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今年の読書の記録 パート2

パート1に引き続き、今年読んだ本のザックリした感想やそれぞれの本を選ぶに至った経緯についてです。

こんなラインナップを読んでいる人間もいるのかと気軽に覗いてみてください。ちなみにパート1はこちら。


私のことだま漂流記 山田詠美

パート1で紹介した「くもをさがす」を読んで以来、自叙伝に心惹かれ始めていた折に出会った作品。
文学界の重鎮である山田詠美さんの名前も知らなかったけれど、帯を読んで「良さそうかも!?」と自分のアンテナにピンと来た。

私は、この自伝めいた話を書き進めながら、自分の「根」と「葉」にさまざまな影響を及ぼした言霊の正体を探っていこうと思う。

本文からの抜粋が帯に載っていた

この帯の文章だけでも自分の内側のセンサーが反応してビリビリと痺れるくらい、適格というかナイスなワードセンスに唸りまくった。

この作品はnoteの街に住み始めてすこし経った頃に読み始めた。
文章を書くことの難しさを痛感している真っ只中。それもあってどこか書く側の視点も織り交ぜて読んでいたように思う。

どの章を読んでも著者の感性や表現力に痺れ、感嘆のため息が漏れて、感情が揺さぶられて、気がつくと涙がつーっと頬を伝っていることが何度もあった。

生い立ちから、人生で経験してきた酸いも甘いも、そして文章を書くプロになるまでと小説家になってからの心のうちを惜しみなく見せてもらえた。そんな風に感じて感服した。
文章を書くこと、言葉、言霊に対する認識が自分の中で大きく変わるきっかけになったように思う。

心の動きを言葉で表わせるようになると、世界は劇的に変わる。

本文より

本当にその通りその通りです!!と首肯し、私にとって心に残るメッセージとして受け取った一文。

noteを始めて、つたないながらも人に公開する文章を書くようになってからというもの、今までと変わらない日常の捉え方が少しずつ変わってきた。そう実感することが増えている。

自分の頭の中、心の中だけでぼわーっと感覚的に思っていたことを言葉にすることで、考えや気持ちが明らかになり客観的な視点を手に入れられる。
自分が実際、何をどう考えているのかを知ることができて自己理解の手助けにもなっている。

今まで自分の心が動いたときに、「なんとなく」という枕詞をつけて、「なんとなく~だと思う」に頼りすぎ、自分の感情をぞんざいにすることが多かった。ニュアンスだけで済ませて納得してしまう癖がついていた。

だけど、その「なんとなく」を具体的に言葉にすることで自分自身の感情の彩りもグっと増すし、以前に比べたら物事の見方も多角的になっている。
気がつけば、自分にとってプラスになることばかり起きているな。

この作品を読んだことで文章を書くことや私自身の価値観に、ものすごく刺激になったことは間違いない。
自分の直感信じて選んだ本が、導かれたか?!と思うほど今の自分にマッチしていた。直感て当てになるじゃん!と自己肯定感まで上がった気がしている。

センス・オブ・ワンダー レイチェル・カーソン



私は自然が大好きで旅先でビジターセンターに寄ることもしばしば。そのたびに、書籍コーナーで著者の名前をよく見かけていた。生物学者である著者の存在も代表作である「沈黙の春」も自分の興味関心の分野にあったはずだった。気になっていた。だけど、なぜか読むことを後回しにして今までどの作品も手に取ってこなかった。

それがフォローしているSa-Chanさんの記事がきっかけになり図書館に予約を入れて本作を読むに至った。


この記事のなかでのご友人の発言が、私の心のなかにスッと入って来た。

「空気が美味しい!鳥の声がする。
あー、こんなに癒されるって知らなかった!本を教えてくれてありがとう」 (本=センス・オブ・ワンダー)

センス・オブ・ワンダーを読んだご友人をSo-Chanさんがお気に入りの公園に連れていったときのご友人の発言


私は今年になってから本格的にガーデニングを始めた。
一つ一つの植物の世話をじっくりとする。そして日々成長の過程をじーっと観察していると、人間界とは別の自然の力に純粋に驚き感動することが増えた。身の回りにいる植物や虫、鳥たちといった自然や生き物たちの生態が興味深いし面白くて仕方ないと思うようになった。

そこに来てのSa-Chanさんの記事と出会い、センス・オブ・ワンダーとは一体どんな本なんだと気になって仕方なくなり長年読んでこなかった著者の作品に手を出すことにつながった。

実際に読んでみると、終始、感動と共感の嵐だった。
その中で印象に残った部分を紹介します。

子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことにわたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。

この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かなわぬ解毒剤になるのです。

この感性とは、センス・オブ・ワンダー(神秘さや不思議さに目をみはる感性)

