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大逆転に思う

将棋界で藤井聡太八冠が誕生しました。全タイトル独占は羽生善治七冠以来27年ぶり、八冠独占は史上初という快挙です。ただ、今日に関してはどうしても敗れた永瀬拓矢王座のことを書きたくなります。

私はどこにでもいるアマチュア有段者に過ぎませんが、永瀬王座が詰みを逃した局面を与えられて1分以内に指せと言われたら、おそらく最後まで読みきれないまま正解手を指したでしょう。将棋を何千局も指した経験があれば、この局面は詰むはずだと判断できるからです。弱いゆえに感覚と経験で指すしかないのです。

ただし、その先で正解手を指し続けられるかどうかはわかりません。最も難しい変化の▲2二銀△2四玉まで進めたところで、詰まさなくても角を外して勝ちと判断できれば良いのですが、詰ましにいってミスをして逃がしてしまうことも大いに考えられます。

一方、永瀬王座は強いがゆえに感覚と経験で判断しなかったのでしょうが、トッププロであれば1分将棋でも勝ちを読みきれるはずの局面なのは間違いありません。信じられないミスと言って差し支えないでしょう。

将棋は盤上および持ち駒の情報が完全に公開されています。そのため、負けた場合は読みに穴があったとか判断を誤ったとか、技量面での敗因が必ず存在します。ゆえに、大逆転負けを喫すると自分を責めるよりありません。今日の永瀬王座も、内心は自分に対する呆れと怒りで満ちていたはずです。

もっとも、信じられないような逆転負けというのは、将棋に打ち込んだ時期のある人は誰だって経験しています。あの羽生善治九段も、竜王戦の挑戦者決定戦で必勝形になりながら玉の逃げ場所を間違えて1手頓死を食らったことがあるのです。私のレベルでは枚挙に暇がありません。

ゆえに、藤井聡太の心境を推しはかることは困難ですが、永瀬拓矢の心境は想像できます。だから勝者を祝福するよりも敗者を慮る思いが強くなり、捲土重来を期待したくなるのでしょう。

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