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「互酬性はビジネスに織り込めるのか」  前回大好評だった互酬性シリーズ第二弾の全文がついに公開!

第一弾は、互酬性や人類学について幅広く扱いました。今回は互酬性というキーワードにフォーカスをあて、SEKAI HOTELが互酬性をどのようにビジネスに取り組めているのかを議論しました。前回に引き続き、SEKAI HOTEL代表 矢野浩一さんと、文化人類学を専門とされる大阪国際大学の准教授で文化人類学が専門の早川公さんを招き、参加者も交えながらのディスカッションが繰り広げられました。

渡辺優氏(モデレーター:以下渡辺):みなさんこんばんは〜!今回もたくさんのご参加ありがとうございます。前回のイベントが思った以上の反響で、第二弾の開催となりました。

モデレーターを務めさせていただきます、渡辺です。よろしくお願いします。では、本日は矢野さんからお願いします!

矢野:はい、お願いします。前回に引き続き互酬性についてお話したいと思うのですが、今回はSEKAI HOTELのビジネスを一つの題材にして互酬性の話をしたいと思っています。

前回のおさらいで、市場には無関係、上下関係、友好関係という3つの関係と、そこにおける様々な価値の交換がある、という話がありました。

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僕らがお金を払って市場からサービスを受けたり、商品を買うことが無関係の部分、国や行政のような上下関係がある中で価値の再分配がされる部分、最後に今回の互酬にあたる部分が友好関係、助け合いやおかげさまなどの部分が互酬性にあたります。

第一章 定量的な価値がもたらす”面倒臭さ”

まずは、弊社のSEKAI HOTEL事業にフォーカスして話をしていきます。
弊社は観光地のど真ん中というよりは大阪にある下町で運営をしています。他のホテルと違う価値観は”hospitality”ではなく”friendship”を大切にしている点です。サービスを提供する側、受ける側だけでの関係は非日常的体験としては良いのですが、それでは対等な関係性は生まれにくいですよね。なので僕らは、もう一歩踏み込んだコミュニケーションを通して対等な関係性を築いていくためにfriendshipという言葉を使っています。

たまたま早川さんが以前おっしゃっていた友好関係という部分を近しい言葉で表現できていたのは嬉しかったですね。

こちらは2020年4月から始まった”ORDINARY MARKET”というECサイト上で地域の日常体験をチケットで売るというサービスを商品化したものです。

その商品の一つである大阪人はすぐに”奢りがち”というチケットは単にお酒を飲めるだけではなく、どうせなら旅先で出会う地域の方にお酒を奢ってもらえる体験を買おう!ということで、フロントの斜め前にある居酒屋のマスターに協力してもらい実現しました。

お店に行くと、マスターではなく常連さんが一杯奢ってくれる仕組みとなっています。ちなみにもし常連さんがいなかった場合は、スタッフが走って奢りにいきます。

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もう一つ他のホテルと違う点は、ホテルを新築せずに空き家をリノベーションしているところです。これは建物だけではなく、ホテルの仕組みも再構築しました。もう一つ他のホテルと違う点は、ホテルを新築せずに空き家をリノベーションしているところです。これは建物だけではなく、ホテルの仕組みも再構築しました。

今回のテーマである互酬性の部分、助け合いやお互い様など、損得感情抜きのコミュニケーションの中でしか体験できないものを、いかにビジネスとして成立させることができるかを考えた時に、開発やホテル運営の仕組みにかかるコストなどを大きく見直す必要があるのではないかと考え、リノベーションや仕組みを再構築する手法を取り入れました。

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見ての通り、フロントは元婦人服屋さんの看板を残したままリノベーションをしています。

ホテルとしての運営も変えていて、従来であればリピーターのゲストを大事にしたり、広告を使って新規のお客さんが絶えずくる仕組みを作るのですが、うちは会社に関わる人だったり、すでにリピーターになってくれている人などを一種のファンコミュニティとしています。

ファンの方が集まってくれるイベントなどをすごく大切にしています。ホテルに関わる人がスタッフであろうと、地域の方であろうと、リピーターの方であろうと、みんなが少しずつCMしてくれるという手法で運営しています。なのであまり広告などは出回っていません。

具体的なイベントとして、年に一度関係者を集めて事業報告や活動報告をしています。前回も少しお話しが出たのですが、SEKAI HOTELに泊まっていただいた方がお支払いする宿泊料金の一部を積み立てて、地域の子ども達に教育事業として提供するSocial Good200という活動をしています。そのような活動報告を通し、ゲストの方や地域住民の方に感謝の気持ちを伝える場や、交流できる場としてこのようなイベントを行っています。

