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「天にも昇る感動を覚える“ベストペアリング”が探る」関友美の日本酒連載コラム(リカーズ8月号)

 先日「味の素」が運営する「グーグーテーブル」というD2Cサイトに取材していただき、「夏にオススメのおつまみと日本酒」というテーマで日本酒ペアリングをご紹介して、日本酒の基礎についてお話しさせていただきました。このコラムが公開される頃には、ネットにアップされていると思いますので、ぜひご覧ください。

取材当日、酒3本と大量の酒器を背負って中目黒のスタジオに行ってみると、味の素の担当者さん、広告代理店さん2人、制作会社さん、ライターさん、カメラマンさんという大所帯。賑やかな現場でした。いつも身ひとつで各地を駆け回り取材する立場のわたしは、恐縮したものです。ありがたいです。

今回の主役は、3種類の料理とそれに合わせた3本の日本酒と酒器。カメラマンさんの手によってどんどん撮影されていく料理と日本酒を、みんなでモニタ越しにチェックしながら「このペアリングはどのような意図が?!」とかぶりつきで問われ、「これはアボカドの青臭さと食感が日本酒の香りのうんぬん・・・」とわたしが答えるのを、ふむふむと真剣にメモを取ってくださるみなさん。緊張感が走る現場ながらも、日本酒に関心を持ってもらえていることが素直に嬉しく、本当に楽しい経験をさせてもらいました。

そして2時間ほどの撮影と取材が終了。試食タイムが始まりました。先ほどとは一転、「美味しそう!」「こんな昼間から飲んじゃったらダメかな」「でも仕事だもの、体験しなきゃね!」「お酒強いんですか?」と(一部メンバーで)軽快に語らいながら、ペアリングを体験してもらいました。すると「なるほど!関さんが言っていたことが分かりました!」と一瞬で腑に落ちた様子。さすがは普段から食に携わるみなさん。感度がいい!「そうそう、そうなんだよ!」と、首がもげそうなくらい頷きました。

少々乱暴に言いますと、日本酒はどんな料理でもある程度は寄り添ってくれます。だけど今回の3つの料理と3種類の日本酒という狭い選択肢のなかでも、わたしが提案したもの以外とペアリングすると、最初に口にしたベストパートナーよりは物足りなさを覚えます。たとえば吟醸酒には、『ピーマンの梅紫蘇和え』を合わせました。これはピーマンがメインというよりは、爽やかで華やかな香りには、爽やかなハーブが合う、というわたしの中にある法則から『紫蘇(大葉)』を添えるのがキーポイントになっています。少しの違和感を感じる組み合わせや、単体では欠点を感じる日本酒でも、山椒やクミンなどスパイスを加えるだけで“素晴らしいペアリング”が完成することも。

日本酒のペアリングは『ベターよりベストを目指す』方が面白いかもしれません。繊細な分だけ、天にも昇るような気分になるペアリングがあるのです。いくら上手に言葉を重ねても、実体験にはかないません。ぜひ多くの人に体験してもらいたいです。

今月の酒蔵

玉乃光酒造(京都府)
酒どころ伏見にある。その歴史は古く、二代将軍・徳川秀忠の頃に酒造免許を賜ったとされている。戦中戦後の米不足によって3倍に薄め、糖類や酸味料などで味を調整した酒を出す蔵が多かった昭和39年、すでに米100%の純米酒を業界にさきがけて開発していたというから驚き。品質最優先をモットーに、有機雄町米と高精白、純米吟醸酒にこだわっている。酒粕や発酵を用いた料理を提供する直営飲食店も経営するなど、伝統を次世代に伝える誇り高き老舗蔵だ。

以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」8月号より


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