大家はシェアハウスに居場所がない
そういえば、「めぞん一刻」を田舎の美容院で読んでいたなと、思い出した。当時、予約ってなかったんだっけ。覚えていない。
「だからか……」
某信用金庫に勤める28歳のアタシは、暇すぎて不動産経営を始めた。
ほんでもって東北沢でシェアハウスを作った。大家のアタシもここに住んでいる。だって寂しいから。
集まったのは、チャラいミュージシャンの卵か意識高い会社員。
笑い声がきつい。手を叩いて笑うのもきつい。お酒を飲み過ぎるのもひどい。んで、話が合わない。フェスとサウナの話で2時間も話すか。
「お疲れ様です」
アタシは大家もまっとうしている。ゴミ捨てと掃除に全力を注ぐ。
家賃8万円、滞納は許さない。
ホントは仲間に入りたい。つーか、そのためにシェアハウス始めたわけだし。でも、アタシ、8%のアルコール缶飲むのはイヤだ。
そんなとき、新しい住居者がやってきた。
中学時代の同級生、勝山君だ。マジで覚えていない。3軍だった。学校に来ていたのだろうか。
久しぶりの再会でカッコいいと思えるようなルックスでもないし、28歳に思えないほどださいし、いまだに3軍男だ。全然しゃべらない。
なんでここに?
朝7時にシェアハウスを出る勝山君。アタシは嫌いじゃない。
でも物語が動きそうな気もしない――。
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