面倒臭さから成り立つ世の中の基準

互酬性をビジネスに織り込もうと思った時、お金を払う側の方も、ホテルの作り手にまわってもらうことが大切なのかなと感じました。そうすることでどうしても冒頭のhospitarityという言葉が若干邪魔になってくるのかなと思いました。

早川さんがおっしゃっていた3つの交換の話で言うと、上下関係、友好関係、無関係このバランスをうまくとることが改めて事業の肝なのかなと最近すごく感じます。

早川互酬性というのは関係をつくる交換とひとまず考えてください。そして関係をつくらない交換としての市場交換が、近代社会のメインになってきてしまっている、というところで危機感を感じ上の図の元となる議論を提起したのがカール・ポラン二ーという経済史家です。

それじゃなぜ互酬というコミュニケーションが衰退していったのかというと、関係をつくる交換は面倒臭いからなんですよね。

例えば僕が関わっている商店街も、義務買いという風習があって、「この前お世話になったからあそこで買わなきゃ」みたいなやりとりがあるわけです。それは単にモノを手に入れたりという欲望を満たすためなら余分だし非常に面倒くさいものだと感じてしまう。

その面倒臭さをSEKAI HOTELさんはなぜ自分たちの事業に組み込もうと思ったのですか?

矢野:もともとは18年ほど不動産の業界で働き、どれだけお金を儲けるかを考えていたんですよね。でも自分自身の働き方を変えたところから、色々シフトして今に至ります。

一方で、お金に換えることのできない感動や価値って面倒臭いんだなと思うようにもなりました。社会の課題を解決するような、形に残る不動産をしたいと考えたとき、クリエイティブなところも勉強していかなければならないと気付きました。

不動産を右から左へ売ると考えていた時とは全く異なる価値観の人たちと接する中で気づいたんですよね。この人たちがたくさんの時間をかけて悩み、生みだした金額と、自分が不動産をしていたときに生んでいた同じ金額があったときに、圧倒的に不動産をやっていたときのほうがかかっている労力が少ないんですよね。

唯一無二の価値を生むということは、どんな場面においても僕が生きてきた20代の頃に比べるとどれも面倒なものなのではないか。もう少し言うと実は世の中の基準っていうのは、僕からしたら面倒なところが基準なのではないか、と思うようになりました。

ホテル業に当てはめて言うと、ビジネスホテルのように「何室あるから何人スタッフいるよね」という生産効率を中心に人件費を考えるやり方から外れていかないと、ホテルの現場においてクリエイティブなことできない、面倒臭いことができない。

そのために開発費用を下げるという意味で、土地が狭いから安く購入できる空き家を使ったりしていく中で客室が分散しているといった状態にたどり着きました。

なのでイニシャルコストを下げて、そこから面倒なところにたどり着いたという感じですかね。

早川:今の話だと、もしお金があればビジネスとしてやらなかったということですか?

矢野:僕がこのような方向にシフトしたとき、お金はあまりありませんでした。元々は稼げていたところからリーマンショックがあったり、この事業(不動産)に飽きてきたと感じ始めていた時期でもありました。いよいよ売り上げも伸びないし、人も辞めていくってなったときに、もしこれがV字回復しても、またあの時のようなキリの働き方をするんだと思ったら逆戻りしたくないなと思ったんですよね。
https://note.com/clover_kujira/n/n239222ee4e93

お金があればこの考え方にたどり着かなかったかと言われると難しいですが、お金があった時の経験と無かった時の経験を踏まえてシフトしたという感じですかね。

早川:ありがとうございます。ぜひ、矢野さんに質問があればみなさんも
チャットに書いてくださいね。

チャット質問:楽とか面倒は心理的負担がかかるのではないか?

矢野:これは個人差がありますよね。面倒なことが好きな人、嫌いな人、それぞれいるので参考になるかはわからないですけど、心理的負荷がどっち側にかかっているかで結構変わるのかなと思っています。

例えば、地域の方でSEKAI HOTELへ協力的な人は倫理的負荷があまりかかっていないのではないですかね。当事者だからというのもあると思いますが、その辺は互酬の関係における幸福度ではないですかね。

関係をつくる2つの交換

早川:まちづくり研究や地域おこしの視点からでしか見れないのですが、それでいうとSEKAI HOTELがやっていることは、社会的にいいことをしているので、そういったところと親和性があるじゃないですか。

少し気になった部分で、こうした事業を展開する時に、自治体と連携するといった考え方やそのような話はなかったのですか?

