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「破壊と再生」繰り返してたどり着いた保険外訪問看護

前回、保険外訪問看護の記事を書きましたが、今回は介護の話より、この事業に至った経過を書きたいと思います。

2年ちょっと前にこのブログを始めたのは「せのさん、より良い死に方やってよ」「親の看取りやってよ」と周囲から言われたことがきっかけでした。なかなか時間がなく書けなかったのですが、私は自分をごまかすとすぐ病んでしまうので正直に書きます。よかったらお付き合いください。


1.法人にすることになった経緯

2020年以前から「心から看る介護と認知症」のお話会や、死生観ワークショップ、命の再定義トークライブなど、何度も命に関わる活動をしてきましたが、何となく足を踏み込めずにいました。

「看取り」って聞いただけで、気分を害する人が一定数いるようなんですね。そういう出来事をよく聞きます。いつか誰もがそこにたどり着くことなのに背を向けている人がいるのは、根こそぎ命を救っている医療の在り方が反映されているのだなぁと思いました。だから発信するのが怖かったんです。

ですがこれから自宅での介護や看取りが増えるのは明らかで、介護の心構えや命との向き合い方を知っておくことはとても大切なことだとも思っていました。また、治療の段階を終え、生活援助の段階も終えて、看取りは本質にもっとも近づく精神性の関わりです。人にどう思われようと、自分が正しいと思うことをやろう!と本腰を入れて向き合う覚悟をしました。

その後しばらく個人事業のまま動いていましたが、「あー、個人事業主かぁ」「まだ法人にしてないの?」「あなたは箱を作らないとダメよ」とあちこちで言われました。確かに介護や命に関わる仕事をするなら、個人事業では信頼が足りないのかもなぁと思いました。



2.悪魔に魂を売る覚悟?

10年以上前からネット上で、完全別名で仕事をしてきましたが、法人は現場レベルで広めていく必要があるのを感じていました。私は認知科学、NLP、コミュニケーション理論など心に関することを講座で伝え、個人的な悩み相談も聞いて来ました。そして健康や予防に応用して看護師さんたちにも伝えてきました。

ですが正直言って、法人にするのはあまり気が向いていませんでした。個人事業の方が自由だからです。法人にするということは資本主義経済の流れに乗らないといけなくて、ちょっと例えは悪いですが、まるで悪魔に魂を売らなきゃいけない(笑)ような気がしていました。

ただ、自分がやりたいと思ったことを実現していくために必要なのであれば、それも必然だと思い一般社団法人を設立することにしました。それから早かったです。自分が覚悟を決めるとあらゆることがトントン拍子に進み、2ヶ月ほどで設立に至りました。きっと私に何か学ぶことがあるんだろうなぁと思いました。



3.個人と社会の幸せの格差

ところが…ですね、社会では、心のことはほとんど置き去りなんですね。ひとり一人は、起業するにしても、人間関係においても、健康を維持するためにも『心』が大切であることに気づいていますが、会社になった途端まったく反応してもらえないw 心理に触れることはまるでご法度です。皆さんが働いている会社もそうではないでしょうか?

社会は個人よりかなり遅れています。個人的にはNLPやコーチング、さまざまな心理学やスピリチュアルを学ぶ人が増えたにも関わらず、社会は相変わらず物質主義、成果主義です。まぁ資本主義経済なので仕方がないのだけど、私たちが願っている『心から健康な社会』には「それ大切ですよねー」とは言ってくれるものの、なかなか次の一歩に至りません。

私が感じるに、「個人が求める幸せ」と「社会が求める幸せ」は違うんだと思います。個人は心の充足を求めるけれども、会社や組織はそうじゃない。資本主義経済だから…、会社はお金儲けをしないと存続できないし、そこで働いている人たちの人生に直結する。この格差をどうやって埋めていけばいいのだろう?と漠然と考えていました。

情報は上から下に降りて来るけど、変化は下から上へと上昇していく。次の時代への進化成長は個人から始まり、徐々に組織、社会、国家へと進んでいくのだろうと思います。地の時代が終わり、精神性の時代になっていくと思われますが、まだまだ時間がかかりそうです。



4.病気や介護は相談しにくい

そして心理学の講座や相談から離れることにしました。13年間続けて来た講座も終了することにしました。その間の数々のアカウントを一掃し、名前も本名に戻してお出直しすることにしました。

それからこう思いました。いくら「相談にのります」と言っても、多くの人は個人的な話をすることに抵抗がある。とくに健康や介護は本人だけでなく、家族関係や環境、仕事のストレスなどさまざまな状況が影響しているため、他人に心を開くことが難しい。

病気や介護の相談は、たいてい友達同士でお茶してるときとか、飲み会の帰り道とかに、何となくポロポロっと話し始めることが多いのです。ですが「相談にのります」と看板を出すと人はためらうのです。そしてどうやら医療や介護に関しては「保険内」が常識であって、他は非常識・・・。ではないでしょうか?

