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寿製菓株式会社(米子市旗ヶ崎)

 昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年7月15日号より、寿製菓株式会社をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。

【事業所めぐり32】寿製菓株式会社(米子市旗ヶ崎)


台湾から復員した河越社長が、米子糧菓を買収、米子市角盤町でドロップス、キャラメルなどの製造を始めたのが昭和27年。ところが、31年に起きた火災事故で工場が全焼という悲運に見舞われたが、これを契機に同市旗ヶ崎に進出。現在の発展の基礎を築いた。

同社の主力商品である”因幡のうさぎ”は、昨年の全国菓子博覧会で名誉総裁高松宮杯を受賞するなど”山陰の月“とともに地元を中心に年々、売り上げを伸ばし、昨年実績3億円を誇っている。

うまい菓子づくり、地域ナンバーワンをめざす―をスローガンにしているが、同社長は「地域ナンバーワンをめざすということは、地元の商品は地元で育てて、地元で売るということです。そのためには顧客が求める商品を大切にして、商品・顧客・販売が一体となった製造販売体制を確立すること」と地元重視、顧客重視を強調する。特に、この不況下では、消費者の選別が一段と厳しくなってきており、商品カのある新商品の開発が要求されるという。その点、同社は他社に先駆け、ガス充てんによる完全包装を開発、商品の開発、改良には余念がない。

しかし、業界を取り巻く情勢は年々厳しくなる一方。昨年も前年比10%減と需要は落ち込んでいるが、価格の上昇で辛うじて横ばい状態を保っているというのが現状。同社長は県の菓子工業組合理事長も務めているが、「県内には263社が乱立していますが、その80%は従業員3人前後の零細業者。近代化とか、体質改善といってもそう簡単にはいきませんが、山陰という菓子づくりには恵まれない地方で永年鍛えられてきているわけですから、勇気と根性を持って京阪神をめざすくらいの気概でやれば、必ず道はひらけるハズ」と、県内業者の意欲に期待する。

元海軍教官だったという同社長。航空機一級整備士の資格もあるということで言葉の端々には、いい意味での海軍魂がうかがえる。「毎朝、大声で点呼をとってから作業を開始する」という。しかし、根性一点張りではなく、「喜びをつくり、喜びを提供する」という信念のもとに、高収益による従業員の所得向上にも意を注ぎ、今春も業界最高の12%のベースアップを実施している。

近く着工が計画されている旗ケ崎の食品加工団地への進出も決定しており、海軍魂に裏づけられた同社長のバイタリティーはすさまじいものがある。(昭和52年7月15日号)



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