矢野:今はDMOとも会議をしているのですが、当時は東大阪市の方が、布施でのOPENがまだ決まっていない時から1拠点目である西九条に視察に来てくれたんですよね。でもプロジェクトを始める時から立ち上げは行政の方とやらないって決めていたので、視察にきてくれた方にも「立ち上げは一緒にやりません。」って言っていました。今思うと生意気だなと思うのですが…。

でも、そこには明確な理由があって、”補助金頼りな計画にしない”とかそれ以外にも、”一から自分たちでやることで事業が宣伝されやすくなる”という部分もあるので、行政の方とはやらなかったんですよね。

立ち上がったものに対して、SEKAI HOTELでこんなことができるのではないか、という状態で依頼に来てもらったほうが、お互いの合意が早いんですよね。

早川:一般的に「市場交換は冷たいもの」で「関係をつく交換は温かいもの」というように、二方で考えがちなのですが、関係を作る交換は2つあって「友好関係(水平的関係)をつくるもの」と、「上下関係をつくるもの」で分かれています。行政機構は基本的には官僚制なので上下関係が生まれてきてしまいます。その辺に組み込まれないように(事業を)躱していったというのは、うまいなと思いました。

矢野:コレクティブインパクトとかって言うじゃないですか。みんなで取り組みましょうみたいな。地域・地方の話にはなるのですが、この地域での取り組みを大手企業がすることで儲かるならやってるんですよね。でも儲からないから放置されている。

要は大手企業の資本や人材、組織の規模があってもできないことを地域の少人数でやらなきゃいけないとなると、チームとしてのクオリティをめちゃめちゃこだわらないといけないと思うんですよ。メンバーを召集するタイミングだとか。だからこそ行政の方と組むタイミングや、どのタイミングで協力してもらうかなどはたくさん勉強しましたね。

渡辺:行政だと突き進んで公平さを重要視しなければならない。論理として大事な要素ではあるからこそ難しいですよね。矢野さんはよく”えこひいき”を公言されていますよね。

矢野:そうですね(笑)。素敵なえこひいきは互酬性なのでは?

渡辺:関係作りの一つですよね。コミュニティに入りたいと思わせると言いますか…。

矢野:脱線しちゃうかもしれないんですけど、学生が社会人になったタイミングでも、「就職するまでに大人の方からえこひいきを受けられるスキルを身につけていけよ」と言ってるんですよね。それは才能ではなくて、努力だと思っています。

”ヨーイドン”で4月から新入社員になりました、という時に差はありますが、努力によって追い付いたり抜いたりはあると思うので、えこひいきの受け方を真面目に教えています。この関係って先輩後輩というところでは上下ですが、可愛がられる愛嬌を差し出して、何か物的、精神的なものを受け取るというのは互酬ではないかと思っています。

第二章 境界線のないコミュニティとは

互酬性を今後ビジネスに体現するときに大事になるものがあると思っていて図面にしてきました。

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コミュニティの話になるのですが、そもそも僕は人々が集まりやすい人気のあるコミュニティの考え方が変わってきている思っています。

人が集まりやすい人気のあるコミュ二ティとは、旧来型のピラミッドで境界線がしっかりしていて、管理されるコミュニティです。しかしそこから、もともと境界線があってないようなもの、階層がないコミュニティこそ今後、人が集まるコミュニティに変わっていくのではないかと考えています。

曖昧だからこそ互酬の関係はすごく大切なんだろうなと思います。オンラインサロンのようなものでもいいですし、地域イベントのような”単発なもの”から”年間通してやろうよ”という時も、それに群がる人って発起人のビジョンに面白そうと共感し加わっていくことで、物理的な報酬以外を受けることができます。これも立派な互酬の部分だと思っています。

今後はチームやコミュニティを作るときは、同心円状で境界線でない方がいいと思っています。実際SEKAI HOTELで言えば、こんなことやりたい!と言っていることに対して、投資してくれる人もいるし、参加するという形で、ライトでラフな感じで応援してくれている人もいる。

今後はベーシックなコミュニティのあり方に変わっていくのではないかなと思います。

早川:どんなところに共感している方が多いですか?

