春は曙 川は刹那

川面に散るそれはまだ柔らかで痛みのないうつくしい花びら  

波も立たない静けさに満ちた水面  

一葩一葩、ひとときのためらいもなく花びらは落ちていく  

重なり合い膨らんだ塊を追いかける子ども  

石を投げてみたり、小枝でかき回してみたり  

ほんのちょっとのいたずらにも乱れることなく  

ふたたび花びらはゆるやかな流れに巻き込まれていく  

ゆらゆらと互いに重なりあい 連なって  

川の流れはいつもよりゆっくりした速さで動き  

花の塊はその淡さを一層深めていった  

まるでどこかに引き寄せられるように  

一つの塊が視界の先に消えていけば  

また新しい花たちが押し寄せる  

しばらくそこにいて  

眺める者はうつむいたまま  

乱れることのないその光景がくゆり流されていくのを  

ただ静かに見ていた  


清らかな風雅の流れがそこにあった。

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