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「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」 第1回イベントレポート

令和5年9月18日、東京都世田谷区にある「100人の本屋さん」内スペースで、「里親子が暮らしやすい街」について考えるイベントを開催しました。里親子と地域の人が、お互いに支え合うためのアイデアを共有することが目的です。

イベント前半は、里親支援専門相談員の足立佳子さんと、児童館の館長・五十嵐治道さんによるゲストトークを実施。後半はグループワークや意見交換の場が設けられ、熱気あふれる時間となりました。当日の様子をイベントレポート形式で振り返ります。


◆自己紹介・里親制度の説明

当日は、参加者同士の自己紹介からスタート。児童相談所やNPO法人の職員、里親宅へ訪問支援を行っている方など、さまざまな立場で里親子に関心を寄せる13名にご参加いただきました。

その後、「フォスターホームサポートセンターともがき(以下:ともがき)」のスタッフから里親制度や事業内容について説明がありました。

ともがき 私達は、里親養育を一貫して支援するフォスタリング機関です。世田谷区から委託を受け、主に里親制度の普及活動、里親の研修事業、里親委託に向けたマッチング、里親養育の支援の4つの事業を行っています。

「里親制度」は、子ども達のための制度です。子どもが欲しい親のための制度ではありません。里親にもいくつか種類があり、例えば特別養子縁組が成立するまでの期間、里親として子どもを養育する「養子縁組里親」と、一定期間子どもを預かって養育する「養育家庭(里親)」があります。

その中でも、養育家庭(里親)には幅広い年齢のお子さんが委託されます。中高生もいますし、期間も数ヵ月だったり、もしくは数年間に渡るケースもあります。どちらにせよ、さまざまな事情で実家庭を離れた子どもを、安心できる大人(里親)のもとに託すお手伝いをするのも私達の仕事です。

◆さまざまな里親や子ども、家庭を支えるゲストが登場

続いて、ゲスト2人が登場しました。1人目は、東京都杉並区にある乳児院「つぼみの寮」で里親支援専門相談員として働く足立佳子さんです。

足立さんは施設での里親交流や地域の里親子家庭の家庭訪問などを通じて、里親委託の前後をサポートしています。当日は、里親さんのリアルな悩みや葛藤が感じられるエピソードをお話しいただきました。

足立 海外にルーツを持つ里親さんと関わることもありますが、まず、日本と海外では里親への捉え方が全く違います。ある女性が、外国人の友人に里親になることを打ち明けたらとても喜んでくれたそうです。一方、日本の友人に話すと「大変じゃない!他の家族はどう思っているの?」と心配され、複雑な心境になったそう。日本では里親制度の認知度がまだまだ低く、周囲の人から理解を得られにくいのが現状です。

また、里親さんの多くは「どこまでオープンに話すべきかわからない」という悩みを抱えています。例えば、遠い親戚に告げると「なんでそんなことしたの?」と問い詰められたり、PTAの保護者会で里親であることを伝えたら変な空気になったり……そのような話も聞きますね。

あと、子どもの成長に合わせて事実告知を行いますが、「母親が2人いる」と説明したところ、子どもはその事実を受け入れ、喜んでいました。しかし友達にその話しをしたら、他の友達や保護者にも話が広がり「お母さんが2人いるって変だよ!」と揶揄されてしまったケースも……。大人が子どもにどう伝えていくかという課題もあります。里親制度がもっと身近なものになって欲しいと思います。

続いて、東京都世田谷区にある「上祖師谷ぱる児童館」館長の五十嵐治道さんにお話しいただきました。五十嵐さんは他機関と連携しながら、里親子を含めたさまざまな子どもや家庭をサポートしています。

五十嵐 児童館の対象年齢は0歳から18歳ですが、基本的には対象年齢を超えても受け入れています。定期的に行事やイベントを行い、“地域の遊び場”としての魅力を発信する一方、児童福祉施設の役割として、さまざまな事情を抱えた子どもや親と信頼関係を築き、必要なサポートを行っています。

例えば、里親さんから「親同士の交流が少ない」と悩みを告げられた時は、「ぜひ児童館に来て」と誘いました。相性の良いと思う人と会わせたり、場合によっては専門家を呼んだりして、我々は人と人をつなぐ“人材バンク”のような役割も担っています。

