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アンドロイド転生850

2119年8月1日 早朝
日比谷公園

(ゲンの視点)

帝国ホテルの隣にある日比谷公園に来た。多くの人間が集っている。バレエの演舞をしているとアンドロイドがやって来てルークと名乗った。ミオの仇を打つと言う。

「今夜12時。ここで待っている」
「何故ですか?」
「ミオは俺の恋人だった。お前に報復する」
「恋人?」

ゲンはまじまじと相手を見つめた。アンドロイド同士が恋人だとは珍しい。人間とマシンならばあり得る。人間にはそう言った趣向があるのだ。だがコイツはミオの彼氏だと言うのか。

もしかして…コイツも自我が芽生えたのか?
「あなたにも自意識があるのですか」
ルークは鼻で笑った。
「そうだな。心ってやつだな」

ゲンは俄かに楽しくなって来た。エムウェイブを使って23体のアンドロイドを葬ったが、どれも自我がなかった。ただの機械の塊だった。楽しかったけれど満足じゃない。

そんな奴らを倒すより自我がある者を殺したかった。世の中から去って行く無念を見届けたかった。たとえ痛覚がなくても命乞いをする様を見たいのだ。一体どんな顔をするだろう。

しかも同じファイトクラブ出身だ。敵に不足はない。どんな戦いになる事やら。ゲンはニヤリとなった。残忍な微笑みだった。
「いいですねぇ。それでは夜に会いましょう」

ルークは公園から去って行った。ゲンはまたバレエの演舞を始めた。優雅でありながら力強い動き。一挙一動にメリハリがある。アンドロイドの均整の取れた身体は美しかった。


(ルークの視点)

公園を出て通りを歩く。やがて無料電気ステーションボックスにやって来た。昨晩はゲンを見張るためホテルのラウンジで過ごした。その為チャージが出来なかったのだ。

ボックス内の椅子に腰掛けて充電を始めた。温かな熱は心地が良い。それに気分も晴れやかだった。やっとゲンを探し当てたのだ。ホームを去ってから72日目にして漸く念願が叶った。

本当はイヴに尋ねれば立ち所にゲンの居場所など判明したのだがそれを望まなかった。自分1人の力でやり遂げると決めていたのだ。愛するミオの仇は自分で取るのだ。

図らずもリツが漏らした言葉で千代田区まで分かってしまったが、その後のホテル探しまでは自分でやった。満足だった。しかも今晩、決着をつけるのだ。何としても一矢報いる。

ルークの内部で通信があった。応答するとチアキだった。彼女のホログラムが宙空に浮いた。
『ルーク。ゲンを見つけたのね。イヴが教えてくれたの。今はチャージ中ね』

「だったら全て知っているんだろう。今晩奴と会う。邪魔をするな。来るなよ」
『ゲンは危険だよ。エムウェイブって機器を持ってるってリツが言ったよね?』

ルークは頷く。エムウェイブの危険度はイヴから知らされていた。チアキは不安げな顔をする。
『照射されたら身動きが出来なくなるんだよ。それでスミレは酷い仕打ちをされたんだよ』

だったら照射されなければ良い。俊敏さには自信がある。チアキは何度も止めたがルークは聞く耳を持たずとうとう一方的に通信を切ってしまった。彼の信念に揺らぎはなかった。

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