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半年間、雑談ネタを必死に探してみたら幸せのハードルが下がった話。

「What's good?」
日常的に使われるただの挨拶。教科書英語でガチガチだった私は「Hello」とか「Hi」以外の挨拶を初めて聞いた時にうろたえた。

ネットで調べてみると
「よっ!なんかいいことあった?」という翻訳を発見。また、同じ部類のフレーズに「What's up?」も見つけた。

留学中、同じ授業を受けていた同い年のアメリカ人、Zachはいつも私を見ると「Hey, what's good?」って聞いてきた。真面目過ぎた私は「UP?」ではなく「GOOD?」をあえて選ぶ彼には何か意図があるのかもしれない、と考え、彼と顔を合わせる前には必ずその日にあったいいことを一生懸命探すようになった。
朝起きて、ご飯を食べて、授業を受けて、課題して、部活して、ご飯食べて、寝る。
彼と知り合った当時は、1日を分解するとこんな感じの日々を送っていていた。非常に単調に聞こえるけれど、英語はなかなかうまく話せないし、自分に自信はないし、留学したはいいけれど何を目標に頑張ったらいいかわからなかった私は、ただひたすら焦燥感に押しつぶされそうになっていた時期があった。
そんな中、彼の「よ、なんかいいことあった?」の挨拶の返答の仕方がわからなくて、私は次第にその日にあったいいことを必死に探すようになった。
本当なら「not much! (いつも通りだよ)」とか、簡単に流すことができる挨拶だが、そんなことも知らずに本当にどうでもいいような「今日の朝ごはんのバナナはおいしかった!」とかを真剣に回答していた。
毎回バナナの話だと飽きてしまうので、バラエティを持たせようと思って自分の生活を客観的にみる視野を広げてみると、なんか日常って豊かだったんだなって感じるようになった。
空を見上げたらとっても美しい青空が広がっていたり、
食堂のおじちゃんが内緒でサービスしてくれたり、
教授とのメールのやり取りで新しい単語を覚えたり、
近所のベーグル屋さんの焼き立てが衝撃的においしかったり

些細でも、日常のありとあらゆるものが実は素晴らしいことだったのかもしれないって思えるようになった。つたない英語をニコニコ聞いてくれたZach は私の英語力の上達と幸せをキャッチするアンテナを張ることに間違いなく貢献してくれた素敵な紳士だった。

「Yumiはいつもポジティブで些細なことでも幸せに感じられるところが素敵だと思ったよ。英語、うまくなったね。Good Luck Bro!」
「私はあなたの挨拶の返答の仕方がわからなくて、毎日いいことを探すようにしたのよ。ありがとう」
最後の授業では、堅く握手して、こぶしゴッツンコしてお別れした。
同じ日常でも見方を変えたらちょっとスペシャルな感じになる。
彼との日常会話を通して大切なことに気づかせてもらった。
彼は大学を卒業したのちパイロットとなり空を飛んでいるようだ。

昼下がりの渋谷。私はカフェで窓際の席に座って空を見上げて、ふと当時を思い出した。今もZachはアメリカの空を飛んでいるのだろうか。

日常は、実は思った以上に豊かだ。
アツアツのコーヒーをすすって香りと苦みを口いっぱいにして、私はnoteを書くために相棒のパソコンを開いた。

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