見出し画像

空がまだ地上を歩いていたとき


2023.5.4 木

漢方薬局へ漢方相談に。先生が鎌倉山の菜園で育てた茎の太い立派なスペアミントで淹れたフレッシュミントティーをだしてくださった。とてもきれいな黄金色。そしてまだたくさんあるからと、テーブルに置いてあったスペアミントをどっさり花束にしてくださった。帰り道、葉の束になんども顔をうずめては、すばらしい香りを肺いっぱいに吸い込みながら、森のなかを帰った。そういえば森の入り口にさしかかったとき、すぐ上でヘリコプターがずっと旋回していた。景色のなにもかもが、きらきらしていて、うつくしい日だった。


2023.5.5 金

今日から6時半起きにしてみようと思う。夜23時には寝れば、大丈夫そう。朝、海まで散歩。砂浜に素足と両手を突っ込んでぼーっとした。まだ若い朝の、太陽の熱と砂の奥のひんやりした冷たさのどちらともを同時に感じて、きもちがよかった。朝ごはんに、長らく食べていなかった目玉焼きを作った。炊きたてごはんの上にそっとのせた。黄身のオレンジ色は、なだらかな山肌を裾へむかってとくとくと流れる小川のように、しずかに米粒にまじっていった。久しぶりに食べると、卵のもつつよいエネルギーをがつんと感じる。食後、久しぶりにインド映画の音楽を聴いて踊る。うっすら汗をかく。仕事。夜、桃の旬に行った山梨で買ってきたよもぎ、ウコン、しそ、ミントをミックスしたものを煮出し汁を入れたお湯に浸かる。


2023.5.7 日

雨。午前は書きもの、午後は仕事のいつもの日。昨日つたやで偶然手にとった真木悠介『うつくしい道をしずかに歩く』がすごくいい本。曜日の曜は、かがやくという意味だそう。月がかがやく日、火かかがやく日、水がかがやく日。木かかがやく日、金がかがやく日、土がかがやく日、日がかがやく日。ふと自分の生まれた日は何曜日だったかなとしらべてみると、土がかがやく日。


2023.5.8. 月

家をでると雨がやんだ。昨年三島で会ったSさんに会いに伊豆高原の自然食カフェnodocaへ。Sさんみたいな人が地元にいるんだなあと思うと、地元がちょっといいところに思えてくる。Sさんが気になっていた近くの機織り工房アトリエkaiへ行くと、てっきりおばあちゃんが出てくるかと思いきや、同い年の女性だったのでびっくり。食事も忘れて、朝から夕方までえんえん織りつづけているそう。鶴みたいに身を削ってる。それが、すごく伝わる。三十代、力の加減と、世界との向き合いかたを学ぶ時期なのかなあ、と、じぶんを重ねながら、思う。同時代の、一生懸命生きている人に会うと、なんだか励まされる。またSさんのように、すこし上の、先を行く人がそばにいてくれるのは、なんだかほっとする。機織りの世界は面白くて、あれもこれも、色々聞いてしまった。織物に織り込まれているのは、時間だ。そう思った。前から行ってみたかった半島PRESSのお店へ。素敵な紙の商品が並んでる。ポストカードとヴィーガンクッキーを買う。車にのると、また雨が降り出す。夕飯は実家で野菜寿司とちらし寿司をいただく。みんなで盛り付けする。華やかになった。


2023.5.9 火

朝起きたら、体が右に傾いてしまってうまく歩けない。頭がふらふら重い。たまにこうなる。すごくへんな感じ。三島にあるpamという特殊製紙工場のギャラリーが面白そうと思い立って行ってみると、三島でなんどかお会いしているTさんが偶然打ち合わせに来ていた。展示はとてもおもしろかった。紙だけでも、何百種類とある。一万年保存できる紙とか。三島にくるたびに寄っている地産品のお店で、無農薬野菜をいくつか買う。絹さやとかスナップエンドウ、かぶ、ネギ。近くでとれたもので、どれも安い。クロケットで山森さんとまったりおしゃべり。山森さんは、明るくて、話していると元気をもらえる人。16時から打ち合わせ。相変わらずあたまがふらふらなので、もうすこし三島でゆっくりしていたかったが、明るいうちに箱根を超えて帰路につく。

里紙好きだった


2023.5.10 水

庭の柿の花が落ち、青い小さい実が顔をだした。地面に目を向けると、花韮がいなくなって、こんどはどくだみが一面を覆っている。白い花がぽつぽつ咲いてるが、大半はつぼみ。散歩道には、へびいちごかたくさん。小さいころに、よく集めた。びわのまだ青いのを、たわわにならせている家もある。まだすこしあたまが痛い。さいきん疲れていたのかもしれない。ゆっくり、ゆっくり、ちょっとびっくりなくらいゆっくり、いこう。たまたま美輪明宏さんのことが気になって、スマホでしらべながら鍼灸院へ行ったら(今日も江ノ電がすごく混んでいた)、いつもベッドの上に着替えが置いてあって、いつもはピンクか水色の施術服に着替えるのが、今日置いてあったのは、まさに美輪さんの髪の毛とおなじあざやかな黄色で、おもわずくすっと笑いが

お昼は焼き味噌むすび


2023.5.11 木

何度目かのDIC川村美術館へ。芝生の原っぱにミロコマチコさんのシートを広げて、三島で買ったとろろ昆布と海苔を混ぜたおむすびを食べた。企画展は「芸術家たちの南仏」。マン・レイの実験的白黒映像作品がおもしろかった。詩的な文章が、映像のあいだにはさんである。文学と映像の中間みたいなかたち。シマシマの格好をした人たちがプールでたわむれたり、庭でポーズしたりしている映像に、空が神々に混じってまだ地上を歩いていたとき、みたいなことを言っていて、それはなんでだかわかるような気がした。あと、白黒ってやっぱりいいな。すごくいい。もし自分があの時代にあのあたりにいたら、パリより南仏が好きだったろうか。都会と田舎。ピカソの作った器がいくつか並んでいて、どれも生き生きしていた。器のしずけさも好きだが、生き生きした器というのもあるんだ。佐倉駅までのバスは、元気の有り余ったおじいちゃんおばあちゃんで満席。ずっと死や墓の話をしてた。佐倉駅近くにヴィーガン弁当のお店を見つける。心を込めて丁寧に作っているのが伝わって、おもわずあれもこれも、頼んでしまう。電源カフェを探すとスタバしかなかったので、行く。仕事をだーっと、片づける。夕方、雨あがり、曇り空にちいさく一部穴があいていて、そこからまっすぐ、光が地面に降り注いでいた。車での帰り道、平たい田園地帯に巨大な夕陽が沈んでいった。








この記事が参加している募集

習慣にしていること

お読みいただきありがとうございました。 日記やエッセイの内容をまとめて書籍化する予定です。 サポートいただいた金額はそのための費用にさせていただきます。