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ツッパルことが女の勲章

誰にも知らせたことはないが、クラスの皆に知られていることがある。
アタシが女相撲をしていること、西日本チャンピオンになったこと、それを隠していたこと、この3つ。――だけのはずだ。

高2にして相撲歴は12年。書道教室や塾にも通っているが、一番長いのが相撲だ。得意技は寄り切り、上手投げ。接近戦の圧力なら負けない。女子同士なら……。

女が土俵に上がっていいんだっけ? てゆーかハダカ? あ、下は隠れてるか。え、ブルンブルンじゃん。

何度となく聞かれたこの質問。何度となく話したこの説明。
しつこい。舞の海とか宇良の取り組みぐらいしつこい。

女子相撲は1996年に正式競技化されて、ガチでオリンピック種目を目指している。
土俵には上がらない相撲専用マットの上で行ない、まわしの下にレオタードのような衣服を着る。
胸がブルンブルンするわけがない。そもそもアタシはブルンブルンするほどのないを持っていない。
体重だって気にしてながら暮らしている。ちゃんこ鍋よりは韓国料理がちゃんと好きだし。まぁコーチには注意されるけど!

そんなわけでアタシは相撲道にまい進している。
つもりだったのだが――。

ある日、遅刻しそうになった朝の通学路。
横からやってきた学生服の男子とぶつかりそうになり、思わず上手投げをしてしまった。
よくあるシチュエーションとは少~し違うけれど、アスファルトに打ち付けられて口をポカンとさせている転校生に恋をした。
「なんで……?」
「とっさのことで…………。あの。すみません」

気まずいまま、転校生はウチのクラスに転入してきた。
「!」

よくあるシチュエーションにアタシは驚きなのか、胸のときめきなのか分からないけれど動悸が止まらない。
転校生の高田君は、アタシを貴乃花の“鬼の形相”を思わせる顔をしている。

最悪の出会い。奇跡の立ち合い。

アタシは全国大会を1週間前に控えていた。

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