見出し画像

花びらは散る 花は散らない

武士道と云うは死ぬことと見つけたり より

武士たちが 
「我、神仏を尊びて、神仏に頼らず」
ことを「美しい」と思う中

日本人が
この島国に神様や仏様が来る前からの
「精霊の王」への畏敬を持つとはいえ
その、畏敬の念が
「国土草木悉皆成仏」と
仏教(天台宗系)に流れている以上
仏教由来のものが
日本人の美学を形成する
ことは明らかだと思われる。

花びらは散っても、花は散らない。
形は滅びても人は死なぬ。
永遠は現在の深みにありて
未来に輝き
常住は生死の彼岸にありて
生死を手照らす光となる。
その永遠の光をかんずるものは
ただ念仏である。

 「金子大栄 歎異抄領解」
「花びらは散る 花は散らない」竹内整一より

仏教思想家金子大栄は、
「色即是空 空即是色」
を「花びらは散る、花は散らない」
と表現したという。

そして、この
「色即是空 空即是色」
を解く「般若心経」では
次のようなことが解かれている。

この世に存在する形あるものすべてが
つかのまであるからこそ、

ついさっきまで存在していた
滅び去ったものが次の瞬間、

またぞろ様々なものが、
この世に生じてくるのだよ。

あたかも何もなかったあの大空に、
再び様々な形をしたクモが、
湧き出てくるようにね。

つかのまの存在ではあるけれど、
あなたは意味もなく、
この世に生まれてきたわけではない。

無数の様々な原因と条件が寄り集まって、
生まれてきたのだ。

つまり、生まれる意味があったからこそ、
あなたは生まれてきたのだ。

そのことを思うと、
不思議な気分になるね。

そうなのだ。
今、生きているあなたとは、
奇蹟のような存在である
と言っても過言ではない。

まことにまことに、
ありがたい存在でもあるのだよ。

実は、
あなたのいのちとは、
宇宙大河の一滴のことなのだ。

わずか一滴ではあるけれど、
その一滴がなければ、

宇宙大河はついに成り立たない。
宇宙大河の中を、
とうとうと流れてゆく、
あなたのいのち。

あなたのいのちの中を、
とうとうと流れてゆく、
宇宙大河。

即ち、
あなたとは、
宇宙そのものなのだよ。

 新井満『自由訳 般若心経』

前述のように
花びらは散っても、花は散らない。
形は滅びても人は死なぬ。
永遠は現在の深みにありて
未来に輝き
常住は生死の彼岸にありて
生死を手照らす光となる。
と思えば、
死ぬことも怖く無くなる。

何故なら
そもそも日本人は
死んでも、遥か彼方に行くわけではない
近くの山海から子孫を見守っている。

と思っていたうえに
形は滅びても人は死なぬ。
とまで説かれるのだから。

であるのならば

日本人の滅びの美学
なかでも武士道のさようならの理
を代表する
散りぬべき 時知りてこそ
世の中の
花も花なれ 人も人なれ
と歌った
明智光秀の娘
細川ガラシャの辞世も
ただただ悲壮感からだけでなく
散ることへの喜び
が詠われているようにも
思われる。

そして、
日本人の美学として
時に挙げられる
「滅びの美学」
についても
見直すことが
必要だと思われる。

さようならの理





 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?