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金髪で飛び跳ねろ

もう会社員を辞めたわけで、憧れだった金髪にしてみることにした。
外を走る足取りも軽快だ。髪を揺さぶる生温い風さえも心地よい。ライオンとはこんな気持ちなんだろう。

仕事ができない。ただそれだけの理由でアタシは上司や同期からありとあらゆるハラスメントといじめを受けた。体に骨が抜けたように力が入らず、起き上がるのもやっとかっと。痩せかけたアタシを見て、彼氏も自然と去っていった。何もかもうまくいかない。そんな日々も、退職届さえ出せば水を与えられたサボテンのように輝きを増す。

金髪にしたきっかけは、大好きな野球。
飛び跳ねるように体を使う小柄な投手が投げるたびに、帽子を落とすときになびかせるキラキラとした髪。
アタシは心を奪われた。
いま、彼と同じ髪で毎日彼のいる二軍球場に足を運んでいる。

そこに、昨年の本塁打王でメジャー行き確定と呼ばれている唐島選手がやってきた。極度のスランプらしく、二軍で調整している。目が死んでる。
アタシと同じだ。
出待ちをしているアタシをチラリと見て会釈してきた。は? あんたに興味はない。

唐島は轢き逃げで人を殺していた。
まさかその驚愕の秘密をアタシだけが知ることになるとは……?

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