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おおきな木 を読んで

はろー、関仁 です。

昨夜、資源物の収集日に向けて、部屋の整理をしていたときに、一冊の絵本が出て来ました。
タイトルは知ってるけど、まともに読んだことあったかな?と思ったので、手放すモノの中から抜き取っておきました。

それを今、読み終えたところです。

「おおきな木」
シェル・シルヴァスタイン作、村上春樹訳

じーん、と来ました。
最後は少し頬が上がりました。
何人もの人が言ったと思います。
「すごく良い作品。」
そう思うと共に、頻繁に読まなくても本棚に飾って置きたい絵本だと感じました。

前半の木と幼い頃の少年との触れ合いが、とても丁寧に描かれていて、ほのぼのしました。
絵本ならではの少ない文章とページの余白。モノクロの絵。
それが1ページ1ページめくるごとに、彼らの幸せな時間が永遠にも感じられるくらい長く続いたんだろうなと思わせてくれる。
そんな描写に絵本の半分近くのページを割いてくれてるから、よりこの後の展開が重みを増して行く。

「ぼくと木」と刻まれれたハートマークの上部に、「ぼくとあのこ」と書かれたハートマークが新たに刻まれて、成長する少年にとって木への優先順位が変わって行き、少年の訪問は何十年に一度の頻度になって行く。
その間、少年の人生のステージによって欲しいものが変わり、久々に少年に会って嬉しい木は自身が持てるモノを都度、与えていく。最後には切り株になってしまうまでに。
この何回かのやり取りは、木と少年の会話劇でもあるので1ページ中の文字の量も格段に増え、余白も少なくなります。
それが、幼い頃には側に居てくれるだけでも良かった存在に、大人になり知恵や思考が付いたことでメリットを求めるようになってしまった少年と木の関係性を感じます。
それでも、そんな少年のライフステージごとに異なるモノを与えた後、木は幸せを感じる。。。

そんな木が自分のように思えて。
でも、木に甘え続けて人生の舵取りに失敗する少年も自分のように思えて。
(各年齢の少年の欲しいモノや描かれた姿を見て、満足のいく今を歩んで無いのではないか? と思えて来る。また、こんなに優しい木に要求だけしている人間は、日常でも欲求や絶望を他者や世界に押し付けてるだろうとも思えて来て、きっと人生、上手く行ってないだろうなと勝手に思っているのです。)

そんな気分でラストのページを迎えました。

歳を重ね、ほとんど求めるモノが無くなった少年は、木に対して特別なモノは求めなかった。
少年にとっての木は、幼い頃のようにただそこに居てくれるだけで良い存在へと変わった。

その時の木の感情がとってもシンプルに表現され、それ故のページの余白に、また永遠にも似た長い時間を感じてしまいました。
私の心は、それまでの複雑な気持ちと、でもそれに重ね塗りをするような暖色の気持ちが、広がっていました。
それこそ、ページの余白いっぱいに。

折角の良い物語なので、全部は書かないようにしましたが、心を締め付けられるシーンや憤りを感じたシーンなどもあり、本当はもっと書きたいです。←

それくらい、言葉や感情が前面に思わず出て来る作品でした。
絵本に詳しくは無いですが、友人のお子さんに何かプレゼントをする機会があったら、この本を用意したいな。と思います。


2022/5/10
せきひと

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