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効いているような、いないような

しばらく見ていないうちに観葉植物が枯れていた。
気づいたら、通っていた銭湯が潰れていた。
工事現場の隅っこに落ちた。
1000万円当選の宝くじの引き取り期限が過ぎていた。
住民税が爆上がりしていた。

江東区に住むアタシは運がないのか勘が鈍いのか、いいことがない。
部屋にコソコソと暮らす、引きこもりの彼氏がいる。2年前では大手出版社のイケイケ編集者だったはずなのに。メンタルがぶっ飛んだという。
で、なぜか。付き合いたてだってアタシの家に転がり出して、家でパソコンをいじっている。株でデイトレードでも、小説でも書いてくれたらいいのに、ニュースにコメントをしてニヤついている。あんな敏腕ライターがどこに才能を発揮しているのか。

でも、人生で怒ったことのないアタシは何も言えず、しおれた観葉植物を捨て、宝くじを破いて、引きこもりの彼氏のために焼きそばを作っている。

アタシはチェーンの花屋でいつも茎を切っている。それはそれで楽しい。
あ、今日は七海とカフェだ。

七海:うわぁ、あさって大雪予報じゃん
萌:聞いてる?
七海:ん、あ。聞いてる聞いてる
萌:ずっとなんかスマホみてるじゃん
七海:見ながら聞けるの、あたし
萌:じゃあアタシ、別れたほうがいいってこと?
七海:そんなこと言ってないじゃん。聞いてるだけだし
萌:どうしたらいいのかな
七海:知らない。聞いてなかったし
萌:……

アタシは決めた。
家出することを。一人暮らしの家を、彼氏を置いて飛び出すことを。

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