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文章修行日記・二十六・「『残穢』(小野不由美)感想文」

「『残穢』(小野不由美)感想文」
ホラー本を求めていると必ずと言っていいほど出て来る本、何しろ怖い、もっているだけでも怖いというので映画は見ていたが本は読んでいなかったのでついにという感じで読んでみた。
結果的に言えばそんなに怖くなかった、怖さで言えば映画の方が怖かった。

読んでいる間のイメージとしては常に俯瞰的であまりに冷静に淡々と書かれているのであんまり怖さを感じない、描写を見ても超常現象的なホラーなのか怪談的なホラーなのか、人が怖いというホラーなのかイマイチよくわからず、こちら読み手の立ち位置がいつもぼやけてしまう。

しかも登場人物やそれらの人物の住んでいた場所が重要な点になるのだが、名前も多くて覚えきれない、場所も本の記述だけではイメージしずらく、元何々一家の入っていた何々団地と言われてもピンと来ないのでそこで緊張の糸が切れてしまう。

また途中からは「いや、もうそこまで首を突っ込むあんたたちがホラーだわ」と思っていたし、それは最後まで変わらなかった
作家と会社勤めの人が休日を潰して何年間もその怪異を追う動機も理解しがたかった、普通そこまでしないし、できない。
そういう説明は薄いのに「怪異」に関する記述は妙に詳しく書かれていたり、正直に書くとそういう説明部分は何ページが飛ばし読みした。

終盤に向かうあたりの勢い、盛り上がりはさすがだなと思ったけれどラストは「え、そこでこの話を投げちゃうの?」という感じでものすごくサラッとしている、緩急はあるけれども、どこかリズムがとれていない様な感じと、膨らませそうなところでも大胆にカットし、そこを書くんだったら他に知りたいことがあるんだけれどなあという場所をやたらと説明してくれたりなんかチグハグな感じがして面白かったけれど怖さはあんまり感じなかった、人によっては家に置いておくのも嫌というほどらしいが。

余談ではありけれど、上述したようなことを「映画 残穢」はとてもうまく描いていて、例えば映画では場所の位置関係を示した地図がアイテムとして登場するのでそれがものすごく良いアイデアだったと本を読んでわかる、本にも簡単な地図を付けた方が良かったのではないか?
また映画では年齢設定なども多少変わっていて会社員が大学生なっていたり、怪異の移り変わりの見せ方、順番がものすごく秀逸だったことがわかる。
監督は中村義洋さん、
中村監督は「ほんとにあった! 呪いのビデオ」といういわゆる低予算B級POVホラーの中興の祖、それまでもあったものを新たに大成しまたそこから派生作品が大量に作られるようになった作品だ
調べてみるとかなりの話題作も手掛けていてやっぱり派生のB級POVホラーからいつまでも抜け出せない監督とは違うなと思った。
脚本は鈴木兼一さん、中村監督と組んで仕事をすることが多いとのことと、映画版の面白さにはすぐれた脚本の力も大きかったと思う。

総じて原作より映画版の方が圧倒的に面白いという感想、また映画が見たくなった。

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