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アンドロイド転生868

2119年8月30日 夕方
イギリス:医療センター

昨晩、ミアの元恋人に一方的に殴られて顔も身体も酷く傷付いたリョウを病院に運んだハスミ一家。エマの母親のユリエは家に泊まれと提案し始めた。彼が心配でならなかったのだ。

リョウは激しく手と頭を振って辞退した。痛みが響いたらしく、頭を抱えて顔を顰めた。すると医師アンドロイドが日本語で提案した。
「今日は入院した方が良いです」

全員が驚いた。入院する程の傷なのか。
「その方が点滴治療で早く回復します」
リョウは何度も頷いた。ハスミ家に泊まるくらいなら入院した方が気が楽だ。

「じゃあ。入院します。お願いします」
「分かりました。事務員を呼びます。手続きをして下さい。ハスミ様はお帰り下さい」
ユリエは渋々と納得した。

3人が去った後、リョウは医師に頼んだ。明日には退院しないと困るのだ。毎日必ずエマの家に通うと誓った約束を守らなければならない。何が何でも一晩で回復して欲しかった。

医師はニッコリとした。
「では、1週間通院して頂きます。点滴治療を施せばすっかり回復しますよ」
リョウはホッとした。

夜になり食事を出された。リョウは痛みに顔を顰めながら口に運んだ。スマートリングがコールした。応答するとミアだった。
「どこにいるの?フラットにいない!」

「あ…うちに来たのか?」
「う、うん!」
「入院したんだ…」
「oh!god!」

ミアの顔が険しくなった。
「昨日の件ね?怪我が悪化したのね?どこの病院?今直ぐに行く!」
「大丈夫だよ。明日には退院出来るし」

ミアは泣き出した。
「ご…ごめんなさい。痛かった。リョウ。痛かった。ごめんなさい」
「大丈夫だよ。本当に平気だ」

どうしても見舞いに行くと言うミアを何とか宥めた。最後まで病院の場所は明かさなかった。ミアは何度も謝って泣いた。
「ミアは悪くない。オリバーが馬鹿野郎なんだ」


翌日の8月31日 昼
イギリス:医療センター

約束通りリョウは退院した。まだまだ顔は腫れ上がっているが痛みの峠は過ぎたように思えた。鏡を見ながらニヤリとする。腫れたって…そうじゃなくたって変わらないさと。

リョウは自分の事はよく分かっている。平凡な顔立ち。どこにも魅力などありはしない。ま、いいさ。人は顔じゃないさ。いや…心だって大したことないか。リョウは自嘲気味に笑った。

病院を出ると、そのままエマの家に行っていつものように過ごした。ユリエは何度も泊まれと望んだが辞退した。エマが母親を嗜めた。
「1人の方が気楽なのよ。しつこくしないで」

エマの家から自宅に戻ると今度はフラットの前にミアの母親のグレースがいた。
「ミアは仕事中デス。リョウが心配なのでキマシタ。ミアを守った。ありがとゴザイマス」

やはりうちに来いと言うグレースの言葉に感謝しつつ辞退した。有難い話なのだが人の気遣いが反対に疲れてしまう。部屋に戻ると執事が用意したリゾットを食べて爆睡した。


※フラットとはアパートの事です。イギリスではフラットと言うそうです。

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