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書評:『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド/谷崎由依 訳

地下鉄道(Underground Railroad)は、19世紀アメリカの黒人奴隷たちが、奴隷制が認められていた南部から、奴隷制の廃止されていた北部の州へ、ときにはカナダまで亡命する…

狂ッテイル とはこういうことさ ――書評:『愛書狂』G.フローベルほか/生田耕作 編訳

レコードバカ一代という、音楽評論家の湯浅学がひたすらアナログレコードへの狂愛を淡々と語り続ける座談会を、学生時代に見に行った事がある。レコードを聴くにはまず ス…

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書評:『LGBTを読み解く ――クィア・スタディーズ入門』森山至貴

〈良心ではなく知識が必要な理由〉という章で始まるこの本は、クィア・スタディーズという比較的新しい学問の視座で、学校や職場でマイノリティとどう向き合うか、という課…

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書評:『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ訳

先日、ReDEMOSのイベントで、東京大学社会科学研究所の大沢真理先生が、「家事は女性」というのは〈伝統的〉なものではない。結局、家庭内における力関係(=家庭内の政治)…

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書評:『「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉』原丈人

屈指のベンチャー企業家、内閣参与でもあり、国内外の様々な経済会議で発言してきた著者が、「会社は誰のためのものか」と問いかけ、「株主のもの」とその瞬間瞬間で株主が…

書評:『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ/斎藤真理子 訳

「天国に住んでいる人は地獄のことを考える必要がない。けれども僕ら五人は地獄に住んでいたから、天国について考え続けた」 1970年代、韓国ソウル市〈楽園区 幸福洞〉の…

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【2017年、いますぐ棚で埃を被っているsnoozerを暖炉に焚べ、BGMzineを手に取らなければならない理由】

#BGMzine issue3 ……断言する。マチズモの申し子たる俺的に言えば、これは2017年におけるsnoozerであり、甲本ヒロトであり、ドリフターズだ。……と、いきなり荒唐無稽な…

書評:『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド/谷崎由依 訳

書評:『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド/谷崎由依 訳

地下鉄道(Underground Railroad)は、19世紀アメリカの黒人奴隷たちが、奴隷制が認められていた南部から、奴隷制の廃止されていた北部の州へ、ときにはカナダまで亡命することを手助けした市民組織の呼称。また、その逃走経路。

その「地下鉄道」が本当に地下を走る鉄道だったら……という発想から書き上げられたこの小説は、ピューリッツァー賞、全米図書賞をはじめ、2016年のアメリカの各文学賞を

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狂ッテイル とはこういうことさ ――書評:『愛書狂』G.フローベルほか/生田耕作 編訳

狂ッテイル とはこういうことさ ――書評:『愛書狂』G.フローベルほか/生田耕作 編訳

レコードバカ一代という、音楽評論家の湯浅学がひたすらアナログレコードへの狂愛を淡々と語り続ける座談会を、学生時代に見に行った事がある。レコードを聴くにはまず スピーカー と アンプ と ケーブル と 針 と プレーヤー が必要で、「100万円あればとりあえずまともなものを揃えられる」なんて言葉を耳にした事もあり、とにかく一つ一つにお金をかければかけるほど良い音で聴けるというのがレコード愛好者の通念

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書評:『LGBTを読み解く ――クィア・スタディーズ入門』森山至貴

書評:『LGBTを読み解く ――クィア・スタディーズ入門』森山至貴

〈良心ではなく知識が必要な理由〉という章で始まるこの本は、クィア・スタディーズという比較的新しい学問の視座で、学校や職場でマイノリティとどう向き合うか、という課題に向き合っている。何しろ新しい学問なので、この本では、Lとは?Gとは?クィアとは?という基本的な知識を含め、クィア・スタディーズが誕生する経緯やレズビアン/ゲイの歴史といった前提の部分に全ページの半分を割いて丁寧に、そして、できるだけシン

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書評:『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ訳

書評:『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ訳

先日、ReDEMOSのイベントで、東京大学社会科学研究所の大沢真理先生が、「家事は女性」というのは〈伝統的〉なものではない。結局、家庭内における力関係(=家庭内の政治)の問題で、賃金格差がなくなれば男女の家事の負担率が近づくというデータも出ている、と言っていた。
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インターネットで〈フェミニスト〉という言葉を目にした

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書評:『「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉』原丈人

書評:『「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉』原丈人

屈指のベンチャー企業家、内閣参与でもあり、国内外の様々な経済会議で発言してきた著者が、「会社は誰のためのものか」と問いかけ、「株主のもの」とその瞬間瞬間で株主が儲かれば社会や会社自身の発展は二の次だという短期売買のマネーゲーム=博打で破たんしている今の「株式」資本主義から、「会社は公器」と投資本来の役割である将来社会の発展に貢献するアイデア=会社を守り育てた結果利益が産まれる健全な「公益」資本主義

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書評:『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ/斎藤真理子 訳

書評:『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ/斎藤真理子 訳

「天国に住んでいる人は地獄のことを考える必要がない。けれども僕ら五人は地獄に住んでいたから、天国について考え続けた」 1970年代、韓国ソウル市〈楽園区 幸福洞〉のスラム街――期待できることが何もない土地で、必死にしがみついて生きる〈こびと〉の父さんと、僕たち家族。(「こびとが打ち上げた小さなボール」) がんと難病で立て続けに亡くなった両親の高額医療費のために家を売り、じりじりと転落していく家庭を

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【2017年、いますぐ棚で埃を被っているsnoozerを暖炉に焚べ、BGMzineを手に取らなければならない理由】

【2017年、いますぐ棚で埃を被っているsnoozerを暖炉に焚べ、BGMzineを手に取らなければならない理由】

#BGMzine issue3 ……断言する。マチズモの申し子たる俺的に言えば、これは2017年におけるsnoozerであり、甲本ヒロトであり、ドリフターズだ。……と、いきなり荒唐無稽なことを言ってみる。しかも別の物に例えるって最低。まず、何がsnoozerなんだ、死ね、という罵声を煙に巻くために、zineの表紙をめくり、冒頭にひっそりとある、しかしながら圧倒的に力強いマニフェストを少し紹介しよう

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