シニア斉藤

世界平和を願う経済ジャーナリスト。怪しげなベンチャー企業から超一流企業まで1000社以…

シニア斉藤

世界平和を願う経済ジャーナリスト。怪しげなベンチャー企業から超一流企業まで1000社以上の取材経験を生かし、小説やエッセイなど幅広く書いていきます。

最近の記事

【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑨

 さて、再び「リスト」のフォルダーを開いていただけますか。イエロー社員のどれでもいいので名前を指でタップしてください。  はい、ご覧のとおり、データは年齢、勤続年数、業務履歴の三項目しかありません。イエローリストの社員には単なる記号しかないってことです。  そりゃそうでしょう。ろくなスペックがないんですから。  名前も記号に過ぎないと思ってください。よく知っている社員の名前があったとしても、それは記号です。リストの色を一日でも早くイエローからレッドに変えるべき記号です。記号

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    • 【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑧

       はい、この程度にしておきましょう。お疲れさまでした。ロールプレイングとはいえ、プライベートなことにまで踏み込んじゃってすみません。心臓がドキッとされたでしょう。  執行役員は苦い目で首を少しひねった。  いやあ、でも、さすがでした。今年四月一日に社内最年少の五十歳で執行役員に昇進されたのも納得です。あんな上手にアドリブで切り返すことはなかなかできませんよ。 「会社をやめろってことですか」と詰め寄られても、相手に言質を取られないようにうまくかわしたのは舌を巻きました。  

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      • 【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑦

         相手の答えがNOの場合、ここからが勝負です。  いいですか? この面談は相手に勝つか負けるかです。執行役員ともなれば、ビジネスの勝負は勝たなければ意味がないことをよくご存じですよね。     勝ちを重ねることにより、会社への貢献度が高まり、自らの役職が上がっていく。そうして、みなさんは執行役員まで上がってきたわけですよね。リストラ面談でも勝ちを積み重ねていきましょう。  勝てば勝つほどスペックが上がります。経営陣の評価が高まります。今回のリストラは、会社のために非情に徹し

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        • 【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑥

           改めて言います。イエロー社員を目標人数まで削減してリストラを完遂することが、いま現在で会社を守る唯一の手段です。  リストラに会社の存亡がかかっています。八人の執行役員がそれぞれミッションを果たすことで、会社が危機を脱し、コロナ後も存続できるのです。リストラは戦いです。ファイトを燃やしてこの戦いに勝ちましょう。

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        【リストラ小説】会社棄民              ー…

          【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑤

           ここからの話はリストラの実践編になります。  業績の急激な悪化にともなう希望退職制度には、ほとんどの会社にあてはまる経験則があります。  いなくなっても会社が困らないイエロー社員のうち、ざっくり五割が自主的に退職を選択します。経営が先行き不安な会社に残るよりも、割増退職金をもらって再就職先を探すほうが賢明だと判断するからです。  一方で、何がなんでも会社にしがみつこうとするイエロー社員もいます。そういう連中はしぶといですよ。めったなことではやめようとしません。  そりゃそ

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          【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章④

           いまの画面を閉じて、「リスト」のフォルダーを開いてください。ご覧のとおり、それぞれの執行役員ごとに五十代の社員を割り当てたリストが作成されています。  上段のグリーンで色づけた枠に記載された社員は、いまやめられると会社が困る人材としてチョイスされました。プロテクト社員に指定され、希望退職の対象から除外されます。  下段の枠はイエローになっているでしょう。この四百人がリストラのターゲットです。イエロー社員が希望退職を決断して書類を提出すると、その社員の枠は色がレッドに変わ

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          【リストラ小説】会社棄民              ー…

          【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章③

           非常に興味深いデータがあります。タブレットの画面を下にスクロールしてください。四十代が百十五人、五十代は三十三人と出てきましたね。  これって、なんの意味か、わかります?  正解は、四十代と五十代で会社にとって存在価値のある社員の人数です。  人事部長に、各部署の所属長から各社員の勤務実態について事細かにヒアリングをしたうえで、四十代と五十代の社員を仕分けしていただきました。  まず、能力や適性をみて、やめるべき社員をスポイルしました。つぎに、三十代以下でも代わりがきく

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          【リストラ小説】会社棄民              ー…

          【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章②

           昨年の四月一日に働き方改革関連法が施行されました。この法律を受けて、全力で働き方改革に取り組んだ会社がどれだけあったでしょう。ほんの数える程度じゃないですか?  ところがどうでしょう。今年の一月三十日に新型コロナのパンデミックが明らかになってから、私ども経営コンサルタントのもとにはさまざまな会社から働き方改革の相談が山ほど舞い込んでいます。  国が法律を定めても、なかなか変わろうとしなかった会社が、新型コロナという疫病のアクシデントであたふたと変わろうとしている。皮肉な

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          【リストラ小説】会社棄民              ー…

          【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章①

           新型コロナウイルスで今後どうなると思いますか?    変わるのです。デジタル化が爆発的に進み社会全体がどんどん変わっていきます。最も変わるのは仕事です。会社と会社員との関係です。

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          【リストラ小説】会社棄民              ー…