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<日本灯台紀行 旅日誌>2021年度版

 <日本灯台紀行 旅日誌>紀伊半島編

#6 四日目(2) 2021年3月23(火)

寄り道 潮岬タワー1 灯台参観

紀伊半島旅、四日目は、樫野埼灯台の撮影を午前中に終えて、ちょっと寄り道をしてから、灯台の根元、潮岬タワーなど、潮岬灯台の撮影ポイントを回った。

<11時30(分) 岬をおりる。串本大橋のたもとに駐車スペースとトイレがある 海のなかに(も)灯台が二つある。遠目から撮る。昼どき、昼食を食べにきた若い男二人 ネコが何匹も どこからともなく出てきて 鳴いている エサをねだっているようだ ほかにも熟年夫婦 漁師など あっというまに狭い駐車場がいっぱいになる>。

この情景は比較的よく覚えている。付け加えよう。串本大橋のたもとの駐車スペースは、先ほど<樫野埼灯台>へ行くとき、車の中から見えたので、帰りに寄ってみようと思っていた。車は五、六台しか止められないが、トイレがあり、東屋らしきものもあった。

・・・日陰の急な坂道を下りきったところに駐車場があった。まさに橋のたもとだ。この時は、ほかに車は止まっていなかった、と思う。軽い方のカメラを肩にかけ、まずはトイレで用を足した。そのあと、ちょっと周りを見まわし、すぐに見晴らしのよさそうな東屋へ行った。

はるか沖合の海が、眼に痛いほどキラキラしていた。岩礁(鵜島)には、小さな灯台が立っていた。むろん、遠目過ぎてよくは見えない。眼下、右側にも灯台があった。串本大橋の下から突き出ている岩場(苗我島)の上に立っているもので、ま、これは肉眼でも見える。今調べると、前者は<鵜島灯台>、後者は<苗我島灯台>といって、ちゃんとした名前がある。間違っても<名もなき灯台>などと口走ってはいけない。

眼下の灯台はいいとしても、沖合の灯台は、やはり望遠カメラで撮る必要がある。というか、ちょっと撮ってみたくなった。逆光の中、灯台の横を漁船が通りぬけていく。白くて長い波筋が海面に描かれる。開放的で、明るくて、どことなく長閑な、自分にはほとんど縁のない海景だ。それに、岩礁に立つ灯台の形を、この目ではっきり見たかった。

で、車に戻って、望遠カメラを持ち出し、東屋の断崖沿いの柵際で、盛んに撮っていた。しばらくすると、うしろで何やら話し声が聞こえた。ちょっと振り返ると、若い男が二人、東屋のベンチに腰かけて、弁当を食べ始めた。たしか、駐車場の方には、清掃車のような車が止まっていた。邪魔だとばかり、すぐに引き上げるのも、バツが悪いので、柵際を少し右に移動して、眼下の灯台を、ちょうど、彼らにはお尻を向けて撮っていた。

じきに、集中力も切れた。撮影モードが解けて、少し周りのことが見えてきた。<猫が何匹もどこからともなく出てきて 鳴いている (弁当を食べている男たちに)エサをねだっているようだ>。一人の男が、無造作に、箸につまんだおかずを猫の方へ放り投げている。猫たちが、ぱっと、エサに飛びつく。ふ~ん、猫たちはここでエサがもらえると思って、集まって来たわけか。黒シャツのたくましい男は、猫が好きなのかもしれない。

ただ、ちょっと、割り切れないものが残った。野良猫たちに、気の向いた時に、弁当のお裾分けをするのは、さほど咎めるべきことでもない。猫たちも、欲しがっているのだからね。だが、このあと、猫たちは、どうやって生きていくのだろう。野良猫の生き死にまで頓着していられない。けれども、猫好きな自分は、ついそんなことまで考えてしまう。いや、ちらっと思っただけだ。