矢野:僕たちはコミュニティをつくるホテルでもあり、地域の方もゲストもスタッフも、対等なコミュニティを作ることで、ORDINARYという日常体験をすることができます。国籍とか世代とか観光客、地域住民など、みんなが楽しく集まることのできるホテルを目指しており、このホテルモデルに賛同してくれる方が集まってくれています。

自然とNo Borderな社会の実現ができると思っています。この絵はお祭りの夜をテーマにして書いてもらいました。互酬が広がった幸せな経済圏を作りたいですね。

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早川:渡辺さんはなぜSEKAI HOTELへジョインしようと思ったんですか?

渡辺:ビジネスモデルや、組織の作り方がとても面白いなと感じました。また、社員の方たちの表情がとても良かったのも印象的です。表情って一朝一夕では出せないですし、言葉では伝えられないんですよね。自分自身もすごく表情が良くなりました。

早川:コミュニケーションを「ゲーム」と捉えた時に、世界の様々な社会においては、「ゲーム」のルールを取り違えて交換するのが一番タブーなんですよね。市場交換のところに関係をもってくるとか…
SEKAI HOTELが、大阪に観光する人を対象にするとき、上の意味での「ゲーム」を取り違いながらやってくるお客さんはあまりいないのですか?

矢野:どうしても受け取られ方にばらつきがありましたが、地域の方のアドバイスを真摯に受け止めて渡辺を始め、スタッフも頑張ってくれたのでだいぶ減りましたね。

当初は失敗とお叱りを散々受けながらやってきました。どちらにしてもお金が発生することなので、地域の方に対して友好関係を求めているゲストに対しても、地域の方からしたら私たちの生活が…とあまり良い顔をされなかったり。

しかしその一方で、地域の方からゲストに寄っていきお土産を交換する方がいたり、僕らの知らないところで初対面で互酬が生まれているいうこともありました。コロナの間も相当地域の方々に応援していただいたという感じですね。

SEKAI HOTELの戦術

早川:さっきのおもてなしではなくてfriendshipって話はまさにそんな感じですよね。おもてなしとして受け取ると、払った対価に対する正当な貰い物だ、というところで受け取ってしまうとこの形態のビジネスってガタガタとしていきそうな気がします。

その辺を慎重に避けていく、SEKAI HOTELさんの戦術的なところはあるんですか?

矢野:そうですね。僕らのやり方や思いに共感してくれたパートナーショップが各エリア約10店舗ずつあるのですが、そこでSEKAI PASSという宿泊していただいたゲストに発行しているカードを見せると、色々なサービスを受けることができます。

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例えば、喫茶店のモーニングが無料で食べられたり、銭湯に無料で入れたり…ということで”地域全体を巻き込みながら皆でまちごとホテルをつくろう”と通年を通して取り組んでいます。また、”一緒にイベントをしよう”と単発的に、お子さんのいるご家庭に対して、子ども向けの職業体験の旅行をやろうということで、子ども達が商店街で色んな職業を体験できる一泊二日のツアーを予定していたり。

ハロウィーンの時は、パートナーショップの方たちが仮装をして、子ども達にお菓子あげたり、わりと共同する機会がありますね。

また、住民説明会をやっていましたね。オープンする前とした後も四半期に一回くらいはしていますね。活動報告書をステークホルダーに送ったりしています。あとは僕のTwitterやnoteを見て共感してくれている人も結構いるという感じですかね。

渡辺:戦術ではないかもしれませんが、共感の大きさは広がりました。外部のメディアから取り上げられることで住民の方から「テレビに映ってたよ」とか「こんな新聞に載っていたよ」と嬉しそうに声をかけてくださる機会が増えました。外部の方からの共感も広がることで、住民の方の応援や共感も広がっていくのではないかなと思います。

第三章 自分の感覚が再編成されるような観光

チャット質問:どのようなメリットがありますか?

矢野
:地域外の人がお金を使いにきてくださったり、一緒にメディアに取り上げていただいたりもしています。私たちが中間となり、パートナーショップに取材に来てもらうとか…。先ほどの同心円状の中でステークホルダーとの付き合い方を明確に意識している方法があります。その一つとしてスタッフを採用する際、お互いが交渉する関係にならないということを大切にしています。

例えば「一緒に働きたいたい」という採用候補者に対し、「あなたどれだけ給料欲しいの?」「うちはこれだけ働いて欲しい」などという交渉する。

片方ではパートナーショップに対し「うちからお客さん送るのでこれだけしてください、こんなメリットありますよ」など、一理的な目的を交渉におくと網目状に広がる利害関係にしかならない。一つ破綻し始めると全部破綻するんですよ。

