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「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」 第3回イベントレポート


里親子が暮らしやすい街って、どんな街?

令和5年12月10日、そんなことを参加者全員で考えるイベント「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」を開催しました。

今回お招きしたゲストは、NPO法人バディチーム理事の濱田壮摩さんと、希望丘青少年交流センター「アップス」センター長の下村一さん。訪問支援と居場所支援、2つの立場から里親子とどう向き合っているのか? それぞれのお話をもとに、後半は意見交換の場も設けられました。当日の様子をレポート形式でお届けします。

※過去のレポート記事はこちら(https://note.com/setaoya



 

◆自己紹介・里親制度の説明

今回は、里親登録を検討しているご夫婦やNPO法人の役員、地域の子どもや女性を支援する方など9名が集まりました。自己紹介の後、「フォスターホームサポートセンターともがき(以下:ともがき)」のスタッフから里親制度や事業内容について説明がありました。


ともがき 私達は、里親養育を一貫して支援するフォスタリング機関です。世田谷区から委託を受け、主に里親制度の普及活動、里親の研修事業、里親委託に向けたマッチング、里親養育の支援の4つの事業を行っています。
 
「里親制度」は、子ども達のための制度です。子どもがほしい親のための制度ではありません。
里親にもいくつか種類があり、例えば特別養子縁組が成立するまでの期間、里親として子どもを養育する「養子縁組里親」と、一定期間子どもを預かって養育する「養育家庭(里親)」があります。
 
社会的養護が必要とされる子ども達の生活場所としては、里親制度やファミリーホームのような「家庭養護」のほかに、児童養護施設や乳児院などが子どもを預かって養育する「施設養護」もあります。
家庭養育優先原則に則り、まずは家庭養護を検討しますが、ケアニーズの高い子どもなど、子どもの状況によっては、施設養護が望ましいケースもあります。どちらがいい・悪いではなく、子どもの状況や背景に応じて、必要な社会的養護がその都度検討されているという実態があります。


◆訪問支援で里親家庭を支える濱田壮摩さんの話


続いて、NPO法人バディチームの理事を務める濱田壮摩さんが登場しました。2007年に設立したバディチームは、経済的困窮や病気、ひとり親など、あらゆる事情で子育てが困難な状況にある家庭や里親家庭などへの訪問型支援を行っています。

濱田 東京23区を中心に、保育・家事・送迎・学習などの支援をお願いしているのが「子育てパートナー」です。子育てパートナーの約半数は、特別な資格やスキルを持たない一般の方々です。主力は40〜50代の女性ですが、例えば小学生の子どもの遊び相手なら、20代の学生さんにお願いすることもあります。また、フルタイムでお仕事をしている会社員の男性は土日だけ稼働するなど、それぞれが持てる時間や得意分野を活かして活動しています。
複雑な事情を抱えたご家庭と向き合うとき、何かしらの資格や専門知識が必要と思われがちですが、必ずしもそんなことはありません。
 
里親家庭への支援では、子どもを委託した後に「夫婦で改めて話をする時間をとりたい」「実子に向き合う時間がほしい」といった多様なニーズがあります。家事支援も行っているので、「里親になってから多忙で家事が行き届かない」といった悩みには、子育てパートナーが出向いて日常レベルの家事も手伝っています。
 
子育てパートナーの多くは「非専門職」です。そのため専門的な助言はできませんが、支援を受けた方が弱音を吐けたり、信頼関係を構築しやすかったりするのは、指導的立場にない非専門職の強みです。それぞれの家庭の状況に「寄り添った支援」を目指しています。
 
子育てパートナーになるには、性別・年齢・経験・資格の有無は問いません。一人ひとりが、まずできることから始めてほしい。そして里親子に限らず、さまざまな背景や複雑な事情を抱えたご家庭も、みんなで支える地域を目指していきたいです。
 
※子育てパートナーの詳細はこちら(https://buddy-team.com/partners/


◆若者をやさしく見守る下村一さんの話


続いて、希望丘青少年交流センター「アップス」のセンター長、下村一さんが登場しました。アップスは気軽に使える若者のためのフリースペースとして開設されました。ユースワーカーとして多様な若者を支援する下村さんに、里親家庭や子どもとの関わりについてお話しいただきました。


