね。林くんって呼ぶね」
「いや、ユダでいい・・・・・・林ユダって変な名前だろ。俺、高校の時散々名前でいじられてたのに、知らなかったのかよ」ユダが笑う。
「ごめん、人の名前覚えるの苦手で。ユダくんのご両親ってクリスチ

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まきまき①

まきまき①



「湯田くん・・・・・・だよね?高校一緒だった・・・・・・」
ここはラブホ。今は事後。須波はシャツを肩にひっかけたままベッドに座っている。
須波は賢者タイムの頭で高校時代の湯田くんを必死に検索していた。
彼はズボンを直に穿きながら何の驚きも無く返答した。
「やっと気付いたか。俺、セックスする前に気付いてたぜ」
「え、えー?なんで言ってくれなかったんですか・・・・・・」
「言ったらやるのやめるかと

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殺し屋の女×情報屋の女

殺し屋の女×情報屋の女

「おい、ここは病院じゃねぇぞ」
頑強な鎧戸の下半分を開けた状態でマンワイは言った。
外は大雨だ。訪問者の黒く見えるワークブーツも、その上のズボンもびしょ濡れだった。夜の闇に紛れる服装とは反対に白い腕から鮮血が滴っていた。
「そうだな、入れてくれ」
馴染みの者でなければ聞き取りにくい程の低い濁った声で訪問者は言った。
こいつは昔から話が通じない。マンワイは背中のグロックに手をかけた。
「平気だ。まい

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