読んでいて、ドキッとした部分を思わずメモに取った。
ガーデニングを通してセンス・オブ・ワンダーという感性をものすごく意識するようになったけれど、違う生き方をしていたらこの感覚を忘れたままこの先の人生を過ごしていたかもしれない。そう思うとぞっとした。
大人になった今でも、この感性を忘れないでいたい、もっと言ってしまえばこの感性をさらに磨いていきたいと思えた。
身近にある自然に物理的にも精神的にも自分からぐっと近づいて、ミクロな視点を持つと忘れがちな自然の力に簡単に触れることができる。本当に大切なことを教えてもらえる作品だった。


常設展示室 原田マハ

秋に入り、芸術の秋を楽しみたくて美術館に足を運ぼうかと思っていた矢先、別の本の巻末広告で見つけたのがこちらの作品。
近々美術館に行きたいし、気分を盛り上げるために美術関係の小説でも読んでみるかというノリで読むことを決めた。
著者のことは、数年前にNHKのあさイチという番組のプレミアムトークに出演していたのを見た記憶が残っている程度で、著書を読んだのは初めてだった。

私は美術館は好きだけど、特に専門知識があるわけでもない。ただ美的センスを摂取したいという目的で美術館へ行くことが多い。
あとは、美術館内のレストランやカフェに行くことが大きな楽しみでもある。開催中の展覧会とコラボしたアーティスティックなメニューをセンス溢れる空間で食べるのが非日常すぎて好きなんです。それに食いしん坊な自分調べでは、美術館併設の飲食店にハズレがないというデータがあり、そういう目的でも美術館を楽しんでいる人間でもあります。

少し脱線しましたが、アートに対してこんなスタンスの私のような人間にもこの作品は読みやすかったし、一章ごとに一枚の絵画をテーマにした物語の短編集なので飽きすぎずに読み切ることが出来た。

「キュレーター」ってなんぞ?という学びから始まり、絵画の鑑賞スタイルは人それぞれ自由でいいんだーという安心感をもらえて、物語以外のアート業界の専門的な知識を得られたのは有意義だった。

あと巻末の女優 上白石萌音さんによる本作の解説が結構面白かった。著者のことが本当に好きなのだという愛情が伝わる内容だった。文庫本にはこの解説が載っているそう。


奇跡集 小野寺史宣

公民館の本棚に並んだ背表紙をパッと見て、いいタイトルだと思って借りた作品。
こちらの著者は数年前に「ひと」という作品を読んだこともあったけれど、今回借りた時は著者の名前をまったく覚えていなかった。本作を読んでいる途中で文章の雰囲気からか「あれ?小野寺って…もしかして?」と気になって調べてやっと気がついた。

この作品は、まず内容に入る前に目次のセンスの良さにぐっと心を掴まれてやられた!と思わず唸ってしまった。チョロい読者な私です。

第一話 ☆ 青戸条哉あおとじょうやの奇跡 りゅうを放つ
第二話 ☆ 大野柑奈おおのかんなの奇跡 じょうを放つ
第三話 ☆ 東原達人ひがしはらたつとの奇跡 じゅうを放つ
第四話 ☆ 赤沢道香あかざわみちかの奇跡 今日きょうを放つ
第五話 ☆ 小見太平おみたいへいの奇跡 ニューを放つ
第六話 ☆ 西村琴子にしむらことこの奇跡 ごうを放つ
第七話 ☆ 黒瀬悦生くろせえつおの奇跡 くうを放つ

韻を踏み「放つ」しばりが、にくい目次


こちらの作品は連作短編集になってます。
えー?こんなことってある?!と思わされるような小さな奇跡が起こす感動の物語。
サクッと軽く読めるけど、ちょっと油断していると号泣するシーンもある。
それなので涙もろい方は、この小説の舞台である電車内や外出先ではなく家で読んだ方が良いかもしれないです。



百花 川村元気

全くの初見で本作を読み始め、ページをめくるほどに自分の気持ちの雲行きが怪しくなっていくのが分かった。

息子と母の物語なのは全く問題ない。ただアルツハイマー型認知症という病気と共に物語が進むのが個人的に読んでいて辛くなってしまった。
私の身近にも全く同じでなくとも似た症状の大切な人がいる。本作のあらすじも知らなかったため、なんの覚悟も無しに読んで感情移入し過ぎる場面もあった。

全体を通して本作の内容が、今の自分の精神状態で読んでそんなに楽しめる作品ではなかった。それと、この著者の文章表現が単純に私の好みとは合わないと感じた。

著者の存在は、ミーハーな私ですから当然知っていた。だけど自分の直感が、いつもこの著者の作品を読むことに対して前のめりな反応を示さなかった。それなのに今回は直感を無視してミーハーを押し通して借りてしまった。
著者の作品はたった一冊しか読んでないけれど、この作品に関して言えば自分の直感が正しかったことが証明された気がした。



以上、今年の8月からの読書の記録でした。
自分にピッタリな本に出会えるとそれはそれは嬉しいし、ちょっと合わなかったなーという読書体験もそれはそれで自分の糧になりました。


ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

それではまた~。


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