見出し画像

「中教研(英語)」振り返り

一昨年から授業者として参加させていただく機会をいただいた、英語科中教研の記録を書こうと思います。一昨年は市大会、昨年は県大会でした。
昨年度3学年で実践した授業研究を踏まえ、今年度1学年で実践したことについて簡潔にまとめていきます。





1.授業研究の趣旨と概要

①言語活動の目的・場面・状況を適切かつ明確に設定することで、英語を使う必然性を理解し、主体的に学習に取り組む態度を醸成すること

日々の英語の授業において、生徒が興味関心をもち、その言語の必要感を感じられるよう、学ばせる言語表現を実際に使用する目的や場面、状況を工夫して設定してきました。

今回の授業では、『NEW HORIZON English Course 1』の Let’s Talk 1【お願い(依頼する、許可を求める)】の単元を、JTEとALTのティームティーチングで実践しました。
ALTの「クラスの生徒とより親交を深めたい」という気持ちを知ったクラスの生徒がALTをクラスのお楽しみ会に誘うという場面設定でした。授業の導入時にJTEとALTで会話のデモンストレーションを行い、そこから本時の課題を把握させるという流れを作ってみました。

授業の場面・目標設定はより親しみやすいものに


②ペア活動やグループ活動をとおして生徒同士で活動させ、主体的に学習に取り組ませることで、自らの「気づき」を見出し、学びの自己調整を図ること

普段の授業から、意欲的に自分の意見や考えを発言し、ペアやグループによるコミュニケーション活動において協力的な生徒が多く見られました。その一方で、学力のばらつきも当然ありました。

このような実態を踏まえ、普段からペア学習はもとより、グループ学習を取り入れることが多くありました。グループ学習の際は、各班にミニティーチャーを配置し、話し合い活動の際に意見をまとめ、班員の発言権を平等にもたせるよう指示し、班員に助言するなど、多くの役割を担わせていました。
そうすることで、英語が苦手な生徒でもクラスメイトに気軽に質問する様子が見受けられるため、本時の授業でもグループ活動を取り入れることにしました(当然グループ活動のデメリットや留意点もありますが)。


③生徒自身に誤りと課題に気づかせ、情報や考えなどを形成・再構築させるために、中間指導では言語面と内容面から指導し、予め生徒のつまずきを想定し、生徒の実際の活動を見取ったうえでフィードバックすること

授業の「課題の追求」では”Brush-up Time”という時間を設定しました。言語活動の時間を確保するうえで、言語活動➀→中間指導・自己調整→言語活動②という流れを作ります。この学習過程の「中間指導・自己調整」の時間を”Brush-up Time”としました。このBrush-up Timeの時間こそ、言語活動をより充実させるための大切なファクターでした。

Brush-up Timeでは、生徒が練習中に苦労していた点に焦点をあて、全体指導を行いました。また、生徒たちの課題を全員で共有し、自己の学びを調整し、改善を促す時間を設けました。

言語活動を設定する際に心に留めておきたいことは、1回目の言語活動で生徒が言いたいことをうまく表現できなくて当然であり、まずは挑戦させ、その後の中間指導を充実させることが最も重要であることです。

中間指導では、生徒がつまずくと考えられるポイントを想定しておき、生徒が実際に話している内容やエラーの状況を教師がモニタリングして把握した点についてフィードバックするよう心がけました。また、中間指導では、”Loud and clear voice” “Smile” “Gesture” などの表面的な指摘ではなく、生徒がどう表現するのかという言語面、生徒が何のために何を表現するのかという内容面の両面からの指導を行うことに留意しました。



2.授業研究の実際

①今回の場面設定により、生徒が使用するターゲットセンテンスのバリエーションは限定的になってしまいますが、最終的には生徒の既習事項と必要最低限の足掛かりを使って、生徒自身が自ら使う言語表現を選択して表現を使うことができたと感じました。生徒自身が「依頼する・許可を求める」場面で有効だと思う表現を試行錯誤し、主体的に考える様子が見られた(充分ではありませんが…)とは思います。

②グループごとに、まず1回目の言語活動を行い、そこで「伝えたいことをうまく伝えられない」という英語でのコミュニケ―ションの困難さを体感させることを意識しました。
1回目の言語活動の後、グループで課題を話し合わせたうえで全体で共有し、教師からの中間指導を行いました。それを踏まえ、2回目の言語活動に向けて、再びグループでコミュニケーションのとり方や使う言語表現について熱心に話し合う様子が見られました。2回目の言語活動の前にブラッシュアップの時間を設定したことで、生徒自身で課題に気づき、学びの自己調整を図ることができていたのではないかと思います。

③中間指導の課題共有の場面で、生徒から「ALTの先生をクラスのお楽しみ会に誘う時、日時や場所、会の内容をどう表現すべきか分からなかった」との意見が出ました。その際、JTEとALTで、生徒とインタラクションをしながら板書して指導助言をしました。生徒のつまずきを、実際の生の声を拾ってアドバイスすることも大切だと感じました。その後の言語活動2回目では、初めは自信なく話していた生徒が、生き生きと自信をもって言語活動に取り組む姿が見られて良かったです。



3.授業研究の成果と課題

※以下、○=成果、△=課題です。

○授業の導入で、言語活動の目的・場面・状況を、身近かつ生徒の興味を惹きつける内容に設定し、実際にALTがお楽しみ会を心から楽しめるようなお楽しみ会に誘うにはどうすればよいか、真剣に話し合っていた生徒が見られました。
今回の場面設定により、英語を使う必然性を理解し、主体的に学習に取り組む態度を醸成できたのではないかと思います。

