第六章 徳川家康と江戸幕府 〜将軍と大御所様〜

・秀吉の死をきっかけに、内部分れつをおこす豊臣家。やがて、そのあらそいは、日本じゅうの武将をまきこんだ『関ヶ原の戦い』へとはってんする。天下分け目の大合戦に勝利した家康だったが、そこにはまだ——。


『関ヶ原の戦い』という、大きな決戦(けっせん)に勝った家康は、最後の仕上げにとりかかるんです。

「西軍の中心人物だ!」ってことで、

石田三成、
小西行長(こにしゆきなが)、
安国寺恵瓊(あんこくじえけい)

をつかまえ、しょけい。

だれよりも豊臣家にまっすぐつかえた武将、石田三成は、41さいでこの世をさります。

そこからは、全武将にとってのごほうびタイムと、バツゲーム。


家康「東軍についてくれたみんなー! 領地……ふやすよーーーーー!!」

東軍の武将たち「やったぁぁぁーーーーー!!!」

家康「西軍についちゃったみんな…。ごめんねぇ、領地へらすよぉ」

西軍の武将たち「……ま、そりゃへらされるわな…」

家康「人によっては、全部取りあげるよぉ」

西軍の武将たち「……サイアクだ……」


西軍武将たちの領地をへらし、東軍武将たちの領地をふやしたんですね。

もちろん家康自身の領地もグンンン! とアップ。

子どもや一族、むかしからの家臣も全部ふくめた家康グループの領地は、そりゃもうとんっでもない広さです(関東、甲信、東海、近畿…とかだよ)。

もうだれもがみとめるナンバー1大名となった家康は、
慶長8年(1603年)、

”あれ”になるんです。

全国の武将のトップに立つ『将軍』、正式名しょう、

『征夷大将軍(せいいたいしょうぐん』

というやつに。

これで、
「日本の政治は徳川がやります!」という、

『江戸幕府(えどばくふ)』

がたんじょうしたのでした(「徳川という武士による"政府"がつくられた」って感じすね)。


ついにやってきました。


三河国の岡崎の王子として生まれ、数々のピンチにおそわれ続けた家康が、そのどれもをとっぱし、ついに天下を統一したんです。

このお話をさいしょから読んでくれてるあなたは

「あの人質だった家康が…」

と、しみじみ思うかもしれませんね。


が、


よろこぶにはまだ早い。

すでにお伝えしたように、まだ"完ペキ"じゃないんです。

では、その理由を……
説明する前に、ちょっとより道しましょう(より道でもないんだけど)。

将軍になった家康がどんなことをしたのか、こちらを先にごらんください。


日本のトップになった家康は、
「外国とのつきあいも大切っしょ」
と、海外へのきょうみをしめすんです。

日本に流れ着いた
ウィリアム・アダムスさんてイギリス人
と、
ヤン・ヨーステンさんてオランダ人
と仲よくなって、外国とのおつきあいのアドバイスをもらったりします。

そして、貿易(ぼうえき。外国との商品の売り買いのことね)にもちょーせっきょく的。

「外国のみなさーん! 朱印状(しゅいんじょう。幕府がハンコおした文書)をもってる船は、幕府がみとめた船なんで、安全な船です! なので貿易しましょー!」

と、東南アジアの国々との貿易を進めていきました(「朱印船貿易(しゅいんせん貿易)」っていいます)。

次に、将軍・家康がとりくんだのは、将軍になった2年後に

将軍をやめることです。

「短っ」て話ですが、たった2年で、将軍の座をむすこの秀忠にゆずってしまうんですね。

でもこれ、もちろん「将軍あきたー」とかってことじゃありません。
秀忠に将軍しょくをゆずることで、

「徳川の人間がずーっと将軍をやっていきますからねー。今もこれからも、うちらがずっとトップですよー」

ってことを、世の中の人に知らしめるためだったんです(ちなみに秀忠ですが、『関ヶ原の戦い』にまにあわなかったことで、しばらく家康にムシされてました。でも将軍なれた!)。

こうして、将軍をやめた家康は、えんがわでお茶をすする毎日を……


家康「今日も元気にはたらくぞー!!」


すごすわけがありません。
秀忠に将軍をまかせた後も、じっさいに権力をにぎっていたのは家康さん。

「まだまだげんえきバリバリ!」といった感じで、指示を出していくんですね。


家康「秀忠! とりあえず将軍しょくはおまえにゆずる。わしは引たいして駿府城(静岡県)にうつるから、おまえは江戸城を使いなさい。
あーそれとだな、江戸城と駿府城のリフォームを大名たちにやらせよう。もちろんお金もあちらもちで。そうすれば、大名たちのざい力をへらすことができる上に、こちらの城は強くごうかになる!」

秀忠「は! そのように!(元気なんだよなぁ。60なかばだけど……)」


「天下普請(てんかぶしん)」といわれる工事を命令したりと、徳川家をパワーアップさせることに余念(よねん)がありません。

将軍のバトンはスムーズにわたせたし、やめたあと『大御所(おおごしょ)』なんてよばれる自分はちょうぜつ元気。
これこそ理想の老後です。

しかし、家康には一つだけ、ただ一つだけ不安なことがあったのでした。



つづく。




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本当にありがとうございます!! 先にお礼を言っときます!