そのため、採用の時も必ず円の中心で掲げているもの、例えば会社だったら経営理念やビジョン、SEKAI HOTELだったらこの街をこんな風にしたいという話に対して、どれくらいリスクとれますかという話をします。

うちはこれだけリスクとるのでおたくはどれくらいリスクとれますか。お互いのメリットデメリットを話してしまうといいチームにならないと思っているので、そのような議論になると結構敏感になってしまいますね。

渡辺:お互いの力関係的なバランスをよく見ていますよね。

早川:互酬に関連する言葉で負債があります。負債は計量できるもので、たとえば「あの人に8万円の借りがある」というのは互酬ではなくて負債になるわけです。お店の人に対して、いつもお世話になっているからという思いをお互いを持っている状態、それを金銭的価値で計量してしまわないというところはそのままのほうが面白いと思います。

あと互酬でポイントとなるのは流通の回数ですよね。互酬における借りが大きくならないようにするためには即時に返すこと。お世話になった瞬間に返すとそこに関係は生まれてこないが、時間が経つ交換を繰り返していけばそこに関係が情勢されていくというのが互酬的な考え方です。

それでいうと、どれくらいの頻度でパートナーショップとコミュニケーションをとっているか気になりますね。実際にお金や物のやりとり、労務の提供など…。

SEKAI HOTELを通じて、観光のような大きい概念も、自分自身が変わっていけるような、自分自身の感覚が再編成されるような、そんな観光が実は足下にあるんだよということができかけているんだろうなと思いました。

渡辺:観光って、異文化に触れれば触れるだけ自分の幸せの幅が広がると思うんですよね。そういった場所を多くの人に伝えていきたいですね。

矢野:イメージとして定量化できるものをきっかけに、互酬性にうまいことシフトする、スイッチを入れるというイメージで考えています。今度、一泊あたり200円積み立てたお金の使い道を、泊まっていただいたゲストや、普段よく関わる地域の方に投票して決めてもらおうと思っています。そしてこの街のことを考えるきっかけとなるステークホルダーを増やしていこうと思っています。

この街で次「どんな面白いことをするか」ということをみなさんに問う場を作りたい。そうするとそれぞれのソーシャルな思いがお金の流れとして200円使われていくので、そのお金の流れが出来上がった時に地域通貨を考えると面白いかなと思っています。

チャット質問:世の中に広くインパクトを与えるための展望、イメージはありますが?そもそも互酬性のある関係を築くためにはある程度の規模感を超えると難しいのでしょうか?

矢野:フランチャイズとして富山県の高岡市にSEKAI HOTELがOPENするのですが、互酬の効いたコミュニティの作り方、ノウハウを全国に展開していくので、それによって今まで成しえなかった再現性高い地方創生モデル(互酬性モデル)を掲げていくイメージは実際に計画に走らせているので、それが今のところ頑張らないといけない仕事ですかね。

一人でも多くの方にSEKAI HOTELのあるまちを応援してもらう、一人の応援者になってもらう仕組みを作っていこうというのも目標ですね。

渡辺:外国人スタッフも増えてきて、この価値観が世界でも通用するというのも実感しますよね。

矢野:SEKAI HOTEL側のスタッフにはドイツ人がいて、親会社であるクジラ側にはフランス人がいます。

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ヨーロッパ出身の人ってすごく直球で、「SEKAI HOTELが世界に広がっていくと、世界は平和になりますよね!」と普通に言ってくれるんですよね。

”社会を良くしていこう”という価値観は世界共通なんだなと思い、賛同してくれてすごく嬉しかったですね。

早川:同心円状の話にもありましたが、人間は贈与する動物で最終的にどこに向かうかというと、「神への供犠」だとマルセル・モースは述べています。つまり自分たちを超えた何か大きい物に自分を差し出して与えるもの。

それってSEKAI HOTELのやろうとしているビジョン。それらに関わった人間が労務やお金、物などを贈与していく。そういう仕組みがつくられていくんだなと想像が膨らみました。

矢野:嬉しいですね。ありがとうございます。

渡辺:ではお時間になったのでこのあたりで一旦終了とさせていただきます。今回もたくさんの質問やコメントありがとうございました!

次回は皆さんが体験したまたは考える”互酬性”の事例も交えながらイベント出来たら楽しそうですね〜!

最後あらためまして、おふたりに大きな拍手をお願いいたします。
(拍手)

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