第四章 秀吉というライバル 〜したがうべきか……したがわざるべきか……〜

ここからの家康はなんだかモヤモヤ。

信雄のやつが和ぼくしちゃったから、こっちも次男の於義丸(おぎまる)を人質に出して、秀吉と和ぼく……。

なんだか負けた感じがただよってるけど、自分のせいじゃないし、まだ戦えたし。

てかホントは負けてないし。


たぶん家康の中では、そんな気持ちがぐるぐるしてたはず。
だから、秀吉の下につくなんてまっぴらごめんです。

でも、秀吉は思ってます。


秀吉「家康みたいに強ぇーやつが、日本のまん中あたりにズドーン!といるのはやっかいだよ……。
どうにかなんねーかなぁ。
家康がオレにしたがってくれたら、ほかの大名も
『え、あの家康が!? こりゃもう秀吉さんの天下で決まりだな』
ってなるんだけどなぁ……」


というふうに。

秀吉にしたがいたくない家康と、家康にしたがってほしい秀吉。
2人のかんけいは、このあといったいどうなるのでしょう?


まぁ、それは一度おいといて、こんな話を聞いてもらえますか。

タイトルは

「家康におこったアンラッキーと、秀吉からのいがいなプレゼント」

です。


あるとき家康は、


真田昌幸(さなだまさゆき)


という武将と大ゲンカになるんですね。

これがまあ、領地にかんしてモメまくったからなんですけど……とにかく

「真田ナマイキすぎんだよ!」

って、家康がブチギレるんです。

それで、真田のいる上田城(うえだじょう。長野県)ってお城をせめるんですが……


家康「真田のヤローひねりつぶしてやる!! 相手はたかだか信濃の国人領主。こちらの兵力はむこうの3倍以上。勝ったもどうぜんだ!」

鳥居元忠「負けました」

家康「ハッハッハッ、ほら見たこ…負けた!!?」

鳥居「真田、戦いうまいっす。なんかすっごい作戦使ってきました」

家康「そんなこた知らねーよ!!なにやってんだ!! なんとしても真田をたたきつぶせぇーーー!!!」


まさかの負けに、その後も真田をせめようとする家康でしたが……。


家康家臣「殿! い、石川数正が徳川をうらぎり、秀吉につきました!!」

家康「なにぃーーー!!!! 石川数正って、あの数正か!!?」

家康家臣「はい! あの正です!」

家康「あの正ってなんだ!! ……マズい。ヒジョーにマズい!! 石川数正は徳川のいろんなじょうほうを知っている。こちらの戦いかたから何から、ぜんぶ秀吉にバレてしまうぞ……! しゅうりょうだーー! いまは真田と戦ってる場合じゃない! ひきあげろーー!!」


むかしからの家臣・石川数正が、家康をうらぎり秀吉のもとへ走った(理由はわかってません)ので、真田ぜめはいったんおあずけです。


マジ、アンラッキーすぎんだろ……


と思った次の年。

その秀吉から、こんなプレゼントが届くんです。


家康家臣「殿、秀吉からおくりものがとどくそうです」

家康「おくりもの? いったいなんだ?」

家康家臣「妹です」

家康「わかんないわかんない。『おくりものがとどきます。妹です』意味わかんない」

家康家臣「秀吉が『オレの妹を正室(おくさん)にどうぞ』と……。よっぽど、殿に家臣になってほしいんじゃないでしょうか……」

家康「だからといって……やり方がぶっとびすぎてるだろ」


秀吉の妹・旭姫(あさひひめ)とけっこんしてもーた家康。
これで、秀吉のぎりの弟になっちゃいます。

さらに数ヶ月後。


家康家臣「殿、秀吉からおくりものがとどくそうです」

家康「こんどはなんだ?」

家康家臣「母です」

家康「だれの?」

家康家臣「秀吉の」

家康「なんで?」

家康家臣「人質で」

家康「母が?」

家康家臣「母が」

家康「母かぁー。母送ってきたかぁ……。うーん……」


家康に頭をさげてほしくて、あの手この手をつくす秀吉。

マザコンぎみの秀吉が、母・大政所(おおまんどころ)を人質に送ってくるなんてよっぽどです。


家康はなやみます。


これだけモーレツな秀吉からのラブコールをことわれば、またデカい戦争になる……。
信濃がゴタつき、石川数正がうらぎった今は……正直秀吉と戦うのカンベン。


こうなったらしかたない……。


家康は、「関白(かんぱく)」というえらーいポジションと、"豊臣"という名前をもらった、秀吉のもとへむかい、


豊臣秀吉「よく来てくれたね。大儀(たいぎ)であった!(ごくろうさま!)」

家康「ははぁーー!」


ついに、頭を下げたのでした。


そのあと秀吉は、九州の島津(しまづ)さんもしたがわせ、奥州(おうしゅう。東北地方)の伊達(だて)さんをとりこみながら関東の北条さんをたおします。

さいごに奥州の武将を、たおしたりしたがわせたりして、すべての戦いがしゅうりょう。

こうして、豊臣秀吉が天下を統一したのでした。


「あれ? 家康が天下を統一する話じゃないの? 秀吉が天下統一しちゃったよ?」


と思った人もいるかもしれませんね。

でもごらんの通り、天下を統一したのは豊臣秀吉。
家康は、豊臣家の家臣として"関東"をおさめていましたが、天下をどうのこうのするたちばじゃありません。


「あれ? 関東? 家康って三河とか駿河の大名じゃなかったっけ?」


というギモンがさらに出てきたあなたは、このお話に、いや、戦国に、いや、このお話にハマってるかも。

家康はね、秀吉といっしょに関東の北条さんをたおしたあと、


秀吉「家康さん、北条がもってた関東あげる。もとの領地からいどうしちゃいなよ。よかったね、土地が大きくなるよ!」

家康「(な! こきょうの三河も、苦労して手にいれた領地も、すべて手放せというのか……!? いまの国をおさめるのに、どれだけの努力をしてきたと思ってるんだ! それに、関東へいけばまたゼロからのスタートだ……! しかし……さからうことはできん……! うけいれろ……笑え……笑うんだ家康……!!) ………うまく笑えてますか?」

秀吉「なんの話?」


ということになり、江戸城(えどじょう。東京都)におひっこししていたんです。


「家康が関東にうつったのはわかったけど、秀吉が天下をとったことには変わりはないでしょ? え? 家康が天下をおさめたっていうのは、ウソなの??」


もちろんウソなんかじゃありません。

家康が天下をとるのはこのあとのこと。

物語は、ここからなんです。



つづく。




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