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【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・実教出版の比較編

今回比較するのは、山川出版社『詳説世界史:世界史探究』と、実教出版『世界史探究』の索引です。

実教出版の用語の選び方をみるため、山川にはないが実教の索引にはある用語のうち、気になるものをピックアップしていきます。

実教出版の特徴はウェブサイトによると以下の通り。

通史学習(知識の習得)とテーマ史学習(歴史的思考力の育成)を両立
新しい学びに対応した教科書

入試に対応した、詳細かつわかりやすい記述   難関大の論述問題にも十分対応できるよう、因果関係や背景をわかりやすく説明しています。近年の研究成果を意欲的に、わかりやすく盛り込みました。
入試で問われる「歴史的思考力」を育成   資料読解特集「ACTIVE」「〇世紀の世界」で、「歴史総合」で身に付けた資料読解の技能や思考力をさらに高めることができます。入試に問われやすいテーマも豊富に用意しました。
「新しい学び」をサポート   世界史の多面的・多角的な理解をサポートするさまざまなコラムや「問い」により、「知識・技能」の習得と「思考力・判断力・表現力」の育成が一体となった授業を展開できます。





愛国啓蒙運動

愛国派
 アメリカ独立戦争における愛国派(パトリオット) 

アウグスライヒアウスグライヒ(訂正:2024/03/19)

アタワルパ
 ローラン・ビネ『HHhH』に出てきますね。

 実教は ”周縁”とされる地域や、抑圧されてきた民族も、ていねいに索引で拾い上げる。



アブド=アッラフマーン3世
アボリジナル
アメリカニゼーション
 具体例としては「ハリウッド映画、ジャズやロックなどの音楽、コーラやジーンズなどの消費財や食文化」を挙げ、註では「こうした消費文化の需要は、コカコーラ化と植民地化の意味をかけて、コカ=コロニゼーション(Coca-Colonization)ともよばれた」とある(これ、検定通るんだ)。
 こういうカルチュラル・スタディーズっぽい用語をコラムに散りばめるのも、実教の特徴だ。


有田焼
アルダシール1世
アンデス文明圏

池田勇人
 日本史との関連。首相の名称を積極的に使用している。

一帯一路構想
遺伝子組み換え作物
遺伝の法則
岩倉使節団
岩倉具視
石見銀山
インフルエンザ
インペラトル
ヴィッテ
 「ウ」ィッテとはしない。実教はエジプトやモンゴル関連の用語も現地語主義は特に徹底しない。


ウーマン=リブ運動

 詳説では「女性の平等化とジェンダー」の見出しで、フェミニズムやジェンダーの歴史が2ページにわたり説明されている(p362-363)が、ウーマン=リブの言葉はなく「1960〜70年代以降、欧米諸国や日本などにおいて女性解放運動が高揚し、男尊女卑的な価値観からの転換を訴え、女性が完全な市民として認められてこなかったことを批判した。」とあり、並列する形で「女性差別を生み出す社会構造の変革をめざすフェミニズム理論も活発に論じられた」と記す(p362)。

 なお実教では索引に記載はないが、本文外のコラムに『女性の権利宣言』が詳述され、そのなかにやはり索引に記載はないが、著者のグージュが、彼女に対する当時の寓意画とともに紹介されている。これらについては詳説では記載はない。


蝦夷地

「オスマン人」
 本文ではカッコ付きとされている。オスマン帝国憲法に規定された法の下の平等のもと、理念的に創出しようとしたくくりだからだろう。


オスマン=ベイ(オスマン1世)

織田信長



海禁=朝貢体制
 明代の概念。「成立まもない明は、倭寇に対抗するためにきびしい海禁政策をとり、朝貢に応じない国や民間商人を貿易から締め出した。」と本文にある。また註には「沿岸地域の治安維持のために、人々が海に出ることを禁じる政策。そのため、海外交易だけでなく漁業や国内海運も禁じられた。」(p157)
 これも含め実教は海域アジア史が充実している。


外省人
 台湾関係。

灰陶

「外来の学問」
 詳説にはこの区分がないことはこちらに記した。

ガルシア=マルケス
カール=リープクネヒト
気候変動枠組条約
クイロン


グローバル=ヒストリー

 コラム「20世紀の思想と文化」のなかに、ブローデルについての言及につづき、「20世紀末からは、グローバル化のもとで、地球環境と人間の関係や世界的な人々のつながりを重視するグローバルヒストリーが注目を集めはじめた。」とある(p371)。


