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【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑤

 ここからの話はリストラの実践編になります。
 業績の急激な悪化にともなう希望退職制度には、ほとんどの会社にあてはまる経験則があります。
 いなくなっても会社が困らないイエロー社員のうち、ざっくり五割が自主的に退職を選択します。経営が先行き不安な会社に残るよりも、割増退職金をもらって再就職先を探すほうが賢明だと判断するからです。

 一方で、何がなんでも会社にしがみつこうとするイエロー社員もいます。そういう連中はしぶといですよ。めったなことではやめようとしません。
 そりゃそうでしょ。楽だもん、「働かないおじさん」は。しかも、あろうことか、自分ではだめ社員だと認識していません。仕事ができない社員は自分を客観視することができないものなんですよ。

 出世はしていないものの、ふつうに仕事をしてきたと自分では思っている。自分が会社をやめる理由はないと主張する。自分にはプライドがあると言ってのける。
 たかだか長く会社にいるだけのくせに、プライドだなんてちゃんちゃらおかしい。まったく冗談じゃない。
 コンサルタントは吐き捨てるように言った。

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