心については自分で学び、気づいていくことが最善ですが、病気や介護で悩んでいる人は受講する余裕などないだろうし。そりゃそうですよね。
私がモノを売ればいいのかもしれないけど、そこだけはどうしても譲れないこだ『りがあって、やり方を変えるのはいいけど、モノではなく心、考え方、意識、感覚、情報…という目に見えないことを伝えていきたいのです。



5.新たな事業の始まり

今の医療や介護は患者さんが主体です。だけど介護や看取りの場合、本当に大変なのは『家族』だと私は思います。以前、植物状態で2年生きた叔父の話と、余命1ヶ月と告知された父の記事を書きましたが、介護は周囲の人の人生に想像以上の影響を与えます。またお看取りも『残される家族』が主体です。なぜなら人間は生きていてこそ人間であり、『死は残される人のためにある』と思うからです。

今までは、そうしたことを講座で伝えることを仕事としていましたが、実践の場を創ろうと思うようになりました。実際のところ介護で翻弄している人は、おそらく学ぶ時間も、気持ちの余裕もないだろうと思うからです。私たち看護師が、実際の介護の場に出向いて対話ができれば…と思うに至りました。

ところが、保険内の訪問看護ではさまざまな制約があります。1回の訪問時間は30分~60分、だいたい週2~3回の訪問が、保険請求可能な範囲です。それでは血圧や体温を測定したり、やるべきことをやるだけで時間が終わってしまい、心に関わる対話などできません。お看取りの時期も同じです。一方、保険外は時間も回数も期間も制限なく、ご家族の希望に応じて利用してもらえるのです。

そうしたことを考えていると、ある時ふと『看取り対話師』という言葉が下りて来ました。法人の理事に話してみると「それ特許取った方がいいよ」と言われ、看護師向けの看取り対話師研修が誕生しました。当初は教育だけの予定でしたが、保険外訪問看護サービスの準備も着々と進み「看取り対話師協会」が誕生しました。



6.諦めるとやって来た

こうして「心理学セミナー」「悩み相談」「心のケア」を中心に活動してきた私ですが、社会の変化がなかなか進まないのを感じて手放しました。すると最近になって企業から「心のケア」「心の健康」を求められるようになってきたのです。

昨年6月に『ソーシャルヘルスケアINCLUSION』をテーマにした法人設立会を開催し、その後も企業に「従業員の介護支援」を訴えて来ました。その主旨を理解してくださる、従業員を12万人抱える企業から連絡がありました。

今年の後半、介護を中心としたオンライン講座、悩み相談から保険外訪問看護の流れが出来てくるかもしれません。心の介護相談室は、企業サイト、電話、介護ブースなどで対応します。そうして少しずつでも、従業員の介護離職防止に取り組んでくれる企業が増えていったらいいなぁと思います。

いずれは行政も医療も手一杯となり、介護施設もいっぱいになり、働きながら介護する人に負担がのしかかります。政府が何もできないのであれば、看護×企業で協力体制をつくり、案を出し合っていきたいと思ってます。



7.最後に

最後までご覧くださりありがとうございます。こうして過去のさまざまな事柄を手放して来ました。13年間続けてきた講座、その間使っていた活動名、アカウント、そしてネット上の活動から実際の現場へ。

強制終了する前に自ら手放したことが多いです。今は冥王星みずがめ座期で、破壊と再生の作用の時期だから。もうそろそろ要らないかもなぁと思いつつ、頑なに握り締めているものをフッと手放せば、何かしら次が来ます。今もまだ破壊のど真ん中にいますが。笑

私たちが行う保険外訪問看護は、単に医療処置や観察、介護・家事を行うだけでなく、心の関わりがベースになっています。介護の負担・ストレス、病気のこと、医療のこと、介護のこと、治療のことなど、お友だち専門職として何でも聞いてください。家族関係の悩み、職場の悩みなども共有しましょう。



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