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中国でマーケティングをすると、一皮も二皮も剥けて成長できる、らしい。知らんけど。

こんにちは、僕です。

気づいたら前回の記事から一年近く経っていました。今更ながら、中国のマーケティング観察日記、第2弾です。

いわゆる消費財のマーケティングというものを中国でやらせていただいているのですが、日本と比べて、競争の激しさが際立っているように思います。具体的には次のような感じです。

・ブランドの量が圧倒的に多い

・さらにそれが目まぐるしく入れ替わる

・さらには利益度外視で突っ込んでくる

完全に戦国時代です。キングダムの様相を呈しております。

例えば、化粧品のPerfect Diary(完美日记)というブランド。2017年に創業されてから、わずか数年で500億円強の売上をあげるトップブランドに成長しました。そんな彼らの急激な成長を支えた戦略というと、常に売上の6-7割をマーケティング費用にぶち込んで、赤字を気にしない、というもの。通常の企業が3割前後だということを考えると、利益度外視で突っ込んできている感じが伝わるかと思います。

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その戦略は、シリコンバレーのネット企業のような「利益を度外視してまずはユーザーを確保する」というものに近いと思います。ちょうど、映画の「ソーシャル・ネットワーク」でショーン・パーカーがマーク・ザッカーバーグに伝えたように。

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「パーティーは11時でお開きにするのはクールじゃない」

中国の新興企業がこんなことをできるのも、マーケットがでかいからこそ、と言えるでしょう。中国は、人口は日本の約11倍、GDPは約3倍というマーケットです。分野によってはそれこそ日本のマーケット規模の5倍、10倍ということが平気であり、マーケットがでかいからこそ、ユーザー数を拡大したその先に対して希望があり、投資家のお金がどんどん集まってきます。

ちなみにそのマーケットの大きさゆえ、中国では新興ブランドはニッチを攻めるのが定石となっています。これを「下沈」と言うそうで、『清華大生が見た、最先端社会、中国のリアル』という本にも下記のように書いてあります。

下沈は、近年中国のビジネス界に新たに生まれた言葉であり、プロダクトやブランドが従来ターゲットとしている客層のひとつ下の利用層や、地域にて事業を開始することを指します。

これは、ニッチなエリアでも、十分なマーケットの大きさがあり、さらにはそこで得たユーザーを利用して大きなマーケットに飛び込むことができるからです。Genki Forestはカロリーゼロの炭酸飲料市場、Chicecreamは国産高級アイスクリーム市場など、勢いのあるローカルブランドは、ニッチなところでファンを掴み拡大しています。Perfect Diaryもカラー化粧品に絞ってビジネスを伸ばしてきました。

さて、そんな急激な成長の末に、Perfect Diaryを待ち受けていたのは何かというと、さらに熾烈な競争です。2020年12月期の営業利益はというと、なんと衝撃の300億円の赤字。500億円強の売上に対して、500億円強をマーケティング費用にぶち込むということをやって無理やりに成長をさせています。ネット企業と違い、ユーザーが拡大したら片手うちわのマネタイズが待っているわけでもなく、結局のところ、同じようにカミカゼアタックをしてくる新興企業からユーザーを守りながら成長させていかなければなりません。

さらには、直近では、大手外資系企業もこのカミカゼアタックに参戦してきています。Perfect DiaryのCEOも、「外資系企業の高級化粧品も強烈な、本当に強烈な値下げをしてきている」とのことで、直近の独身の日のセールでは、多くの外資系化粧品が「1つ買うとオマケでもう1つ」のキャンペーンを実施してきた、と不満を述べていました。

と、いうことで、その熾烈な競争の結果が、今回の強烈な赤字というわけです。そして、株価も上場以来右肩下がりですし、このままマーケティング投資にお金がかけられなくなったときに、Perfect Diaryは新しいブランドに追い抜かれていってしまうのではないでしょうか。

と、いうことで。そんな栄枯盛衰の波に飲まれず、群雄割拠の時代を勝ち抜くブランドを作り上げるためには、如何にユーザーに気づいてもらうか、興味を持ってもらうか、継続的に愛される商品やコミュニケーションを作れるか、多様なユーザーのニーズに応えられるか、といったところが鍵になってくるのではないかと思います。中国でマーケティングのお仕事をすると、マーケッターとしては一皮も二皮も剥けてより一層強くなれる、ということにしておいていいんじゃないでしょうか。知らんけど。

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