引き上げよう。車に戻ろうとしたら、駐車場が、なんだか急に騒がしくなっている。熟年の夫婦づれが車から降りてきて、大きな声で会話している。都会風の、多少あか抜けた格好をしている。車も、大衆車ではなかったと思う。 かと思えば、軽トラが入ってきて、小柄な爺の漁師が荷台を整理している。狭い駐車場だから、もういっぱいだよ。

そくそくと駐車場を出た。橋を渡り、潮岬へ向かった。途中、鄙びた漁港の脇を通り過ぎた。岩礁の上に立つ灯台がふと目に入った。これは、あきらかに、さっきの展望スペース(くしもと大橋ポケットパーク)から見た、海の中の灯台だ。あれ~と思いながら、適当なところに車を止め、見に行った。

見る位置取りが90度ちがう。展望スペースから見た位置を基準にすれば、三時の方向だ、つまり、真横から見ているから、同じ灯台だとは思えなかった。それに、すぐ目の前にある。写真としては、入り組んだ岩礁の奥にあり、手前には防波堤や漁船などがある。ちゃんとは見えない。ロケーションが非常に悪い。ま、いいだろう。ムラサキダイコンの花が崩れた岸壁に咲いていた。画面の一番下に入れて、彩を添えた。記念写真だ。

<橋を渡り 潮岬に向かう 潮岬タワー(¥300)にのぼる 強風 しかも寒い 撮影にならず すぐにおりる 受付の若い女性の応対がつっけんどんだ>。付け加えよう。串本大橋から潮岬までは、ほんの十分ほどだったと思う。灯台前の駐車場をやり過ごして、左カーブすると、道路左側に、かなり巨大な<潮岬タワー>が見える。道路際が、広い駐車場になっていて、けっこう車が止まっている。雰囲気的には、昭和の観光地といった感じだが、このタワーは、潮岬灯台を、見下ろせる唯一の場所だろう。

いちおう、望遠カメラと三脚をもって、エレベーターで展望室まで上がった。円形の展望室はガラス張りだった。だが、やはり、ベランダに出ないことには、写真は撮れない。しかしながら、ドアが外側に開かないほどの強風だ。それでも、むろん出たが、今度は風が冷たくて寒い。肝心の、潮岬灯台はと言えば、手前に建物などがあって、構図的には、やや期待外れだった。ただ、天気はよかった。見渡す限りの海。素晴らしい海景であることに間違いはない。

まあ~、こんな状態では、ゆっくり写真も撮れないので、下見程度で、引き上げることにした。まだ、明日一日ある。そうそう<受付の若い女性の応対がつっけんどんだ>というのは、たしか、再入場できるかと聞いた時、やや納得のいきかねる説明をされて断られたからだろう。今となっては、その時の具体的なやり取りは思い出せない。肉付きのいい、世慣れた感じの、男好きするようなタイプの女性だったような気がする。

さてと、タワーの駐車場の端にあったトイレで用を足し、灯台前の駐車場に移動した。<潮岬灯台 駐車場着 ¥300払って 再入場できるか じいさんに聞く 大丈夫だという 歩いて灯台へ向かう 観光客がひっきりなし (ここでも)¥300とられる ただし ここも 敷地がせまく 引きがとれない 写真にならない>。

潮岬灯台は<登れる灯台>ではあるが、この時も、自分は登らなかった。灯台に登らない理由は、以前にも書いた。灯台に登ってしまえば、灯台は撮れないのだ。屁理屈だよな~。いま思うと、灯台に登らないで、狭い敷地の中をちょっと回っただけで、¥300は高かった。むろん、灯台に登らないのは、こっちの都合だが。

それと屁理屈ついでに、この際言ってしまおう。そもそも、灯台の入場料を<参観寄付金>というのが解せない。理由はいろいろあるらしいが、イマイチすっきりしない。<寄付金>なら、果たして、払わなくてもいいのだろうか?良くも悪くも、日本人特有の<曖昧>さだ。何事にも白黒をはっきりさせないのは、世界的に見れば、それも一つの見識なのだろう。たが、それにしても<参観寄付金>というのがひっかかる。

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