○言語活動の1回目では、単語だけで何とか表現していたグループがほとんどでした。しかし、中間指導を通して、会話のイメージを生徒に掴ませ、再構築する場面を設定したことで、2回目の言語活動の表現力の向上につながったと感じました。授業を通して、子どもたちの変容が見られました。

○授業の最後に、ICTツール「ミライシード」を利用し、授業の振り返りを行いました。提出された振り返りの中には、「班の人と協力してどう誘うかを考えることができた」「お楽しみ会をする場所やお楽しみ会の内容について相手に尋ねる表現を知ることができた」「実際にお楽しみ会に誘うことができた」という記述が見られました。中間指導を充実させたことで、授業前後の変容を生徒自身が感じている結果だと感じました。

ICTツール「ミライシード」を使用した振り返り


△今回の授業では「思考・判断・表現」を評価する想定だったが、実際には「思考・判断・表現」の場面がなく、「知識・技能」の評価の授業になってしまったとのご指摘がありました。
時間配分の関係で、マインドマップ作成で思考させる時間を前時に行っていました。本時の授業で、生徒が自ら話し合って考え、どのようにALTをお楽しみ会に誘うかを考えさせる場面を設定する必要がありました。
今後は、評価する項目に応じた指導内容を設定するようにしていきたいです。

△授業の導入で生徒に目的・状況・場面を提示した後、ターゲットセンテンスに関連する言語材料について提示したことで、教師側が子どもたちの言語材料の選択肢を限定してしまっているとのご指摘がありました。
今後は、使用する言語材料を生徒に選択させ、英語に苦手意識がある子どもたちに対するフォーマットを用意する必要性があると痛感しました。また、教師による「表現の教えすぎ」にもより留意しなければならないと感じました。

△言語活動前に評価基準を提示しましたが、生徒が理解しにくいものであったため、目指すべきゴールを想像しにくかったようでした。
今後は、評価基準の文言を生徒が理解し、改善に活用しやすいものを用意していく必要があります。また、「~文以上話せる」など、評価基準に具体的な数値を入れるなど工夫していきたいと思いました。

生徒に提示したルーブリック
授業冒頭に示したターゲットセンテンス



4.研究協議でのフィードバック

以下、授業後の研究協議でいただいた指導助言です。

<授業で良かった点>
●英語を話しやすい雰囲気づくりができていた。
●生徒が話したくなる課題設定(目的・場面・状況)が工夫されていた。
●授業内の子どもの変容(ボランティアで発表した男子、冒頭と終盤の姿の違い)が見られた。
●グループ内での子どもたちのやり取りから、生徒同士の練り上げが行われていた。
(あるグループの対話)
 A::Do you like sports?でいいの?
 B:What sport do you like?で聞けばいいんじゃない?
 C:でも、バレーやるって決まってるから、Do you like volleyball?でいい  
  じゃん。
 D:好きかどうかわからないじゃん。

<今後の課題>
●課題設定と評価について
 ⇒本時の中で生徒が思考・判断・表現する場面がなく、「知識・技能」の授業展開だった。
●言語材料について
 ⇒生徒に選択させることが大切。「教師のSOS(喋りたがる、教えたがる、しきりたがる)」に気を付ける。苦手な子に対するフォーマットはあってもよい。
●「言葉は使いながら学ぶ(教えた≠学んだ)」
 ⇒「導管メタファー」に気を付ける。「この前教えたでしょ!」はNG。
 ⇒「U字型発達曲線」を意識する。以下の➂を目指して、くり返し取り組ませることが大切。

①習った表現のかたまりとしての使用(真似等)…正確さ(高)
②創造的な言語使用…正確さ(低)
③柔軟な言語使用…正確さ(高)

●評価基準を生徒と共有する
 ⇒文言は生徒が理解し、改善に活用しやすいものにする。数値的な目標を活用するのもよい。
 ⇒自律的学習者の育成につなげる。


<言語活動を通した指導の在り方>
①言語活動1回目
 ⇒まずは生徒を信じてやらせてみること。教師のモニタリングにより、生徒の話している内容、エラーの状況などを把握し、中間指導につなげる。
②中間指導
 ⇒内容面(何のために、何を表現するのか)と言語面(どう表現するのか)の両面から指導助言をする。
③言語活動2回目
④振り返り
 ⇒言語面と内容面から振り返らせる。



5.中教研を振り返る

これまで約2年間の主題研究と本時の授業を通じて、中間指導のあり方や評価の難しさについて多くを学びました。

昨年の授業発表から、内容に偏った中間指導だったことや、生徒が使う表現が限定的であったことから、改善すべき点が浮き彫りになりました。

言語活動では、まず生徒を信頼して取り組ませ、生徒が困難を抱えることを前提として行い、その後の中間指導を充実させることが重要であることを痛感しました。中間指導では、言語と内容の両面からのフィードバックを与え、生徒が実際に困難を抱えた点について助言することが重要であることを再確認しました。また、評価に関しては、生徒に思考と判断をさせる機会が大切であるとの認識が深まりました。

今後の授業では、生徒の目指すゴールから逆算し、そのための指導内容や手順を関連させながら、1時間ごとの授業を構想していきたいと思います。また、生徒に理解しやすい評価基準を提示することを心掛け、生徒の自律的な学習者としての成長を促進したいと考えています。

今回の授業研究にあたっては、同僚の先生やALT、英語部会など、多くの先生方とともにチーム体制で行うことができました。今回の経験が英語教員として自分が成長する機会をいただけたと思っています。

今後も授業の質を高め、生徒たちの成長をサポートするための自己研鑽を惜しまず、英語教育の向上に貢献していけたらと思います。


以上、

冒頭で簡潔にまとめると言っておきながら、全く簡潔にまとまらなかった振り返りでした(笑)

この記事が参加している募集

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?