黄禍論
 本文にあるほか、Key Wordとしても取り上げられている。
広南王国
 実教は東南アジア史にかんする用語を、学問的に正確なものにしようとする方針が強い。
 「大越(ベトナム)北部を実質的に支配する鄭氏や、中部を支配する広南王国」(p170)
 「16世紀になると、北部では、鄭氏が黎朝の実権をにぎった。中部では阮氏が広南王国(1570〜1775)をたてて国際交易で繁栄し、フエに都城を建設するとともに、18世紀にはメコン下流部まで南進した。鄭氏も阮氏も、黎朝の名目的な支配権を認めていたが、やがて西山(タイソン)の反乱がおこると、両氏は黎朝とともに滅亡した。」(p183)
 「ベトナムでは、広南王国の阮氏一族の阮福映(位1802〜20)が、西山(タイソン)の反乱勢力を破って全土を支配し、1802年に阮(ルビ:げん(グエン))朝をたてた。」(p285)



胡漢融合帝国
 見出しで7行にわたって解説。
 「遊牧民の鮮卑の一派である拓跋部出身者が中心となって漢人貴族と協力し、胡漢勢力の融合した政権を築いた。そのもとで、遊牧民や漢人など多様な人々を統治する胡漢融合帝国が形成された。その典型が唐帝国である。」(p43)


「固有の学問」



産業革命(第3次)
産業革命(第4次)
ザンジバル
サンティアゴ=デ=コンポステラ
ジェロニモ
ジーメンス
シャヴィエル
ジャズ
シャーマン反トラスト法
私掠船
新生活運動
生活革命
曹操
 詳説では消去された劉備・曹操・孫権は実教では生きている。欄外のコラムでは「二つの三国志」として、『三国志演義』と正史『三国志』の関係性について述べている。
ソリドゥス金貨



大交易時代
 第2部の世界史への扉で詳述されている。
 「ヨーロッパ人の大航海は15~17世紀の重要な要素だが、「大航海時代」という用語ではこの時代の世界史全体をとらえきれない。アジアの諸帝国の隆盛、海域アジアの交易の繁栄、日本とアメリカ大陸の銀の大量流通などを含めた、世界規模の交易の発展こそが、この時代の特徴である。」(p109)。
大秦景教流行中国碑
ダイムラー
田中義一
ダホメ王国
対馬
デヴシルメ制度
銅活字
東條英機
徳川家康
徳川慶喜
ドーラーヴィーラ
 インダス文明で近年注目されている遺跡。
 詳説の地図では「ロータル」の記載はあるが「ドーラーヴィーラ(ー)」の記載はない(p29)。実教の地図にはロータルの記載もある。実教には「穀物倉庫などの公共施設」、山川には「穀物倉なども備えた」とあるが、実教では「壮大な宮殿や王墓がないことから、強力な王権はうまれなかったと考えられている」と明記がある。詳説では「都市遺跡」とあるのみで、遺跡の性格に関する記載はない。




人間の安全保障

『人間不平等起源論』
ネブカドネザル2世
ノミスマ




濱口雄幸
原敬
阪神・淡路大震災
ビアフラ戦争
東アジア地域包括経済連携(RCEP)
東日本大震災
フアレス
ブクサールの戦い
 「1764年、ブクサールの戦いでムガル皇帝・ベンガル太守などの連合軍に圧勝し」とある(p281)。また、インド支配権の確立はプラッシーの戦いが契機とある(p211)。

武臣政権
 これは高麗において「不満を募らせた武官たちが、12世紀にクーデタによって」たてた政権を指すが、これに鎌倉幕府をふくめ、同時期の東アジアの共通性を、この用語によって包括しようとするする見方もある(実教では指摘はない)。
 
ブルガリア王国
ブルガリア自治王国
 詳説は「ブルガリア」のみだが実況は2項目に分ける。ブルガリアを丁寧に扱うというと、土井正興のこれが思い起こされる(5ページ下段)。

『歴史地理教育』275巻、土井論文




プレスビテリアン
ブローデル
プロンビエールの密約
北方十字軍




源頼朝
民主進歩党(民進党)
モスレム人


楊貴妃



連合マレー諸州
 詳説では「マレー連合州(Federated Malay States)」(p250)。
 東南アジア研究者の桃木至朗の指摘するように、「連合マレー諸州」としたほうが、実態がつかみやすく正確である。
 実教では海峡植民地(ペナン、マラッカ、シンガポール)からさらに支配をのばし「マレー半島南部のマラヤと北ボルネオを領有」(p285本文)。このうち南部のマラヤ(英領マラヤ)の「9保護国のうち4国は、1895年に連合マレー諸州とされた」と註にある。
 ただ、この本文と註からでは、地図にある「イギリス領マラヤ(1874〜1909)」との関係性はつかみにくい(というか、つかめないのではないか)。

 なお、山川の地図は「マレー連合州」の境界が地図に書き込まれているが、


実教には境界は書き込まれていない。




若槻禮次郎



略字



COVID-19
MERCOSUR
RCEP

 

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