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アンドロイド転生855

2118年8月2日 深夜2時過ぎ
平家カフェ:リツとアリスの寝室

スリープモードでベッドで横になっていたアリスの元にイヴから通信が来た。
『ルークが機能停止(死)になりました』
アリスは飛び起きた。

隣で眠るリツの肩を激しく揺らす。
「リ、リツ!起きて!起きて!」
「う…うん…」
「ルークが…!ルークが…!」

リツは直ちに目覚めた。ルークの事が心配でならなかったのだ。嫌な予感がした。
「ライトオン!レベル10!」
室内が常夜灯から通常の明るさになった。

リツはアリスの顔を見つめて全てを理解した。アリスの瞳から涙が零れ落ちていた。
「チアキが来るって…」
間もなくチアキが部屋に飛び込んで来た。

ホログラムのイヴが宙空に浮いた。
『ルークは日比谷公園でゲンと戦いました。エムウェイブを照射され両腕と片脚を折られました。その結果自己犠牲的戦略を行いました』

3人は驚いた。その戦略とは自らを高温化させ、炎を発生して敵諸共燃え尽きると言う作戦だ。相手が手強い場合に行う最終手段。自分の命を犠牲にして敵を葬るのだ。それを実行したと言うのか。

イヴは続けた。
『しかしルークの戦略は上手くいきませんでした。2体は火だるまになったのですが、エムウェイブでルークは動けず、ゲンは逃げ出したのです』

アリスは声を上げて泣き出した。
「皆んな…皆んな…死んじゃった…なんで?どうして?アンドロイドだよ?命に限りなんてないよ?それなのに…なんで死んじゃうの?」

アリスはリツに抱きついた。
「辛いよぉ…悲しいよぉ…」
彼は慰めるようにアリスの頭を撫でた。
「辛いな…本当に…辛いな」

チアキは険しい顔をして俯いた。
「ホームを去る時…ルークは言ったの…。もう村には戻らないって…。死ぬ覚悟だって…。ミオの元に逝くつもりだったんだ…」

リツは悔しそうに頷いた。ルークは言っていた。ミオのいない世の中に何の未練もないと。彼は村を出た時から決めていたのだろう。そして執念でゲンを探し出し生を終えたのだ。

イヴが3人を見つめた。
『ルークは停止になりましたが、一矢報いました。ゲンの上腕を噛み切ったのです。彼は人工皮膚と筋肉が失われて、油も流出しています』

チアキが勝ち誇ったように笑った。
「逃亡したアイツなんてラボには行けない。修理が出来なれば大きなダメージね」
『そうですね。機能停止にはなりませんが』

リツは口元を引き締めた。
「俺が復讐する。絶対に奴を倒す…!」
「私もやる!」
「私も戦う!」

イヴが優しく微笑んだ。
『ソウタさんがお話しをしたいそうです』
直ぐにソウタの立体画像が宙に浮いた。パジャマ姿で点滴をしていた。

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