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メディカルランナーってなんだろう

こんにちは、高齢者ランナーの山崎です。長野マラソンで痛めていた右アキレス腱をさらに壊してリハビリ中です。リハビリの間に心肺蘇生をリードするACLSプロバイダー資格を取ったのでその経緯を書いてみます。

マラソンと救命処置


「ACLSプロバイダー」は成人の心停止に対する二次救命処置を指揮したり、携わる医療者です。Advanced Cardiovascular Life Supportの略称。倒れた人が救急車で担ぎ込まれたERでの対応とも言えます。通常医師、看護師、救急救命士の資格を持つ人が2日間のシミュレーション・プログラムを受講して修了資格を取るようです。

救急部門(いわゆるER)や集中治療部の医師、看護師、麻酔科専門医などはこの資格を持っていることが多いみたいです。でも定年退職した医師が、なんでこんな資格を取るのかな。

ACLS修了証

マラソンという競技はハードですが、一般市民が多数参加します。心停止が生じる頻度は米国の報告(2000〜2010年の大会まとめ)ではフルマラソンで10万人に一人。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22236223/ 

このレポートはNEJMという超一流誌に掲載されていて、危険因子や生存者の特徴など詳細に検討されています。マラソンで心肺停止が起きやすいのはラスト1/4、つまり30kmからゴールの区間のようです。

日本の報告では国士舘大学が 2008~2012年度の5年間に救護活動を行った市民マラソン大会 89大会のまとめがでてます。それによるとフルマラソンで10万人に二人の割合で心停止が起きてます。https://core.ac.uk/download/pdf/231027559.pdf

多いとは思いませんが、東京マラソンやNYシティマラソン規模だと数万人参加ですから開催2回に一人以上起きる頻度と言えます。

ACLSとBLS(一次救命処置)


僕自身は幸いにも初マラソンの28歳から65歳の現在まで37年間、50回以上フルマラソンを走りましたが、マラソン中に目前で心肺停止のランナーに遭遇したことはありません。が、これからも走り続けるのであれば、もしもの時は役立ちたい。そう思ってACLSコースを履修しました。

ACLS講習風景

ACLSプロバイダーの資格を取る条件として医療者資格に加えてBLS認定が必要です。BLSとは、Basic Life Supportの略称で、心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置のことです。これは医療者でなくても、認定者でなくても、誰でも行える処置です。逆に言えばマラソンランナーはみんなが知っておいた方が良い処置です。

大学の体育会や地域の運動講習でもBLSトレーニングが開催されることは多いのではないでしょうか。慶応の体育会部員対象BLS講習が以下のサイトに載っています。

倒れて意識のないランナーをみたら、とにかく大声で助けを呼ぶこと、AED(自動体外式除細動器)を取りに行ってもらうこと、そして脈がなければひたすら両手で胸骨圧迫。その回数は1分間に100〜120回!一人の場合は人工呼吸などより、とにかく心臓を押すこと。

ただそうはいっても日常生活では意識消失・心肺停止の対応を迫られることはまずありません。僕も救急室や集中治療室を担当していた30代までは病院内で患者さんに心肺蘇生を行うことはありました。でもそれから30年近く専門医として手術に専念していたので心肺蘇生をやっていません。

今回、長野マラソンのサイトに大会出場する医療関係者にメディカルランナーとして協力して欲しいとあったので、なんとなく登録しました。しかし医者とはいっても、とっさに適切な対応ができるかどうか自信がありませんでした。

メディカルランナーより、マラソンランナーの胸骨圧迫


ACLSプロバイダー講習を受けて、思ったことは二つ。ひとつはメディカルランナーといって医療者ランナーがワッペンをつけて走るより、倒れたランナーを見たときに最初に行うBLS手技を大会要項に掲載した方が意味がある。助かるかどうかは最初の胸骨圧迫までの時間で決まると言えます。

もう一つはメディカルランナーを走らせるなら、医療者ランナーに対しても事前講習を行うこと。マラソンの現場での対応などは医者でも機敏に動ける人は少ないでしょう。NYシティマラソンのメディカルボランティアなどは募集サイトをみると必ず講習時間があるようです。

レース中の心停止の初期対応は、形だけのメディカルランナーを募集することより、参加ランナーみんなが協力することが大事かな。


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