SS「雪女からの手紙」

お久しぶりです。こんばんわ。
貴方の声が懐かしくなってしまい
筆を取りました。

貴方が今いる所は
優しい風ですか?

私がいる所は
少し寒いけど生きていくのには
充分温度が満たされています。

あの兎を待っていた
木の根っ子の周りには
兎の屍が死屍累々と転がり
いわゆる阿鼻叫喚と言うやつなのではないですか?
兎の御冥福をお祈り申し上げます。

温度を知ると
雪女は駄目になります。
人間にはなれずに解けるだけです。

この雪女の力は
私を臆病にします。
視える事というのは
安全ははかれますが
必要以上に臆病になります。
もしもが視えると怖くなります。

私は人間の様に見えても
人間では無いのです。

手紙を書いておいて
こんな事を言うのも何ですが
人間の貴方様は
この化物をほおっておいて下さい。

貴方の周りの風が
いつも暖かく優しくある事を
お祈り申し上げております。

これも、2016.12に書いた物です。
ウサギ転げた木の根っこの比喩が好きで、
昔からよく使ってます。