下村 「アップス」のメインターゲットは中高生から20代の若者ですが、下は小学生から上は39歳まで利用できます。青少年の社会的な自立支援をゴールとしていますが、この場所なら「失敗してもいい」とか「ありのままの自分でいていい」と思ってもらえるように、一番は若者が安心して過ごせる「居場所づくり」に力を入れています。
 
そのために我々が意識していることは、若者と「おしゃべりすること」です。雑談のようなたわいもない会話を積み重ねることで、本当に少しずつですが、心の距離が近づいていきます。そうした中で、相手の体調の変化や家庭の状況などが見えてくるんです。
 
もし社会的養護のもとで暮らす子どもがアップスに来たら、配慮はしますが、背景に踏み込むことはしません。例えば一時保護になった子どもが地域に戻ったとき、普通に「久しぶりだね。また、来てくれてありがとう」などの声掛けをします。
 
なぜなら、支援者に近い関わりをしてしまうと、「すべての事情を知られている」という状況になってしまう。「知られていない」ことが、若者にとっての居心地の良さにつながる部分もあると考えているからです。
 
里親家庭のお子さんも来ますが、それは全体の一部で、他の子どもと同じように接しています。もし児童相談所などを通じて子どもを注意深く見てほしいと言われた場合は、できる範囲で記録を残すことはありますが、あくまでも「居場所支援」を軸にした活動を意識しています。


◆白熱したゲスト同士の対談トーク


次に、ゲスト2名による熱い対談が繰り広げられました。 

まず、濱田さんがアップスで働く職員について尋ねると、「実はアップスの委託を受けたとき、特定の資格に限定される要件を外しました。多様な若者を受け入れるのに、多様なスタッフが必要だと思ったからです。その代わり研修は必要だろうという話になって、現在は区とともに職員の研修メニューを作成しています」


その一方で、「ただし、地域や若者のニーズも汲む必要があります。実際に若者にアンケートを取ると『一人の人として対等に扱ってほしい』という声が圧倒的に多かった。大人だけで決めないでほしいという思いがあるのでしょうね」とコメント。

続けて、「里親家庭で暮らす若者とはどんな会話をしますか?」との濱田さんの質問に「ある子はよく閉館間際までいましたね。人間関係についてなど、生活での困りごともスタッフに話していました」と貴重なエピソードを明かしてくれました。


次に、グループごとに意見交換の時間が設けられました。テーマは「里親子がより暮らしやすくなるためにできること」。最後に各グループの代表者が意見を発表しました。


Aグループ「まずは里親子の存在を知る」

Aグループでは、まず里親子の存在を「知る」必要があるとし、その前提で何ができるかについて話し合われました。

具体的には、「名字が違うことへの理解を示す」「里親子と出会っても普通の会話をする」といった意見や、明日から実践できることとして、「多様性を認める」「友達に里親関連イベントを勧めてみる」などの案が出ました。

また地域の中で、里親さんの困りごとやニーズを解決するための機関や場所があるといいといった話も出ました。

 

Bグループ「必要な人に必要な情報を届ける」

Bグループは、NPO法人など支援する側の立場から「里親子を受け入れたい」という意見が出ました。

また、本当に必要な人に里親家庭の情報を届けるための議論もなされました。

具体的には、「フォスタリング機関の存在をもっと広めたい」「里親子がフォスタリング機関やバディチーム、アップスなどを含めた子育て支援機関を気軽に利用できるようにしたい」といった意見が出ました。

 

◆アンケート回答・次回のイベント予告   

最後は参加者にアンケートなどご記入いただき、イベントは終了。
今回は訪問支援と居場所支援という異なる支援の形から、里親子にできることを皆さんと一緒に考えました。

 

「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」

第4回は、令和6年1月13日に開催しました。

テーマは「里親家庭で暮らした方と考える、わたしにできること。」
「里親子の想いって何だろう?」
里親家庭で生活した経験がある方から、里親の存在、生活の中の葛藤など、実際の声を聴き、里親子が暮らす地域で私たちができることを一緒に考えました。

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