こうして地域の人同士がつながり、悩みや気持ちを分かち合える素敵な街づくりを目指しています。

◆クロストークではさらに深い話も

次に、ともがきスタッフや参加者から質問が飛び交いました。

まず里親子に対する日本での配慮について、五十嵐さんは「子ども同士の場合、一回遊ぶとすぐに仲良くなるので、配慮は最初だけですね。大人同士の方が『可哀想』『大変ね』といった言葉が先行し、余計な距離をつくってしまいがち。大人に対する配慮は必要かもしれません」とコメント。

続いて、里親と向き合う姿勢についての質問には「困っている里親がいるかもしれない、という創造力を働かせること。根掘り葉掘り聞くのではなく、『いつでも話を聞くよ』という待ちの姿勢でいることも大事ではないでしょうか」と、待つことの大切さを強調しました。

また足立さんは、「里親さんはもちろん、自己開示したことでお子さんまで傷つくのが一番困ること。里親子と向き合う大人達の姿勢が問われている気がします」とコメントしました。

さらに、「小学校で里親子に関する講演をして欲しい」という要望や、最近は里親や協力家庭によるショートステイなど、家庭で子どもを預かる仕組みを整えている自治体も増えているという情報も共有されました。

次に、グループごとに意見交換の時間が設けられました。テーマは「里親子がより暮らしやすくなるためにできること」。意見やアイデアは1枚の紙にまとめるワークを行いました。議論の後は、グループの代表者が意見を発表しました。

◆Aグループ「里親だけでなく平等に住みやすい街づくり」

Aグループでは、現在子どもの委託を受けている里親さんの話をもとに議論がなされました。例えば、委託された子どもが「実子との関係を周囲に聞かれて困ってしまった」という話には、周囲の理解が必要との意見が出ました。

また、小学校で行われる10歳の節目を祝う「二分の一成人式」では、複雑な家庭環境を抱える子どもに、親への感謝を強制される点が問題視されています。しかし最近は、親だけでなく地域の人や先生にも感謝を述べるなど、多様化する家族のあり方に配慮がなされている事実も共有されました。

さらに「里親子への配慮は必要だけど、それによって誰かが我慢するのは違う。里親家庭への理解を深めつつ、誰もが住みやすい街づくりを目指したい」との意見も出ました。

◆Bグループ「教育機関や地域の団体に理解を求める」

Bグループでは、主に里親制度を広く知ってもらう必要性について議論がなされました。

その結果、「学校などの教育機関、民生委員や児童委員など地域の団体にも里親制度のことをもっと知って欲しい」「里親子であることを隠さなくていい街づくりを目指したい」という話に着地しました。

◆Cグループ「食を通じた憩いと支援の場をつくる」

Cグループでは、「里親は子育てに一生懸命になりやすい」という意見が挙がったことから、里親が心のゆとりを持つための施策・アイデアが飛び交いました。

具体的には、里親がちょっとした弱音や愚痴をこぼせる相談場所を設けること、親子や地域の人と交流しながら食事ができる場所をつくること、などが挙げられました。

◆アンケート回答・次回のイベント予告

最後に、リフレクションシートとアンケートを参加者にご記入いただき、イベントは終了。今回は里親ではない方中心にお集まりいただきましたが、皆さまから里親子に対する強い思いと使命感を感じました。

「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」
次回の開催は、令和5年10月21日です。
第2回は令和5年10月21日に無事終了しました。

次回の開催は、令和6年1月13日(土)です。

■「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」

第4回のテーマは「里親家庭で暮らした方と考える、わたしにできること」。
「里親子の想いって何だろう?」
里親家庭で生活した経験がある方から、
里親の存在、生活の中の葛藤等、実際の声を聴き、
里親子が暮らす地域で私たちができることを一緒に考えます。

日時:令和6年1月13日(土) 10:00-12:00
場所:Cafe Kolm
東京都世田谷区下馬3-38-2
アクセス http://kolm.jp/
定員:15名(先着順) 
参加費:無料
詳細・イベントの申し込みは以下をご確認ください。
https://seta-oya.com/posts/event-Jan13

■「365日のさとおやこ~あおぞらマーケット~」

※終了しました。

さまざまな事情から家庭で生活できない子どもを家庭で預かり育てる「里親」。そんな【さとおやこ】の大切な日をきりとり、垣間見るマーケットです。家族で楽しめるイベントもご用意しています。
日時:令和5年11月3日(金・祝)11:00~18:00
場所:BONUS TRACK(世田谷区代田2-36-15)
※映画上映/里親カフェ:要申し込み(無料)
詳細・イベントへのお申し込みは以下をご確認ください。
https://seta-oya.com/posts/aozora2023

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