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記事一覧

ツワブキ

知らない、野菜を手に取って
でもそれは、知ってるものと
似ている
何にも似ていないものは
段々と私の世界から減ってきた
そのことを苦く
寂しく思っているだろうか
わからない

父の書棚から
こっそりでなくヘッセ詩集を抜き取り
誰にも言わない旅に連れていく
私の日常は肉感を失っている
繋がりへの希求は煩わしくなり
バランスを欠いているのは
世界ではなく私であるか

ゆるやかに死にゆく誰かを
見送る時

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一同は広島へ

その気配に怯えながら愛した
血の呪いからも
輪廻の鎖からも
本能の質量からも
ついに逃れることが出来なくても
それがわかっていても
君の手を取ったのは

どんなに汚くてもそれを
愛と名付けるしかなかった
どんなに痛くてもそこへ
向かうしかなかった
あの頃の僕を

手段

何かと関わる手段を
何かに倣うことをやめてみたい
どうやってそれと関わるか
それは自然と現れてくるもの
浮かび上がってくるもの

媒介者を限定しなくていい
ある手段をもって
関わることが困難であっても
確かに何かと常に関係して
生きているのだから

僕はどう世界と関わる?
僕はどう君と関わる?
それを規定した途端
全てをつまらなくしてしまう

想いの望む姿を
探り出して掘り当てていく
感情の行く先

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空間

答え を
探している
出そうとしている
いつも
正解に〇をもらいたくて
考えていた

あなたの気持ちは
ぼくが考えてもわからないし
ぼくの気持ちは
あなたが考えてもわからないし
ぼくもあなたも
自分の気持ちがわからない

でもなぜか
ぼくは証拠を掻き集めて
人の気持ちを決めようとしている
愛の証明
悪意の証明

いくら記憶を旅しても
道の駅は見つからない
暗い道は地獄を巡って
終わらない苦痛のため

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無感動ショコラ

僕を支配していた
あなたがいなくなった
僕の心に巣食い
僕の体を蝕み
僕を作りながら
破壊し続けたあなたが
いなくなった

取り残されても
あなたは消えなくて
僕はあなたの形にくりぬかれたまま
床に転がって天井を見上げている

手に入って求めるのをやめたら
嫌悪と憎悪が暴れ出す
悲しみと痛みは
存在を認められやしない

手に入れるどころかその手で作り出したのだから
好きに壊して遊んでいたんだろうね

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心中

君が死んだら僕も死ぬ
それって心中って呼ぶかしら
いやいや後追いと言うのだよ

君を殺して僕も死ぬ
それなら心中と呼ぶのかな
いやそれは無理心中というやつだ

無理じゃなければいいのかい
そうそうお互い望んで死ぬのが
無標の心中の指すところ

一家心中はどうなのさ
子供は同意していないでしょう
そうだね三人以上は複雑だね

夫婦心中って言葉はないね
そうだね夫婦はたぶん
別れるか殺し合うんじゃない

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魂とはいつも
どこかへ出て行きたがる
そして出た先で園を作り
その外へとまた出たがる
繰り返し繰り返しそうやって
浸かっては上がりを重ねて
創っては壊しを重ねて
拾っては捨てを重ねて
入っては出てを重ねて

魂とはいつも
ひとところに留まりたがらない
だのに人はいつもそれを
どこかへ縛り付けようとしている
己を誰かに
誰かを己に
心を思想に
身体を現世に

どこにも依らない魂は
いつも宙を舞ってい

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羅列

言葉の羅列
お行儀よく
それはあるべき場所に
大人しく座っているべきで
飛び出した言葉は
消しゴムで綺麗にされてゆく

美しさは模様
均等に配置された目鼻なら
どんな軌道を辿ろうとも輝く
善は悪の対極にあるべきであり
混ざっていては胸が悪くなる

水平線に重なりたいのに
嵐は駒のようにぶつかり弾け続ける
止まって転がることもなく
きっとここには重力がない

風にさらわれたいのに
錨は絆より頑丈な鎖

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pray

僕のバスローブがベランダで空に祈ってる
袖が速く乾きますようにって

僕の小鳥が籠で喋ってる
僕の名前 好き 好き 大好き

靴ひとつなきゃ
傷だらけになる脚の裏で
大地踏みしめて小石に悲鳴を上げる
僕等にんげん 人間 ニンゲンさ

闇の奥で正気でいられるか?
全てと切り離された時
君に残るものは何だ

誰も連れてはいけない門をくぐり
どんな言葉で祈りを捧げる
知っていたか気付いていたか
本当はす

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匂い

「そんなもんさ」で済ませられるように
時が過ぎるのを待っていた
「僕はこうなのさ」で逃げられるまで
目を逸らしてうつむいた
水面に映る顔が問いかけても
もう暗いからと後にした

息さえ出来ればいいさと
ひとつひとつ夢を投げ捨てた
本当のことはみんなもう
埋め立ててしまった

命綱が焼き切れて
底へと落ちる間だけ
僕は心残りと出会う

君に言えなかったこと
僕に言わせなかったこと
聞こえないふりをし

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生まれる

生まれたらもう
胎には戻れない
それが悲しいのか
悶え苦しみ泣く
胎が空っぽになり
次はまた別の場所から
栄養を吸い取られるタンクになる

変化は強制され
上手く変態を遂げない蛹は死ぬ
生まれるか死ぬか
時はそのどちらかへと命を押し出す

地球にとどまる人間が
宇宙へ生まれ出ることがあるのなら
二度と呼吸を必要としない身体へと
変化するのだろうか

筋肉も骨も無用となり
臍の緒のごとく剥がれ落ち

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せかい

真新しさも一瞬で
すぐに始まる粗探し
パターンに飽きてこないかい
ぐるぐる廻って酔わないかい

初めてだから
信じることさえ知らずに愛した
時が流れるものだとも
雪が溶けるものだとも

口を開けて待っている闇に
恐れもまだ感じない
光に触れる前ならば
音と肌のせかい

何も言わなければ嘘も
つかなくて済むね
知ってるなんて思っても
思ってるだけさ僕だけだ

静かなんだここは
他に何も要らない
隣に

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エデンの記憶

そんな覚えはないというのに
僕等は何故か確信している
当然のように僕たちに
与えられるべきものとして

完全な愛も平和も
終ぞ味わうことなどないのに
求めている期待している苛立っている
世界に投影している

平和じゃなきゃいけないんだ
愛されてなきゃいけないんだ
理解されるべきなんだ
満たされるべきなんだ

なぜ?

エデンの記憶が僕等にささやく
知っているでしょう?
完璧な調和を
ただ光に包まれ

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holder

わたしもうずっと
女であることに耐えられない
それでも女をやめられない
この身体が心が
本能と衝動が憎らしかった

侮蔑と不自由
嘲笑と中傷
暴力と侵襲
排斥
全てが女であるせいに思えた

女であることが耐え難い
私は天に唾吐く
なぜ私を女にした
なぜ女をこんな風にした
答えやしない
応えやしない

耐え難い
耐え難い苦しみだ
まるで地獄のようだ

わたしはもうずっと
女であることに耐えられない

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